〈『DoChubu』2013年12月13日更新、2020年5月15日加筆修正〉
岐阜県郡上市和良町のふるさとのイベントである和良フェスタ2013「和良鮎まつり」(同フェスタ実行委員会主催)が2013年10月27日、同町の道の駅和良・和良運動公園で開かれました。町のなかをながれる清流・和良川で獲れた特産の「和良鮎」の塩焼きやアユの身を使ったご飯、雑炊をはじめ、地元で生産された様々な農産物や加工品が販売され、多くの人々でにぎわいました。会場に設けられたステージでは、女性演歌歌手のライブのほか、町民によるダンスや太鼓、詩吟などが披露され、大いに盛り上がりました。
人々の熱気であふれる
郡上市の中心街で、観光地としても知られる郡上八幡のふもとからバスに乗って、急峻で曲がりくねった山道をぐんぐんのぼり続けると、ぽっかりと開いた山あいの盆地が目に飛び込んできます。田畑が一面に広がり、道にそって民家が静かに点在する和良町は、どこまでものんびりとした雰囲気が漂っていました。
バスを降りると、すぐに冷気が体をつつみ、芯までじんわりと響いてきます。里山に訪れつつある冬の足音に耳をすませ、すんだ空気を深く吸い込み、あたりの景観を楽しみながら、ゆっくりと歩いてまつりの会場へ向かいました。
よどみなくさらさらと流れる和良川を越えて、道の駅和良・和良運動公園に着いたのは正午を過ぎたころ。午前10時より始まったまつりは盛況で、たくさんの人たちでいっぱい。青空のもと、吹きつける寒風をものともせず、地元の人々の熱気であふれていました。この日、限定500匹の予定で販売されると聞いていた「和良鮎」の塩焼き(1匹500円)。まずは目当ての香魚を味わおうと、脇目もふらず売り場へ一目散に向かいました。
豊かさを象徴する「和良鮎」
さっそく「和良鮎」の塩焼きをいただきました。売り場で聞くと、用意されたアユは予定の倍近い約950匹で、今年の8月から10月にかけて獲られたものだそう。9月の半ばから10月いっぱいくらいまでの秋のころがアユの産卵期で、記者がいただいたアユもお腹が大きくふくれ、小さな卵がいっぱい詰まっていました。
頭と尾をもって、焼きあがったばかりのアユの身に顔をぐっと近づける。そのお腹に思い切りよくかぶりつくと、独特の香りが鼻腔をぬけていきます。皮はぱりっと香ばしく、身はふっくらとやわらか。とても貴重な清流の恵み。一口食べるごとに感動がわきあがってきます。
販売するブースの横では、和良川漁協や和良鮎を守る会の関係者らが、アユに串をうったり、炭火で焼いたりと忙しく作業に追われていました。
「今年のアユは味がよかった」。
「8月が一番うまい。西瓜のような匂いがして。和良以外では味わえない」。
関係者らはみんな笑みを浮かべ、地元の特産について胸を張ります。
毎年、高知市で開かれている「清流めぐり利き鮎会」(高知県友釣連盟主催)。日本一うまいアユが育つ川を選ぶこの催しが、今年も9月に開かれ、和良川は準グランプリを獲得しました。これまでに2度のグランプリ、4度の準グランプリに輝き、最多受賞を誇っていることが、「和良鮎」が日本一のアユと呼ばれるゆえんとなっています。
人気があって、午前中に売り切れてしまった「和良鮎」のご飯と雑炊を味わうことができなかったのは残念でしたが、和良の人たちと再び会うことがかない、また新たな出会いもあって、交流をより深めることができました。話をうかがったどの方も、郷土への深い愛着とゆるぎのない誇りを胸に秘めながら、日々暮らし生活を営んでいる。そんな様子が、町の豊かさを象徴する「和良鮎」から伝わってきて、いつまでも印象に残りました。
(新美貴資)
※記事中に記載のある価格は、取材した当時のものです。