里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

奈良教育大学付属中学校の臨海実習で生徒のみなさんに講話を行いました

2022年5月17日、三重県鳥羽市の石鏡第一ホテル神俱良で、臨海実習のため宿泊する奈良教育大学付属中学校の生徒のみなさんに講話を行いました。

同中学校からは、これまでにも何度か講話をする機会をいただいています。

今回講話した内容は「自分の興味をふくらませて探求する~水産ライターの仕事とは~」。

①取材現場のこと

②ライターの仕事

③みなさんへのメッセージ

の内容で話題を提供。水産業の魚を獲る・育てる、集荷・選別・分配、加工・調理・販売などの分野において、多くの人びとが働いて、私たちは安心・安全な魚を食べることができていること、取材や文章を書くうえで心掛けていること、私のこれまでの半生における挫折や失敗、なぜライターになったのか、あきらめないことの大切さなどについて約1時間にわたりお話をさせていただきました。

これから社会に出る若い方々が、今後の進路や将来を考えるうえで、何かの参考になればうれしいです。私自身も今回の講話を通して、これからの生き方を改めて考え、気持ちを新たにすることができました。

【新美貴資の「めぐる。〈118〉】縄文人も食べていたウナギ  魚食のルーツは縄文時代にあった

〈『日本養殖新聞』2022年4月15日号寄稿〉

日本人はいつからウナギを食べていたのか。どんな漁法で捕まえ、どうやって食べていたのだろう。疑問と興味がふくらんでいくなかで、時代をさかのぼり「縄文」にたどり着いた。

『縄文の思想』(瀬川拓郎、講談社)によると、縄文文化は〈1万5000年まえから、先島諸島沖縄県南西部の宮古八重山両諸島)をのぞく南西諸島から北海道にかけて、日本列島で展開した狩猟・漁撈・採集の文化〉であるという。

縄文文化が日本人の未来を拓く』(小林達雄徳間書店)には、日本列島で約1万5000年前に始まった土器の製作、使用は、最初にして最大級の歴史的画期であったと書かれている。

縄文土器を作り使うことは、定住することができて初めて可能となる。遊動的から定住的な生活への変革は、狩猟・漁撈・採集の文化を高めただけでなく、食料の貯蔵や加工保存、さらに煮炊きする調理技術の発達を促し、人間の暮らしに革新をもたらしたはずである。

私たちは、共同社会の原形がかたまり文明の発展が始まるのは、稲作が本格化する弥生時代からという教育を受けてきた。しかし、この2冊を読んで、1万年以上続いた縄文にこそ、自然と共生してきた日本文化の源流があり、現代人の基底に生きていると確信した。

縄文人が暮らした遺跡が、愛知県名古屋市内にはいくつも残っている。そのうちの一つ、瑞穂区山下通の大曲輪貝塚(おおぐるわかいづか)を訪ねてみた。

貝塚とは、古代人が食べて捨てた貝殻などが地中にうずまってできた遺跡である。史跡として指定されている場所は、もっとも近い名古屋港の海から6キロくらい離れた市瑞穂公園陸上競技場の北西側にあった。あいにく史跡を含む一帯は工事中で、近くに寄って見ることはできなかった。当時は「縄文海進」によって、現在よりも海面が上昇し、このあたりまで海が広がっていたのだ。

図書館で大曲輪貝塚について調べてみた。ハイガイ、アカニシを主とする貝類が発見されているものの、魚類について記述されている資料を見つけることができず、ウナギを食べていたかどうかはわからなかった。

しかし、県内の縄文遺跡である伊津川貝塚田原市)や堀内貝塚安城市)からは、ウナギの骨が見つかっている。ウナギは、縄文時代に全国各地で食べられていたのだろう。

堀内貝塚では、24種の貝類をはじめ、魚類はウナギのほかフナ、コイ、エイ、サメ、フグ、スズキ、クロダイなど多くの種類の骨が出土し、シカやイノシシなどのほ乳類も発見されている。

縄文人の食生活は、けっして単調なものではなかった。四季のなかで育まれた豊かな自然の恵みを享受し、食材の旬や特徴を理解しながら漁撈や調理に工夫を凝らした、高度な食文化がすでに確立されていたのではないか。

日本の漁業、魚食のルーツは縄文時代にあったと考える。そのことを確かめたい。この時代のウナギの採捕や食べ方についても、詳しく調べてみようと思う。

人骨や土器も見つかっている大曲輪貝塚。工事中だったので塀の外より見ることができた場所から撮影した

各務原市の「ライフカレッジ」で「水産業とさかなについて学ぶ」をテーマにお話をさせていただきました

岐阜県各務原市が主催する「ライフカレッジ」の講師として2022年3月18日、同市川島河田町の川島ライフデザインセンターで「水産業とさかなについて学ぶ」をテーマに約1時間半お話をさせていただきました。

ライフカレッジは、60歳以上の市民を対象に開かれている学習の場で、さまざまな分野の講師を招き、楽しみながら仲間とともに教養を高め、趣味を広げることを目的としています。

講座では、これまでに取材してきた経験をもとに写真を紹介し、①水産業のこと②東海地方の魚食について③記事から考える海・川・環境④なぜライターになったのか⑤おさかなクイズに挑戦ーの内容で話題を提供させていただきました。