里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】矢作川のアユをまるごと味わう!第38回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2010年10月9日更新、2020年4月20日加筆修正〉

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今回は矢作川で育ったアユを調理して味わいました

なごや環境大学共育講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度(2010年度)第4回目が2010年9月9日(木)、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。今回は愛知県の三河地区を流れる矢作川で育ったアユを使って、塩焼きなどの料理にチャレンジしました。一般からは約30名が参加。講師には、元矢作川漁協組合長で矢作新報代表取締役の新見幾男さんを招いて、さまざまなアユ料理を味わうとともに、アユの生態や山、川、海の深いつながりなどについても話をうかがい学びました。

串打ちを体験

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編集員も初めての「串打ち」を体験しました

この日につくった料理は、「アユの塩焼き」「アユそうめん」「アユの干物」「ヘチマと豚肉の炒め物」です。会場には、矢作川で育った新鮮なアユが持ち込まれ、漁協で製造した甘露煮、干物などの加工品も料理に使われました。塩焼きの調理では全員で「串打ち」を体験しました。アユの口からハシを入れて、写真のように中ほどで一度だし、また入れてと、縫うように進めていきます。参加者のみなさん、最初は慣れない手つきもすぐにコツを覚えて、串に通されたアユが次々と皿のうえに並んでいきます。

編集員も挑戦してみました。アユの表面のぬめりで持つ手がすべり、口から差し込むのにすこし手間取りましたが、一度串が入ると大きな抵抗もなく、なんとかうまく通すことができました。串を打ったアユには、全体に軽く塩を振ります。ヒレと尾には化粧塩で多めにかけるのがポイント。余熱したオーブンで、様子を見ながらじっくり両面を焼いていきます。

アユ一色の豪華なメニュー

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この日につくったたくさんのアユ料理。アユの甘露煮をのせたそうめん、塩焼き、干物、 ヘチマと豚肉の炒め物。とてもめずらしいアユの姿焼き、せんべいもいただきました

会話も弾む楽しい調理がそれぞれのグループで進み、次々と料理ができあがっていきます。テーブルのうえには、「アユの塩焼き」や「アユそうめん」のほか、「アユの干物」や「アユせんべい」とアユ一色の豪華なメニューがならびました。

「いただきます」と手をあわせて、まず手を伸ばしたのは塩焼き。勢いよくかぶりつくと、塩気のほどよくきいたパリっとした皮がほっこりした身ともよくあって食べる勢いがさらに加速します。甘露煮の大きなアユがひときわ目をひく「アユそうめん」。そのアユを頭からガブリと一口。とてもやわらかくて、丸ごと全ておいしくいただくことができました。

漁協がつくる自慢の製品だという「アユの干物」は、酒のつまみにもよくあうそうで川魚の独特な風味を堪能することができます。最後にいただいたのはめずらしいアユの姿焼きとせんべい。姿焼きは、アユを機械でプレスして焼き上げたとてもユニークな一品で、甘辛い味付けが後をひくおいしさ。香ばしいせんべいも食後にぴったりでした。

7年前に天然アユが復活

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矢作川と伊勢・三河湾とのつながりについて話す新見さん

長年にわたって矢作川の天然アユを復活させる活動の先頭に立ってきた新見さん。矢作川にはいくつもダムがあり、復活に向けての活動では多くの困難に直面したそうです。「川の環境は厳しいが、なんとかできないか。アユが育つ環境を取り戻したかった」と、アユの調査を始めたきっかけについて話します。

矢作川の調査・研究機関を行う豊田市矢作川研究所の設立にも力を注ぎ、漁業者や研究者を中心とする矢作川アユ天然調査会、漁協が一体となって、天然アユの復活に取り組んできました。農業団体や行政だけでなく、釣り人や地元住民などにも連携をよびかけて活動の輪はさらに広がり、7年前に多くのアユが矢作川を遡上。新見さんの想いは結実しました。

天然アユは、川で卵からかえり、秋から冬にかけて海に下り成長をとげ、春を迎えると再び川を遡上します。矢作川のアユにとって川はもちろん、伊勢・三河湾も大切な生育の場なのです。新見さんはアユの生態を説明したうえで、海と川との深いつながりを強調。「山が健全に育っていないと、川も海も汚れてしまう」と話し、流域全体で環境を守っていくことの大切さを訴えました。

たくさんのアユを調理して味わうことができた今回の講座。山、川、海のつながりを矢作川のアユをいただくことで、より身近なものとして実感することができました。アユを通して語られる新見さんの幅広い環境についての話に、参加者のみなさんは熱心に耳を傾けていました。(新美貴資)

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