里山川海を歩くライターの活動記録

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碧南海浜水族館が講演会「ウナギトーク」を開催 3名の研究者が発表し参加者との活発な質疑応答も

〈『日本養殖新聞』2015年寄稿、2020年6月19日加筆修正〉

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参加者から寄せられた質疑の応答も行われ、多くの人々が熱心に耳を傾けた

愛知県碧南市碧南海浜水族館碧南市青少年海の科学館で2015年9月19日、講演会「ウナギトーク」が開かれ、招かれた3名のウナギ研究者が発表した。会場には約50名の一般、関係者らがつめかけて活発な質疑応答も行われ、ウナギの最新の研究成果について理解を深めた。

同水族館では、今月27日まで夏の特別展「おいしいウナギの話展」を開催中で、今回の講演会はその一環として企画された。

講演会では、望岡典隆九州大学大学院農学研究院准教授が「ウナギのふるさとをさがして」、揖善継和歌山県立自然博物館学芸員が「ウナギと人のよもやま話」、冨山実愛知県水産試験場主任研究員が「養殖物はオスばかり、天然物はメスばかり?不思議なウナギの生態」と題して、発表した。

望岡氏は、ウナギの生活史や産卵場を探索した航海調査、産卵場で捕獲した親ウナギからわかったことなどについて講演で語った。

産卵場で捕れた親魚の雄と雌を調べた結果、70%のウナギが期間はさまざまだが淡水の履歴をもっていることがわかり、「汽水域を含む川全体を保全する必要がある」と強調。どこから来たのか由来を推定したところ日本、中国、台湾の河川からのものが含まれており、「東アジア全体で保護に取り組む必要」があると訴えた。

さらに「往復数千キロの旅をするウナギを守ることは地球環境を守ること」、「最高位捕食者であるウナギが健やかに棲める川は他の生き物にとってもよい場所である」と話し、ウナギを守ることの大切さを来場者に伝えた。

揖氏は、縄文人も食べていたというウナギの食文化や、釣りやわな、引っ掛けたりはさんだりしてウナギを捕る漁具などを詳しく紹介。各地で見られるウナギにまつわる信仰や神事、風習など、人と関わってきた歴史について多くの話題を提供した。

冨山氏は、養殖のウナギは約九割が雄、天然は多くの川で9割が雌であると、魚類の性分化の仕組みを示しながら解説。国内外のウナギの性比を明らかにした調査事例から、雌雄の性分化には「密度が影響している可能性が高い。密度が高いと雄が多くなるのでは」と語った。また海外のダムに設置された、ウナギが遡上できる簡易魚道も紹介し、来場者の関心を集めた。

その後は、ウナギの生態などについて来場者から質問が寄せられ、活発な質疑応答が交わされた。

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同水族館で開催中の夏の特別展「おいしいウナギの話展」

(新美貴資)