里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】日本一の和良鮎を味わいつくす!「長良川まんぱく」の体験プログラム「五感でいただく貴重鮎の食べ比べ@山里の古民家」

〈『DoChubu』2013年4月9日更新、2020年5月15日加筆修正〉

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炭火でじっくりと焼かれていく「和良鮎」

長良川流域の食による地域おこしを応援するイベント「長良川まんぷく博覧会」(岐阜県、同博覧会実行委員会主催)の体験プログラムの一つ、「五感でいただく貴重鮎の食べ比べ@山里の古民家」(和良鮎<わらあゆ>を守る会主催)が2013年2月24日、郡上市和良町で開かれました。

この催しは、和良川の環境保全と「和良鮎」の地域ブランド化に取り組んでいる、和良鮎を守る会が企画したもの。県内外から17名の老若男女が参加し、「平成の名水百選」にもえらばれた清流・和良川の日本一との呼び声が高いアユと、他産地のアユの塩焼きを食べ比べ。「和良鮎」の甘みがあるハラワタを味わった参加者からは、そのおいしさを絶賛する声が多くあがりました。

プログラムでは、「和良鮎」のおいしさの秘密や和良川の環境についての説明も行われ、参加者は豊かなめぐみをうむ和良町の自然について学びました。

絶妙な環境が育む宝物

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体験プログラムの会場となった古民家

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「和良鮎」について説明を聞く参加者

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和良おこし協議会・和良地域おこし応援隊の小林隆臣さん(左)、古民家の家主である岩尾善信さん

プログラムの冒頭、企画・運営にたずさわった和良おこし協議会の和良地域おこし応援隊・小林隆臣さんが「和良鮎」について説明。会場となった築300年以上の歴史をもつ古民家の家主である岩尾善信さんからも、和良につたわる伝統文化や家屋・家財についての解説がありました。

「和良鮎」について小林さんは、「昔からとれ、高値で取り引きされていたが、量が少なく知名度がなかった。守る会で2年前にマークをつくり情報を発信。ブランド化に取り組んでいる」と紹介。日本一のアユを、姿・香り・ワタ・身・総合の5つの審査から決める「清流めぐり利き鮎会」(高知県友釣り連盟主催)で、「和良鮎」が過去最多のグランプリを受賞していることをアピールしました。

なぜ「和良鮎」がおいしいのかについて、和良川の水温が高く、水位が浅いため、アユの餌となる藻がはえやすい。周囲の山々には石灰岩が多く、豊富なミネラルが川に流れ込んで良質な藻が育つのでは、といったいくつかの要因をあげ、「『和良鮎』は絶妙な環境が育む和良の宝物」であると話しました。

江戸中期の元禄の時代から記録として残る、黒光りした太い梁(はり)や独特な造りが特徴の古民家で、参加者は歴史の刻まれた年輪から伝わる、木のぬくもりを肌で感じながら、これから味わう「和良鮎」についての知識を深めました。

貴重な香魚に驚きの声

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落ち着いた雰囲気のなかで「和良鮎」を味わう参加者ら

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「和良鮎」(上)と他産地のアユを食べ比べました

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アユのほかにも和良産の米で炊いたご飯、自家製の味噌汁や漬物などがならびました

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和良鮎を守る会代表の大澤克幸さん(左)、和良おこし協議会事務局長の池戸祐芳さん

正午をすぎると、待ち望んでいたアユが焼きあがり、参加者の前には2匹の塩焼きがのったお皿が運ばれてきます。どちらが「和良鮎」なのかは伏せたままの食べ比べがいよいよ始まりました。参加した人々は、それぞれの色や香りを確かめると、一匹ずつ口へ運んでゆっくりとかみしめ、味覚に全神経を集中させます。

香ばしいにおいを放つアユの表面はパリパリで、なかはふっくら。頭から尾っぽ、中骨から内臓まで。全てを味わいつくしたら、会場ではどちらが「和良鮎」なのか、味や食感、香りについていろんな意見が交わされます。

「いつも食べているアユとぜんぜん違う」「香りがいい」「おいしい方がすぐにわかった」主催者からの問いかけに、参加者の多くが「和良鮎」がどちらかを当て、貴重な香魚のおいしさに驚きの声がやみませんでした。

今回提供された「和良鮎」は、昨年8月から9月にかけて釣られ、冷凍保存されていたもの。アユ釣りの名人であり川魚の料理に精通する、和良鮎を守る会代表の大澤克幸さんが、一匹ずつていねいに竹串に通して塩をぬり、時間をかけて炭火でじっくりと焼き上げました。

良質な藻を食べて育った「和良鮎」は、魚体に黄色がかった線がはいり、ワタに独特の甘みをもっているのが特徴です。大澤さんからは、今回提供した「和良鮎」の調理法についての説明もあり、会場からは質問の手が次々とあがりました。

叙情的なピアノがかなでるジャズが静かにひびくなか、古民家のゆったりとした時間の流れに身をまかせ、「和良鮎」と心のこもった数々の料理を堪能した参加者。プログラムの終了後も、和良の魅力を体感した余韻にひたり、なごやかな歓談がいつまでも続きました。(新美貴資)

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