里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

『日本養殖新聞』

新美貴資の「めぐる。〈142 〉」豊かな伊勢湾を取り戻せるか シンポ「海と川」に参加して

〈『日本養殖新聞』2024年4月15日号寄稿〉 伊勢湾と長良川が抱えている問題について考えるシンポジウム「海と川」が3月31日、岐阜市内であった。長良川市民学習会など約30団体からなる、よみがえれ長良川実行委員会が主催し、市民ら約100人が参加した。同委…

新美貴資の「めぐる。〈141〉」手で作るということ 心に残る味の記憶

〈『日本養殖新聞』2024年3月15日号寄稿〉 「気持ちがイライラしていると作る料理がしょっぱくなる」。昔、西洋料理のシェフから聞いた言葉だ。 料理には精神が宿る。こうしたことは、作る側だけでなく食べる側にもいえるのではないか。仕事の納期に追われて…

新美貴資の「めぐる。〈140〉」問われる専門店の真価 特別な価値をつくる

〈『日本養殖新聞』2024年2月15日号寄稿〉 先日、牛丼チェーンの吉野家で鰻重を食べた。驚いた。予想していた味よりも、ずっと食べやすくて満足感を覚えたからだ。別の日には、名古屋市内に昨年開店した、ウナギ専門の格安チェーンである「鰻の成瀬」にも行…

新美貴資の「めぐる。〈139〉」モノづくりへの憂慮 真面目な職人を応援

〈『日本養殖新聞』2024年1月25日号〉 2024年は重く苦しい年明けになった。能登半島地震、羽田空港の衝突事故、北九州市の大規模火災……。痛ましい災害や事故などが各地で起き、おめでという言葉を発することも、耳にすることもほとんどないままに年始を過ご…

【2024年の年頭所感】ウナギの魅力を探求し表現する

〈『日本養殖新聞』2024年1月10日号寄稿〉 新年あけましておめでとうございます。 今年は昨年に続いて、東海や名古屋の地域、またそうした所の歴史という視点から、水産資源や生き物として見るだけではないウナギの魅力をもっと探し求めていきたいです。 各…

新美貴資の「めぐる。〈138〉」日々進化する技術 完全養殖で変わる世界

〈『日本養殖新聞』2023年12月15日号寄稿〉 今年の秋以降に発表されたニュースの中から気になったものを取り上げて、ウナギ業界のこれからについて少し考えてみたい。 そのニュースは、以下の2つのネット記事である。 ①“サステナブルな餌料と養殖で生まれた…

新美貴資の「めぐる。〈137〉」 大鰻と龍の伝説 愛知県岡崎市の鰻池

〈『日本養殖新聞』2023年11月15日号寄稿〉 以前に愛知県に存在する鰻の付く地名について書いた。私が調べたところによると、県内には12ケ所の鰻の地名が残っている。その中の1つに、岡崎市羽根町の「鰻池」がある。それはかつてあった池の呼び名で、現在は…

新美貴資の「めぐる。〈136〉」 街のうなぎを集める 個性的な鰻屋の看板

〈『日本養殖新聞』2023年10月15日号寄稿〉 以前から「うなぎ」の文字が気になっていて、昨年くらいから少しずつ集めるようになった。現在は「街のうなぎ収集者」となり、カメラを持って名古屋市内を時々歩いている。 集めているのは、主に鰻屋の看板に描か…

新美貴資の「めぐる。〈135〉」 レトロな鰻屋は町の遺産である

〈『日本養殖新聞』2023年9月15日号寄稿〉 自分の好きなウナギ。それは、味だけではないということが、最近になってわかってきた。その店が持っている雰囲気、人格ならぬ「店格」とでもいうのだろうか。そうしたところに惹かれ、また食べに行きたいと思うこ…

【新美貴資の〈めぐる。(133)〉】尾張名古屋の歓楽街 蒲焼町の痕跡を探す

〈『日本養殖新聞』2023年7月25日号寄稿〉 以前に、愛知県名古屋市中区にかつて存在した「蒲焼町」を取りあげた。蒲焼町は、起源や歴史について諸説あり、謎が多い。今回はさらに調べを進めて、考えてみたい。 名古屋の城下町で、碁盤の目のように区画された…

【新美貴資の〈めぐる。(132)〉】食文化の一翼を担う ウナギの料理本を読む

〈『日本養殖新聞』2023年6月15日号寄稿〉 ウナギの調理について知りたくて、書かれている本を探していたら面白い一冊を見つけた。柴田書店が1995年に出版した『別冊専門料理 日本料理技術百科第3巻 日本料理の伝統技術 うなぎ 天ぷら ふぐ すっぽん あんこ…

【新美貴資の「めぐる。(131)」】勇気と希望を灯す 大切にしたい言葉

〈『日本養殖新聞』2023年5月10日号寄稿〉 4月で50歳になった。人生は第三コーナーを回っている。ふと思う。ゴールまでにあとどれくらい文章が書けるのだろう。なにをどのように伝え、残すことができるのかと。 経年による心身の変化を実感するうちに、言葉…

【新美貴資の「めぐる。(130)」】チャットGPTへの懸念 仕事で問われる真価

〈『日本養殖新聞』2023年4月15日号寄稿〉 驚いた。「養殖業が発展するためには何が必要か?」という私の問いに対する答えにである。以下の文章を読んでみてほしい。 〈養殖業が発展するためには、以下のようなことが必要です。 1.生産技術の向上:養殖の…

【新美貴資の「めぐる。(129)」】生命の実感を取り戻す 名古屋にもあった放生池

〈『日本養殖新聞』2023年3月15日号寄稿〉 人間は命を奪って生きている。毎日の食卓にならぶたくさんの食物。それらは、地球が育てた動物や植物である。私たちは、無数の命から生きる糧を得ている。 それなのに、食べる物の価値は軽んじられ、お金さえあれば…

【新美貴資の「めぐる。(128)」】やりたいことをやる 今を生きるために

〈『日本養殖新聞』2023年2月15日号寄稿〉 気が付いたら、今年もあっという間に1月が過ぎ、2月に入ってしまった。このままだと、またたく間に3月も終わりそうである。 みなさんは、今年やってみたいことはありますか。一度きりの人生、楽しまなければもった…

【新美貴資の「めぐる。(127)」】愛知に多い鰻の地名 命名の謎を調べたい

〈『日本養殖新聞』2023年1月25日号寄稿〉 これまでにこの連載で「鰻」のつく地名について何度か書いてきた。今年は、ウナギのいろいろな世界のなかでも、特に地名について力を入れて調べてみたいと思っている。 愛知県に残っている、またはかつて存在した鰻…

【新美貴資の「めぐる。(126)」】三河のウナギ伝説 坂上田村麻呂と鰻塚

〈『日本養殖新聞』2022年12月15日号寄稿〉 愛知県内にウナギの伝説があった。愛知は、ウナギの生産と消費が盛んで、食文化が栄えている。また、県内には「鰻」の付く地名が多い。愛知とウナギには、深いつながりがある。 だから、神の使いであるウナギに導…

【新美貴資の「めぐる。(125)」】名古屋の巨大鰻 江戸時代の中川を探訪する

〈『日本養殖新聞』2022年11月15日号寄稿〉 名古屋に巨大鰻が現れる。そんな出来事が150年以上前の江戸時代にあり、当時の人々を驚かせたようだ。 巨大鰻が出現した場所は、現在の「ささしまライブ駅」(中村区)近くから名古屋港(港区)を結ぶ中川運河で、…

【新美貴資の「めぐる。(124)」】かつてのウナギ屋を想う 円頓寺商店街での出会い

〈『日本養殖新聞』2022年10月15日号寄稿〉 あの場所で目にした光景が忘れられない。今も脳裏のどこかにずっとこびりついている。もう10年くらい前になるだろうか。その出会いは、突然にやってきた。 日は暮れていたのかもしれない。名古屋市西区にある円頓…

ウナギ供養と放流行事を行う 三重・津うなぎ専門店組合

〈『日本養殖新聞』2022年9月15日号寄稿〉 津うなぎ専門店組合(上原正広組合長)は8月29日、同市内でウナギ供養を行い、その後に放流行事を実施した。 行事は、組合に加盟する「はし家」「新玉亭」「大観亭支店栄町本店」「両口屋」の四店舗によって行わ…

【新美貴資の「めぐる。(123)」】小さな宇宙に驚く 川の生き物を観察して

〈『日本養殖新聞』2022年9月15日号寄稿〉 以前にミジンコを採取し、観察したことを書いた。普段の私たちが目にすることのない、人間とはスケールの異なる世界への興味が尽きない。 残暑の厳しい昼下がり、重いペダルをこいで、町の近くを流れる香流川(か…

【新美貴資の「めぐる。〈122〉」】ユーチューブを始めてみた 地元の水産業を応援したい

〈『日本養殖新聞』2022年8月25日号寄稿〉 2年前から動画共有サービス「ユーチューブ」への投稿を始めた。投稿は不定期で、作成した動画の数はまだ少ないが、これまでに愛知県内で食べた魚料理、名古屋市内のウナギ店のうな丼、アユやサバなどの水産加工品…

【新美貴資の「めぐる。〈121〉」】一流の職人とは? 不屈と信念と人柄

〈『日本養殖新聞』2022年7月15日号寄稿〉 世の中にはいろんな仕事がある。その中で「職人」と呼ばれる人、またそうした人びとが従事する仕事とはなんなのだろう。 水産業でいえば、漁師や競り人、仲卸や魚屋で働く人などが真っ先に思い浮かぶ。でも、職人…

【『日本養殖新聞』の〈めぐる。〉連載10年を迎えて】「ひと・もの・こと」をもっと伝えたい  フリーライター・新美貴資

〈『日本養殖新聞』2022年6月15日号寄稿〉 今回でこの連載が10年目を迎えました。いつも読んで下さっている購読者の皆さんに感謝し、お世話になっている編集部にもお礼を申し上げます。 私は、ライターになる前は、東京で水産業界紙記者として働いていまし…

【新美貴資の「めぐる。〈120〉」】大切な生命を弔う供養 人間と生きものを物語る

〈『日本養殖新聞』2022年6月15日号寄稿〉 世の中では、多くの「供養」が行われている。供養とは、「仏前や死者の霊前に有形・無形の物を供え、加護を願い冥福(めいふく)を祈るための祭事を行うこと」とある(新明解国語辞典〈第五版〉)。 ネットで「供…

【新美貴資の「めぐる。〈119〉」】想像の失われた社会で 生産者の努力を伝えたい

〈『日本養殖新聞』2022年5月25日号寄稿〉 これまでの価値観が崩れて、守られてきた伝統や美徳がどんどん壊されている。そして、その勢いはさらに加速度を増している。文明の発展は、人間を幸せにしてきたのだろうか。縄文時代のことを調べていると、当時の…

【新美貴資の「めぐる。〈118〉】縄文人も食べていたウナギ  魚食のルーツは縄文時代にあった

〈『日本養殖新聞』2022年4月15日号寄稿〉 日本人はいつからウナギを食べていたのか。どんな漁法で捕まえ、どうやって食べていたのだろう。疑問と興味がふくらんでいくなかで、時代をさかのぼり「縄文」にたどり着いた。 『縄文の思想』(瀬川拓郎、講談社…

【新美貴資の「めぐる。〈117〉」】適切に手を加え多様性を守る 池干しから自然を考える

〈『日本養殖新聞』2022年3月15日号寄稿〉 〈この世に存在している生物はそれがどんなにつまらなく見える生き物であったとしてもそれぞれの居場所で、ナンバー1なのである〉(『弱者の戦略』稲垣栄洋、新潮社)。 昨年11月、名古屋市名東区の猪高緑地にあ…

【新美貴資の「めぐる。(116)」】長い間ありがとう 店の始まりと終わり

〈『日本養殖新聞』2022年2月15日号寄稿〉 町はどんどん変わる。この数年で、昔から地元で営業し残っていたわずかな店が、次々と消えてしまった。 昭和の子どもの頃を思い出す。本、レコードレンタル、おもちゃ、駄菓子、薬、酒、文房具、電気、米、パン、…

【寄稿記事】養殖アユの山崎水産クラウドファンディングに挑戦 アユのファンを増やしたい

〈『日本養殖新聞』2022年1月25日号寄稿〉 愛知県豊橋市で養殖アユを生産している山崎水産は、昨年12月よりインターネットで不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する「クラウドファンディング」を実施している。 同社がこのような取組を行うのは初めて…