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【DoChubu掲載】〈愛フェス特集〉多くの来場者が旬の味覚を味わう!大人気の「大船渡さんま祭り」

〈『DoChubu』2011年11月28日更新、2020年4月22日加筆修正〉

多くの来場者が旬の味覚を味わう!大人気の「大船渡さんま祭り」

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多くの来場者が大船渡から直送された旬のサンマを味わいました

さまざまな行事が行われた「愛フェス」では、東北グルメの試食や全国各地のB級グルメの祭典など、おいしく味わうことで東北の被災地を支援する催しも数多く開かれ、たくさんの人でにぎわいました。

そんななかで、人々が行列をつくり、人気を集めていたのが「大船渡さんま祭り」です。「愛フェス」2日目のお昼過ぎ。会場内を歩いていると、どこからか脂ののった魚を焼く香ばしいにおいが。引き寄せられるようにたどっていくと、網のうえでこんがりと焼き色のついた、たくさんのサンマが目に飛び込んできました。年配の大人から小さな子供を連れた家族連れ、若者のグループなど、多くの人たちが列をつくり、焼き上がるのを今かいまかと待ち構えています。

脂がたっぷりのったサンマを提供

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脂ののったサンマが次々と焼かれ、食欲をそそるにおいが会場を包んでいました

もうもうと煙がたつなかで、黙々とサンマを焼き続けていたのは岩手県大船渡市役所のみなさん。頭にはタオルを巻いて、煙で目がしみないよう顔には大きなゴーグルをしっかりと装着。慣れた手つきで次々とサンマを裏返し、焼き上げていきます。

愛フェス開催中の2日間で用意されたサンマは約2400尾。大船渡の漁港で水揚げされたサンマは脂がたっぷりとのっていて、いまがもっともおいしい旬の時期です。脂の充満したにおいがあたりに漂うなか、焼き上がったサンマが順番を待つ人々に次々と渡されていきます。

熱々のサンマを受け取る人と手渡す人。焼きあがるたびに両者の間で笑みが幾度となく交わされます。多くの人が喜んでほおばる姿に、大船渡からかけつけた市役所やボランティアのみなさんも笑顔で、その表情からは満ちたりた充足感のようなものが伝わってきました。

復興への思いを伝える

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祭りの会場入り口では大船渡を応援する復興サンマTシャツも販売されていました

この祭りを実施したのはNPO「くにおこし@愛知」で、大船渡の人々を愛知へ招いて、旬のサンマを味わいながら交流を深め、復興への思いを伝えようということで企画されました。「くにおこし@愛知」は、東日本大震災で被災した岩手県の大船渡、陸前高田市にボランティアを募って何度も赴き、復興に向けたさまざまな支援活動を行っています。

サンマは、これまでの支援に対する感謝から、大船渡より無償で提供されました。焼き上がったサンマは無料で配られ、来場者にはチャリティー募金(原則200円以上)で協力を呼び掛けました。祭りで集まった義援金は、すべて大船渡市役所に寄付されます。

特別な思いで焼く

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(左)大船渡から直送されたサンマ。(右)サンマを焼き続けていた大船渡市役所商工観光物産課の菊池洋伸さん

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たくさんのサンマが焼きあがり、次々と来場者に渡されていきます

祭りの会場で、汗をかきながらサンマを焼き続けていた大船渡市役所商工観光物産課の菊池洋伸さん。こうした焼きサンマの提供は、観光地をアピールするイベントで何度も行っているそうですが、「今回は特別な思い」だと話します。

大船渡のみなさんが焼く一尾一尾のサンマには、これまでの支援に対する感謝の気持ちと復興への願いが込められています。会場で出会った「椿の里 大船渡ガイドの会」のスタッフの女性は、「愛知の人にはとてもお世話になった。自分たちでは考えられないような支援をしてくれた」と、何度も感謝の言葉を口にしていました。

震災によってあまりにも大きな被害を受けた東北被災地の復興への道のりは遠く、現地ではいまも多くの支援を必要としています。そんな状況のなかにあっても、これまでのお礼をしたいからと大船渡からたくさんの人がかけつけてくれたのです。

この日、正午から始まった祭りは、午後4時頃に用意したサンマがなくなり終了しました。「愛フェス」開催中の2日間、訪れた多くの来場者が大船渡から届けられた旬のサンマを味わいました。青空の下で口に入れた焼きたてのサンマの味は、きっとそれぞれの胸のなかに特別な思い出として刻まれたはずです。

大きな盛り上がりをみせた今回の「愛フェス」によって、東北被災地の人々との絆がより深まり、復興に向けた支援の輪がさらに広がることを期待したいです。(新美貴資)

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