里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】柳橋市場でイワシの手開きを体験!なごや環境大の第2回「日本人と魚」

〈『DoChubu』2011年11月30日更新、2020年4月22日加筆修正〉

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講座を主催する柳橋市場青年部の鈴木正明さんから魚について説明を受ける参加者

「食の大切さと人と人のコミュニケーションを柳橋中央市場で学ぶ!」をテーマに開かれている、なごや環境大学の共育講座「日本人と魚」(主催:柳橋市場青年部食育応援隊)の第2回が2011年11月5日(土)、名古屋市中村区の同市場内で開かれました。

今回は柳橋市場について学び、イワシの手開きを体験する内容で、前回の参加者数を上回る多く方々が受講。朝の市場を見学して買い物を楽しんだほか、中部水産取締役部長でおさかなマイスターの神谷友成さんによる、「『旬』の味とコミュニケーションの楽しさ」についての講義もあり、参加者は五感を通して魚について学びました。

たくさんの魚と出会える市場

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朝の市場をさっそく見学。たくさんの魚と出会える楽しい時間です

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市場の店頭にならぶ多くの魚介類。写真はアカガイ(左)、コウイカ

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キス(左)、巻貝のバイ。バイはしょう油、酒などで煮て食べるとうまいそうです

朝の市場のにぎわいが続くなか、この日の講座が始まりました。参加者は、名古屋中央市水産物協同組合の白澤達之さんより注意事項について説明を受け、さっそく柳橋中央水産ビルの市場のなかへ。講座では、決められた時間内で自由に買い物もすることができ、みなさんどんどん市場の奥へと進み、興味をひく魚や貝などを見つけては店員に質問。積極的に声をかけて、たくさんの新鮮な魚を買い求めていました。

マグロやワタリガニでふくらんだ大きな袋を手に、満面の笑みを浮かべる女性の参加者。別の店では、たくさんの魚を一緒に買って分けあう人たちも。初顔合わせ同士でも、お互いの袋のなかを見せ合えば会話はどんどん弾みます。

参加者は、講座を主催する鈴木正明さんが市場内で営む海産物問屋「魚友」も見学。鈴木さんは、店頭にならぶ魚を一つひとつ手にとって説明し、次々と寄せられる質問に丁寧に答えていきます。市場の関係者があわただしく行き交い、威勢のよい掛け声があちこちで飛び交う。活魚や鮮魚であふれる朝の市場は迫力満点です。

みんなでイワシの手開きに挑戦

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お腹がぷっくりとふくらんだ新鮮なマイワシ。目がすんでぴんと張った体の表面はぴかぴかで脂がたっぷりとのっていました。

市場を見学した後は、場所を会議室に移して講義の時間です。まずは鈴木さんが、柳橋市場について説明しました。大都市の駅に隣接する民間の市場では、日本一の規模を誇るという柳橋市場名古屋市民の台所として、全国の産地から生鮮食料品を集荷して供給する重要な機能を担っています。

市場で魚を買い求める客の多くは、ホテルや鮨屋、仕出し屋など飲食を営む業者ですが、もちろん一般客も買い物をすることができ、鈴木さんも「ぜひ来てください」とアピール。大きさや鮮度、産地などにこだわった魚が豊富で、全国各地で獲れたいまがおいしい旬の魚がそろうのは、市場の大きな魅力です。

続いては、おさかなマイスターの神谷さんが、「『旬』の味とコミュニケーションの楽しさ」について講義しました。神谷さんは、魚にはそれぞれ旬があり、一般的には産卵前のものが体に脂をためていておいしいと説明しました。

ちょうどいまが旬のカキについて、その生態やプロの目から見た産地の見分け方などを解説。食べ方にあった生食用と加熱用の上手な買い方などもアドバイスしました。魚の上手な食べ方についても、骨の構造を図で示し、その場所を理解すればうまくはずして食べることができると強調しました。旬の話から魚の上手な食べ方、さらには人や魚も含めた脊椎動物の体のしくみまで、次々と語られる神谷さんの興味深い話に、参加者のみなさんは熱心に耳を傾けていました。

講義のあとはいよいよイワシの手開きに挑戦です。用意されたのは、愛知県南知多町の豊浜漁港で揚がったマイワシ。伊勢湾で獲れたもので、いまの時期がちょうどおいしい旬の魚です。まずは神谷さんが一尾を手にとり見本を示します。「豆腐のなかに使い古した歯ブラシが埋まっている。それを手で開いてきれいにぬくような感じで」。頭と内臓が取り除かれたマイワシをみなさん次々と手にとって、腹のなかへ親指を入れていきます。

食べだしたらとまらないうまさ

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手開きしたらしょう油につけてそのままで。タレにつけて焼いたり、包丁で粗く刻み丸めてチーズをのせて焼いたり。いろんな食べ方が楽しめます

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イワシのおいしさに大人も子供も夢中。食べだしたらとまりません

じつは記者は魚を手で開くのは初めて。とにかく体験してみようと、恐るおそる親指を腹に入れ、探りあてた中骨にそって指を尾のほうへとすべらせます。マイワシの身はとてもやわらか。力を入れすぎると崩れてしまいます。最初のうちはなかなかコツがつかめず、中骨を取り出すと骨にはたっぷりの身が。それでも2、3尾開いているうちに力の入れ具合もわかり、開き方もなんとか様になってきました。

いつの間にか会場にはホットプレートが用意され、香ばしい匂いが漂ってきます。自分で開いたマイワシをそのまま生で、しょう油につけてぺろりと一口でいただいてみました。脂がたっぷりとのっていて、とろけるような甘さ。文句なしのうまさです。きっとたくさんの魚を味わっているはずの参加者も、みなさん口に入れるや驚きの表情を浮かべています。言われて気がついたのですが、これだけ新鮮なものだと魚にもくさみがなく、さばいた手のひらからも魚臭さはにおってきません。

手開きの体験が始まって、気がつけば参加者全員がマイワシに夢中。大人も子供も食べる分は自分で開いて、そのまま生で食べたり、粉をふってタレにつけてかば焼き風にしたり、包丁で粗く刻んでチーズをのせて焼いたり。思いおもいの食べ方で旬の新鮮な魚を味わっています。そんな、開いて作って味わう、の繰り返しがその後も続き、参加者同士の交流が深まるなかで今回も楽しい講座が終わりました。(新美貴資)

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