〈『日本養殖新聞』2015年寄稿、2020年6月19日加筆修正〉
岐阜県下呂市馬瀬地区にある観光施設「フィッシングセンター水辺の館」で2015年9月27日、釣り文化の交流を図る新たな拠点となる「常盤文庫」の準備式が開かれ、地元の関係者ら約30人が出席した。
主催したのは、同館に事務局を置く「南飛騨馬瀬川観光協会」で「岐阜の川人文化研究会」が協力した。
常盤文庫は、伝説の釣り師でアユの友釣りを各地に広めた「山下福太郎」の評伝を世に初めて発表した故常盤茂雄氏が残した、釣りや魚などに関する書籍435点や写真などを収めたもの。このほど遺族より同研究会にコレクションが寄贈され、同館の中に創設された。故常盤氏が、長年調査で通い親しんだ縁の深い同地区で、文化遺産として活用される。
同館では今後、常盤文庫を一般に公開する。天然アユの産地として広く知られる馬瀬川を眺めながら伝統漁具に触れ、訪れた人々が語らうことのできる場として、さまざまなイベントも企画し利用を呼び掛けていく。
午前中に開かれた準備式の冒頭、挨拶に立った同研究会代表の長尾伴文さんは、常盤文庫の創設や山下福太郎の伝説について説明。「友釣りの技法を確立し進化させた、伝説の釣り師の舞台となったのが馬瀬で、文庫作りを通して釣り文化の交流を図っていきたい」と述べた。
式では、故常盤氏の息子である真さんに名誉館長の就任状が授与された他、同協会、同市観光課、馬瀬地方自然公園づくり委員会などより、地元の魅力や活性化に向けた取り組みが報告され、馬瀬鮎のピーアールも行われた。
真さんは「父はいろんな川に調査で行ったが、馬瀬川は日本一の清流だと褒めていた。ここに文庫ができたことは、父にとって本望だと思う。多くの方に釣り文化に関心を持ってほしい」などと話した。
この他、読み聞かせサークルによる昔話の朗読も行われ、最後に益田清風高校生徒の尾里真之介さんが、馬瀬川の未来に向けたメッセージを発表し、閉会した。
昼食では、馬瀬鮎を使った雑炊が提供され、参加者は交流を深めながら味わった。
午後からは、馬瀬鮎と美濃和紙を使ったカラー魚拓作りが行われ、制作者の篠宮正昭さんが実演。来場した親子らが指導を受けながら体験し、色鮮やかなアユの魚拓を取り楽しんだ。
(新美貴資)