〈『日本養殖新聞』2012年寄稿、2020年5月31日加筆修正〉
天然食材の保全と再生を目指すグループ「おかずトラスト」主催のナマズ試食会が2012年11月22日、愛知県西尾市の食事処「増左ェ門」であり、三河地域の養鰻関係者ら約30人が出席した。会場では市内の一色地区で養殖されたナマズの蒲焼きや唐揚げなどの料理が提供され、参加者は味わいながら意見を交換した。
おかずトラストではウナギの資源回復と養鰻産業の存続のため、蒲焼きにして食べることができ、既存の養殖施設を活用できるナマズをウナギの代わりに一時的に生産するプランを作成し、関係者に呼びかけている。今回の試食会は、養鰻業者に多様な調理で味わえるナマズを知ってもらおうと、おかずトラストのソーシャルデザイナー・山本茂雄さんが企画した。
料理に使われたナマズは、一色で養鰻業を営む大竹弘志さんが今年の夏から養殖に取り組み、出荷サイズまで育てたもの。味噌田楽、唐揚げ(ソースはマヨネーズとケチャップ味)、蒲焼き、マリネ、柳川鍋の5品が調理され、会場にならんだ。
クセのない淡白な肉質が特徴のナマズ。初めて食べるという参加者も多かったが、どの料理にもマッチし、皮もやわらかく骨も気にならないことから評価も上々で、「臭みがない」「冷めてもおいしい」といった声があがった。
養鰻の経営が厳しさを増すなか、大竹さんは今年7月にナマズの稚魚約4300匹を池入れして養殖に挑戦。餌の種類や給餌方法、水温や水質の管理などに苦心しながらも飼育を続けた結果、ナマズは順調に育ち、10月より出荷をスタートさせている。
試食会で大竹さんはナマズの養殖について、ハウスでの成長が早く水温の変化にも順応でき、採卵からの養殖も可能だが、稚魚の共食いや魚体が傷つきやすいといった問題もあると報告。採算については「今年一年やってみないとわからない」と話し、今後の展開については「地元で食べる文化を築くことがポイント」と強調。出席した養鰻関係者らは熱心に耳を傾け、様々な質問を寄せていた。
(新美貴資)
※記事の内容は、2012年11月の取材当時のものになります。