里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】下呂市馬瀬地区のブランド米「まぜひかり」に密着

〈『DoChubu』2014年12月27日更新、2020年5月16日加筆修正〉

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岐阜県下呂市の山あいにひろがる風光明媚な馬瀬(まぜ)地区。ここには、地域の人びとが大切に育てている「まぜひかり」というブランド米があります。今回は、「まぜひかり」の魅力と、地元の宿泊施設が毎年企画する収穫体験のイベントについてお伝えします。

味が良いと評判のまぜひかり

まぜひかりは、この地でつくられるコシヒカリをブランド化したもので、「ここでしかうまれない米をつくりたい」「馬瀬に来て見て買ってほしい」と、現在18軒の農家が、県が定める環境にやさしい「ぎふクリーン農業」にもとづいて生産に励んでいます。

まぜひかり生産組合員で馬瀬栄農組合代表理事の二村明さんは、地産のブランド米について「昼と夜の温度差があり、馬瀬川があって朝霧が張るという馬瀬の独特の気候によって、米の味が違ってきます。まずは食べてみて。新米はおかずがいらんくらい甘くてうまいですよ」と語ってくれました。

収穫されたまぜひかりは、地区内にある温泉宿泊施設「ホテル美輝」での食事に使われ、また売店でも販売されており、味がよいと宿泊客から好評を得ているそうです。

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米づくりに適した、めぐまれた環境のなかで栽培されるまぜひかり

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収穫体験が行われた馬瀬の集落・堀ノ内にひろがる田んぼ

大人も子どもも夢中で稲刈り

山里で秋が深まりをみせる9月下旬、 稲刈り体験のイベントが開催されました。東西から迫り出す山間から澄んだ青空が顔をのぞかせる、馬瀬のほぼ中心に位置する堀ノ内の集落。あたり一面にひろがる田んぼは、たわわに実った稲穂で黄金色にまぶしく輝き、そのすぐ横を、 集落にそって馬瀬川が清らかに流れていました。

収穫体験のイベントを主催したのは、ホテル美輝で、地元のまぜひかり生産組合の協力を得て、休日の午前中に実施されました。7年ほど前から行われているという収穫体験には、名古屋、一宮、小牧市など、愛知県から訪れた子ども連れの家族が数組参加。収穫体験が始まると、参加者は一斉に田んぼにはいり、手にした鎌を稲の根元ちかくにいれて、次々と刈り取っていきます。

農家のみなさんのアドバイスを受け、大人も子どもも夢中になって作業をすすめていくと、刈り取られた稲穂の下からは、絨毯のようにやわらかな、水気をふくんだ黒っぽい土があらわれ、田んぼの色をみるみる変えていきます。名古屋から参加したという家族の若い母親は、「馬瀬に来たのは初めて。いいところですね」と笑顔をみせ、小さな子どもたちと行う共同作業を楽しんでいました。

イベントの運営に協力する、まぜひかり生産組合長の小池多朗さんは「米は生き物。生産するまでには、いろいろな作業がある。気を抜くことなく、毎日田を見て自然と向き合っている」と、鎌をにぎる手を動かしながら米づくりについて話しました。

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青空のもと、大人も子どもも夢中になって稲を刈りました

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刈り取った稲穂を天日に干す作業も体験しました

地域のめぐみを振興につなげる

この日の収穫体験は、刈り取った稲を穂がついたまま天日に干して乾燥させる「はざ掛け」まで行って終了。このまま一週間から10日間くらい干して脱穀し、籾を摺るなどの工程をへると新米ができあがります。自然とひとの手が生んだ大切な一粒を無駄にしないよう、収穫時に落ちてしまった稲穂を一本いっぽん、田んぼの隅々までみんなで一生懸命さがし、残らず拾いあつめました。

今回のような農作業だけでなく、登山や餅づくりなど、さまざまな観光体験のイベントを企画する、ホテル美輝の運営会社である馬瀬総合観光社長で、南飛騨馬瀬川観光協会長の加藤久人さんは「地域がどうやったら潤うか。地元のみなさんと一緒になり、地域がもつ良いものを組み合わせて、もっとお客さんに来ていただきたい」と話します。

参加者との交流がすすむなか、農家のみなさんが語った「いまの時期は一番いそがしく、うれしい時期」「百姓は毎年が一年生」「自然が相手。人間正直にやらなけりゃあ」という言葉が、その清々しい表情と馬瀬の美しい風景にもかさなって、いつまでも印象に残りました。

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収穫体験のイベントを運営した、左から二村明さん(馬瀬栄農組合)、加藤久人さん(馬瀬総合観光、南飛騨馬瀬川観光協会)、小池多朗さん(まぜひかり生産組合)ら馬瀬のみなさん

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堀ノ内を訪れると、農家のみなさんがつくったたくさんのユニークな案山子が迎えてくれます

(新美貴資)

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