〈『DoChubu』2013年3月14日更新、2020年5月15日加筆修正〉
愛知海苔問屋協同組合の若手メンバーからなる愛知海苔昭和会(以下、昭和会)主催の
ノリすき体験が2013年2月15日、名古屋市名東区の市立猪高幼稚園でありました。この催しは2月6日「海苔の日」の関連行事で、地元産のノリに親しみをもってもらおうと、市内の幼稚園児を対象に毎年開かれており、今回で7回目。園児約70名が愛知県産の生ノリを使って、1960年ごろまで行われていたというノリすきを体験しました。
昭和会からは、乾ノリと焼きノリの食べ比べやノリがつくられるまでの説明も行われ、園児たちは五感を通してノリにふれ、関心を深めました。
「海苔の日」の由来は、701年(大宝元年)2月6日に制定された「大宝律令」で、ノリが年貢の対象になったことにさかのぼります。毎年「海苔の日」にあわせて全国各地では、ノリに感謝し、消費拡大を図る催しが関係業界によって開かれています。
生ノリに驚く子どもたち
広い教室に大勢の園児が集まると、いよいよ体験の始まり。昭和会の代表幹事・立石公男さんが「ノリ食べてますかー?」と問いかけると、子どもたちからは「はぁーい!」と元気いっぱいな声が返ってきます。
立石さんが、摘み取ったノリを刻んで水でといた、黒々とした海藻をすくって見せると、驚きの反応が教室をうめつくします。バケツに入った生ノリを専用の容器ですくい、巻き簾のうえにのった木製の型のなかに流し込んでこれから行う体験を説明すると、「簡単そう」「すごい」「むずかしそう」。素直な感想があちこちから飛び出して、教室が一気にざわめきます。
さっそく園児たちもノリを薄くのばし、四角にかたどる作業に挑戦です。昭和会のメンバーに手をそえてもらい、一緒になって順番にノリをすいていきます。「がんばれ、がんばれ」「じょうず」「うまい」。初めての体験にちょっととまどいながらも、興味津々の子どもたち。型のなかにゆっくり流しこんだ生ノリがうまく均一に広がると、見守る友達からは拍手がうまれました。
食べ比べて違いを確かめる
別の教室では、園児たちの視線が集まるなか、昭和会のメンバーが乾ノリを電熱器にかざして、濃緑な焼きノリに仕上げていきます。「本物のノリだ!」。最前列で見ていた男の子が大きな声をあげます。
「味とにおいを比べてみて」。園児たちが体験するもう一つが、乾ノリと焼きノリの食べ比べです。「色がちがう」「かたさも違う」。子どもたちは、黒光りする乾ノリと鮮やかな緑に色を変えた焼きノリを手にとり、顔に近づけて色や香りを確かめながら口元へ運びます。
「どっちがおいしかった?」。そう問いかけられると「みどりー!」。香ばしくてパリッとした焼きノリを選ぶほうに多くの手があがりました。なかには磯の香りが深くてちょっとかたい、乾ノリのほうを好みにあげる園児も。正直で多様に富んだ子どもたちの反応に、ノリを毎日扱う大人たちも相好を崩し、新鮮な体験をかみしめているようでした。
昭和会のメンバーは、養殖業者が海で育てて摘み取ってから、わたしたちの食卓に届くまでのノリの製造についてもわかりやすく説明。たくさんの人の手を経て、多くの時間と労力をかけてつくられていることを伝えました。最後に園児たちには、昭和会から県産の焼きノリが一人ひとりに手渡され、にぎやかな体験の時間は終わりました。
園長の小野内貴美子さんは「ノリすきを行ったのは初めて。子どもたちにとってとても貴重な体験で、今日の催しは大成功でした」と振り返りました。企画した立石さんも「子どもたちの反応を見るのはうれしい」と話し、愛知のノリについて「香りのよさがある。今年も品質のよいノリがとれています」とアピールしました。(新美貴資)