里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

『日本養殖新聞』

【新美貴資の『めぐる。〈115〉』】挑戦が食文化を豊かに チェーン店から飲食を考える

〈『日本養殖新聞』2022年1月15日号寄稿〉 「トマト牛プレめし」「マルゲリータピザ」「ビーフシチューパイ(期間限定)」。これらは、私の好きな飲食チェーン店が提供している商品である。 普段の食事は自炊することが多いが、外で食べる時は松屋、サイゼ…

【日本養殖新聞】《年頭所感》ウナギから自然や社会を考える

〈『日本養殖新聞』2022年1月15日号寄稿〉 新年が明けました。 新型コロナウイルスの変異株による感染拡大が懸念されており、今年も多難な年明けとなりました。長引くコロナ禍で、もう以前のような社会には戻らないでしょう。人類は幾多の厄災に見舞われな…

【新美貴資の『めぐる。〈114〉』】プランクトンネットを自作 ミジンコを探してみた

〈『日本養殖新聞』2021年11月15日号寄稿〉 水の中で暮らすミジンコをみなさんは見たことがありますか?この生き物は、多細胞生物でちゃんと神経を持っている。エビやカニと同じ甲殻類で、動物プランクトンの仲間である。泳ぐことはできるが、遊泳力が弱いた…

【新美貴資の『めぐる。〈113〉』】川から環境を考える 流域の中を歩いてみよう

〈『日本養殖新聞』2021年11月15日号寄稿〉 北海道で秋サケの定置網漁が不振であるという(『中日新聞』2021年11月4日)。記事では、道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場の研究者が原因について、気候変動の影響による海水温上昇や、道内各地の川に…

【新美貴資の『めぐる。〈112〉』】郷土の宝ものを未来に 今の長良川に思うこと

〈2021年10月15日号寄稿〉 短かった夏が終わり、秋がやってきた。秋といえば長良川なのだ。昨年も岐阜市の中流域に出かけ、産卵期のアユを観察した。今年もまた通うつもりである。 岐阜市内にかかる長良橋のたもとから長良川の上流を眺めた。緑をたくわえた…

【新美貴資の「めぐる。111」】河原から多自然を考える 川と陸をむすぶ大切な存在

〈『日本養殖新聞』2021年9月15日号寄稿〉 ウナギとミミズの関係を知ってから、河原のことが気になるようになった。 河原は、大雨が降るたびに冠水する。そして、そこにある多くのものをかき混ぜ流してしまう。生き物にとっては、生育するうえでとても条件…

ウナギ供養と放流を実施  三重・津うなぎ専門店組合

〈『日本養殖新聞』2021年9月15日号寄稿〉 津うなぎ専門店組合(上原正広組合長)は2021年8月23日、同市内でウナギ供養と放流の行事を実施した。 行事には、組合に加盟する「はし家」「新玉亭」「大観亭支店栄町本店」「両口屋」の四店の他、三重県の地域…

【新美貴資の「めぐる。110」】ミミズはウナギの重要な餌資源 陸と川のつながりが大切

〈『日本養殖新聞』2021年8月25日号寄稿〉 7月、岐阜市の長良川を歩いた。どうしても見ておきたいところがあった。大繩場大橋から鏡島大橋にかけての左岸が、川とは思えない異様な光景に変わってしまっていたのだ。 その河原は、1キロくらいにわたりコン…

【新美貴資の「めぐる。109」】人と人をつなぐ飲食店 生かし生かされて回る世界

〈『日本養殖新聞』2021年7月15日号寄稿〉 この店に来るとリラックスできる。あの店主や店員に会いたい。そんな飲食店が皆さんにはありますか。 コロナ禍の重苦しい空気に押しつぶされそうになる時がある。その一方で、自分を見失いそうになるくらいの速さ…

うなぎ弁当1000食を無償で提供 医療従事者やひとり親家庭に 愛知県名古屋市「うなぎ屋 比呂野」

〈『日本養殖新聞』2021年7月5日号寄稿〉 愛知県名古屋市昭和区の「うなぎ屋 比呂野」(廣野耕史社長)は、今年5月までにうなぎ弁当1000食を医療従事者やひとり親家庭に無償で提供した。こうした取組に人びとの共感が集まり、同店には感謝や応援の声がたく…

【新美貴資のめぐる。〈108〉】地名が語る歴史 鰻廻間の由来を考える

〈『日本養殖新聞』2021年6月15日号寄稿〉 いつ、だれが、どのようにして付けたのか。前回の続きで、名古屋市名東区にある「鰻廻間(うなぎはざま、以下、異字体を新字体に改める)」の地名について考えてみた。 どんな名前にも必ず命名者がいる。そこには…

最高値4万円!長良川天然アユ初競り 発育良好もコロナ禍で需要減 岐阜市中央卸売市場

〈『日本養殖新聞』2021年5月25日号寄稿〉 岐阜県内の長良川で漁獲された天然アユの初競りが5月11日、岐阜市中央卸売市場で行われた。 この日に一部流域でアユ漁が解禁となり、入荷した数量は36枚(1枚=約1キログラム、昨年33枚)。1枚当たりの最高値…

【新美貴資の「めぐる。〈107〉」】かつて「鰻廻間池」があった場所を訪ねる

〈『日本養殖新聞』2021年5月10日号寄稿〉 以前に紹介した名古屋市名東区にある「鰻廻間」(うなぎはざま。以下、異字体を新字体に改める)という地名を覚えているだろうか。この鰻廻間に、かつて「鰻廻間池」と呼ばれるため池があったことにも触れた。その…

【新美貴資の「めぐる。〈106〉」】都会の源流を探して 忘れられた川をめぐる

《『日本養殖新聞』2021年4月15日号寄稿》 どこの町にもあるのではないか。ひっそりと静かに流れている小さな川やどぶが。私が暮らす所の近くにも、実はある。 名前のわからない川(私は川と捉えている)は、愛知県の名古屋市と長久手市の境のあたりを南北…

【新美貴資のめぐる。〈105〉】ウナギはいるのかいないのか マイリバーを歩いて考える

《日本養殖新聞2021年3月15日号寄稿》 ふと思った。なぜウナギは川を上るのだろうかと。遡上(そじょう)。『広辞苑』には、「流れをさかのぼって行くこと」とある。 マリアナ諸島の西方海域から、東アジアの沿岸域までのふ化してからの移動も大変だが、一…

【新美貴資の「めぐる。(104)」】いつもと違う味を楽しむ 蒲焼きのタレを使った料理に挑戦

〈『日本養殖新聞』2021年2月15日号掲載〉 コロナ禍による自粛生活で、自宅にこもる毎日が続いている。私が暮らす愛知県では、1月14日より緊急事態措置が実施され、これにより飲食店に出されていた営業時間の短縮要請が強化された。 食事は元々自炊が中心…

【新美貴資の「めぐる。103」】人として最良を尽くす 一隅を照らして連帯を

《日本養殖新聞2021年1月25日号寄稿》 新型コロナウイルスの感染拡大がいつ収束するのか、まったくわからない多難な年明けとなった。私たちは、これまでの生き方の見直しを迫られているように思う。 昭和の高度経済成長によって人びとは便利さや快適さを手…

【新美貴資の「めぐる。(102)」】アユの最期と命の連鎖 晩秋の長良川に通う

〈『日本養殖新聞』2020年12月15日号寄稿〉 11月は中頃から岐阜県内の長良川に通い続けた。中流域のあるところによどみがあり、産卵期のアユがたくさん身を寄せるのだ。 ある晴れた日の昼下がり。その場所に行ってみると水面のあちこちでアユが跳ねている。…

【新美貴資の「めぐる。(99)」】海から人生、川を旅する ウナギに関する3冊を紹介

〈『日本養殖新聞』2020年9月15日号寄稿〉 夏の疲れがどっと現れるこの時期、休息を取る間に本のページをめくるのもいい。外出などしなくても、読書が思考と想像の旅にいざなってくれる。今回は、私がこれまでに読んだウナギに関する本の中から3冊を紹介し…

〈新美貴資の「めぐる。(101)」〉自分を諦めないで 若人に伝えたいこと

〈『日本養殖新聞』2020年11月15日号寄稿〉 三重県鳥羽市に石鏡(いじか)という漁師町がある。ここに毎年、奈良県の中学校から生徒が臨海実習をしにやってくる。泊まるホテルでは、夜になると学生たちがグループに分かれ、大人たちから講話を受ける。 講話…

〈新美貴資の「めぐる。(100)」〉鰻谷を探して遡る 愛知県小牧市の大山川

〈『日本養殖新聞』2020年10月25日号寄稿〉 鰻沢、鰻田、うなぎ(へんは魚。つくりは、上から「なべぶた」「回」「日」「一」)廻間……。愛知県には「鰻(他の字体を含む)」のつく地名がいくつかある。きちんと調べてみなければならないが、魚類のなかでもそ…

【新美貴資の「めぐる。(98)」】ガサガサでウナギを探す 愛知県長久手市の香流川

〈『日本養殖新聞』2020年8月25日号寄稿〉 現代の都会を流れる小さな川にもウナギはいるのか。名古屋で暮らす年来の疑問である。都市のコンクリートで囲まれた狭小な河川において、ウナギを捕まえたり見たりしたという話を私は聞いたことがない。 愛知県長…

ウナギの魅力について講演 人とウナギの関係を大切に 本紙連載中のライター新美貴資氏

〈『日本養殖新聞』2020年8月10日号掲載〉 本紙で「めぐる。」を連載中のフリーライター・新美貴資氏は2020年7月18日、愛知県名古屋市内の市環境学習センターで「ウナギの魅力~取材から見た生態、食文化、職人、人との歴史~」と題して講演した。 主催した…

〈新美貴資の「めぐる。(97)」〉深まる謎と膨らむ興味 ウナギを探し愛知・春日井の里を歩く

〈『日本養殖新聞』2020年7月15日号寄稿〉 中日新聞2020年6日1日の記事「用水路にニホンウナギ」の記事を見て驚愕した。 愛知県春日井市内の用水路で、泥さらいをしていた作業員が細長い魚を発見。名古屋港水族館に確認してもらったところ、ニホンウナギの稚…

〈新美貴資の「めぐる。(96)」〉感動と喜びを提供する ウナギ職人はすばらしい仕事

〈『日本養殖新聞』2020年6月15日号寄稿、2020年8月9日加筆修正〉 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が5月25日、全面解除となった。愛知県は、それより早い14日に対象区域から解除され、私が暮らす名古屋の町も人や物が動き出した。 今懸念しているの…

〈新美貴資の「めぐる。(95)」〉奪われた社会の連繋 コロナの試練を乗り越えて

〈『日本養殖新聞』2020年5月10日号寄稿〉 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が出されて3週間が経過した。この原稿を書いている今も、予断を許さない緊迫した状況が続いている。 名古屋市のはずれにある私の町も、多くの店が休業し、通りからは…

〈新美貴資の「めぐる。(94)」〉希望を灯し未来につなぐ 自分を守ることは大切な人を守ること

〈『日本養殖新聞』2020年4月15日号寄稿〉 新型コロナウイルス感染症の猛威が止まらない。世界がこのウイルスの脅威を見誤った。この原稿を書いている2020年4月7日現在、東京都では感染者が日を追うごとに増加し、いつ感染爆発が起こるかわからない緊迫した…

〈新美貴資の「めぐる。(93)」〉できることに努める 止まらない新型コロナウイルス

〈『日本養殖新聞』2020年3月15日号掲載、2020年8月4日加筆修正〉 この原稿を書いている時点(2020年3月9日)で、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。安倍首相が小中高校などに臨時休校を要請した3日後の3月1日、名古屋駅とその周辺を歩いた。 普段…

新商品「うなりプリン」の試食会 岐阜県海津市「いなりや」が地元のパン屋と連携し企画

〈『日本養殖新聞』2020年寄稿、2020年6月28日加筆修正〉 試食会で提供されたウナギのタレが付いた2種のプリンとクロワッサンのセットメニュー 岐阜県海津市の千代保稲荷神社の参道で営むウナギ料理店「いなりや」は2020年6月7日、新商品「うなりプリン」の…

岐阜市中央卸売市場で天然アユの初競り 新型コロナの影響で出荷、価格とも前年より下降

〈『日本養殖新聞』2020年寄稿、2020年6月27日加筆修正〉 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、売買参加者は競り台に上がらず距離をあけて取引を行った 岐阜県内の長良川などで漁獲された天然アユの初競りが2020年5月11日、岐阜市中央卸売市場で行われ…