里山川海を歩くライターの活動記録

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「ウナギの持続的利用は可能か うな丼の未来」について議論 東大でウナギシンポ開催 研究者や業界関係者らが意見を発表

〈『日本養殖新聞』2013年寄稿、2020年6月6日加筆修正〉

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東大弥生キャンパスで開かれた公開シンポジウム

東アジア鰻資源協議会日本支部主催(共催:GCOEアジア保全生態学、東大農学生命科学研究科)の公開シンポジウム「ウナギの持続的利用は可能かーうな丼の未来」が2013年7月22日の土用の丑の日に東京・文京区の東大弥生キャンパス弥生講堂一条ホールであった。

会場には、ウナギの資源問題に関わる研究者をはじめ、漁業者や養鰻業者などの業界関係者、行政担当者、報道関係者ら約200人が出席。基調講演の他、14の発表があり、参加者からも質問が相次いだ。

今回のシンポジウムは、なぜ資源が減ってしまったのか。どうすれば回復させることができるのか。これからウナギとどのように向き合っていくべきか。様々な立場から関係者が考えを持ち寄って議論を尽くそうと開かれた。

午前9時から始まったシンポジウムでは冒頭、GCOEアジア保全生態学から鷲谷いづみ氏(東大)が挨拶。続いて「ニホンウナギとともに生きる」と題して、同協議会会長の塚本勝巳氏(日大)が基調講演。資源減少の要因として、乱獲や河川環境の悪化、海洋環境の変化などをあげた他、生態系をかく乱する恐れのある異種の問題にも言及。100年後を見すえて、①天然ウナギは「獲らない、売らない、食べない」②異種ウナギは導入しない③河川環境と保全意識の向上を図る鰻川計画の推進④完全養殖の研究推進と早期実現⑤飽食をやめる消費スタイルの改革―を訴えた。

続いて午前と午後にわたって発表が行われた。題名と発表者は、以下の通り。

【セッション1:日本のウナギの現状】「日本人はウナギをどう食べてきたのか」勝川俊雄氏(三重大)、「ウナギの資源評価」田中栄次氏(東京海洋大)、「IUCNウナギレッドリスト会議報告」海部建三氏(東大)、「ウナギの情報と経済」櫻井一宏氏(立正大)、「産卵場調査から予測するニホンウナギの未来」渡邊俊氏(日大)、「ウナギ人工種苗生産技術への取り組みー経過と現状」田中秀樹氏(水産総合研究センター増養殖研)、「異種ウナギは救世主になれるのか」吉永龍起氏(北里大)

【セッション2:資源回復への試みーステークホルダーからの提言】「蘇るか浜名湖ウナギ」吉村理利氏(浜名漁協)、「今までの資源保護対策とこれからの資源保護対策」白石嘉男氏(日鰻連)、「蒲焼商の役割(声明文紹介)」涌井恭行氏《代読》(全蒲連)、「ウナギ問題をどう伝えるか」井田徹治氏(共同通信)、「環境省第4次レッドリストについて」中島慶二氏(環境省)、「ウナギをめぐる最近の状況と対策について」宮原正典氏(水産庁)、「東アジア協働へ向けた鰻川計画」篠田章氏(東京医科大)

最後に総合討論「人間とウナギーこれからのつき合い方」が行われ、閉会した。参加者は危機に直面しているウナギ資源について共通の認識を深め、持続的な利用に向けて活発に意見を交わした。(新美貴資)