里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

2020-02-25から1日間の記事一覧

〈新美貴資の「めぐる。(92)」〉生き物の消えた都会の川を歩く  愛知県長久手市から名古屋市を流れる植田川

〈『日本養殖新聞』2020年2月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 橋の上を多くの車が走り抜ける。頭上の高架を、重い音を響かせながら鉄道が通り過ぎる。日の当たらない川面に視線を落とす人はいない。眼下では、音の聞こえない、ゆっくりとした水の流れが…

〈新美貴資の「めぐる。(91)」〉ウナギの魅力とは 日本人と関わりの深い生き物

〈『日本養殖新聞』2020年1月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 取材でウナギと関わるようになって10年近くになる。本紙で記事を書くようになってからであるが、年を経るごとに、この魚にますます惹かれている。 今回は、私が思うウナギの魅力について書…

〈新美貴資の「めぐる。(90)」〉現代のため池にもウナギはいる  愛知県日進市・岩藤新池の池殺生

〈『日本養殖新聞』2019年12月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 11月下旬、再び愛知県日進市の岩藤新池を訪れた。ため池のほとりで、会う約束を交わしていた加藤英俊さん(74歳)が笑顔で迎えてくれた。この地域の自然を守る「水源の里の会」の代表を務…

〈新美貴資の「めぐる。(89)」〉都会の川にウナギはいるのか  愛知県長久手市の鴨田川を辿る

〈『日本養殖新聞』2019年11月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 矢田・庄内川をきれいにする会による「水辺の再生と川の健康診断」の催しが10月27日、愛知県名古屋市で開かれた。矢田川と庄内川は、それぞれ尾張地方を流れる同じ水系の一級河川で、同市…

〈新美貴資の「めぐる。(88)」〉身近な魚だったウナギ 愛知県日進市の岩藤新池を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年10月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 愛知県日進市の岩崎城歴史記念館で特別展「にっしんの歴史と動物」がこのほど開かれた。牛や馬、鳥、魚など人と動物に関わる歴史について、市に保存されている文章や絵図、道具など約50点…

〈新美貴資の「めぐる。(87)」〉自然と人をつなぐウナギ 名古屋市名東区の鱣廻間を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年9月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 全国に鰻の付く地名はいくつもあるが、なかでも愛知県下に多いという(佐野賢治著『虚空蔵菩薩信仰の研究』より)。『愛知県地名収覧』には鱣池、鰻沢、鰻田、鱣谷など11の地名が載っている…

〈新美貴資の「めぐる。(86)」〉神の使いであるウナギを守る 岐阜県郡上市・粥川を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年8月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 岐阜県郡上市美並町の粥川に行ってきた。以前にも紹介したが、この地域ではウナギを神の使いとしてあがめ、昔から大切に守り続けている。毎年7月、星宮(ほしのみや)神社でウナギの供養祭…

〈新美貴資の「めぐる。(85)」〉東海で生まれたうま口文化 名古屋城下の蒲焼町を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年7月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 近年、急速な変貌を遂げている愛知県名古屋市。人口は2016年に230万人を突破した。名古屋駅の周辺「名駅エリア」の再開発はさらに進み、周辺の市町村の発展もめざましい。 変化の止まない名…

〈新美貴資の「めぐる。(84)」〉安心や感動がおいしさにつながる ミシュランガイド愛知・岐阜・三重二〇一九特別版

〈『日本養殖新聞』2019年6月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」が先月出版された。名古屋では地元メディアが大きく取り上げ、ガイドに掲載された市内のウナギ店を紹介するニュース番組もあった。 ミシュ…

〈新美貴資の「めぐる。(83)」〉新漁業法の問題点を探る 丸亀市で食と漁の地域未来フォーラム

〈『日本養殖新聞』2019年5月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 「『新漁業法』は沿岸漁業と漁協経営にどのような影響をおよぼすか」をテーマにした第2回食と漁の地域未来フォーラムが4月6日、香川県丸亀市で開かれた。 主催したのは、全国沿岸漁民連絡協…

〈新美貴資の「めぐる。(82)」〉理念や具体像が不明の水産改革 日本水産学会がミニシンポ

〈『日本養殖新聞』2019年4月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 日本水産学会春季大会が3月26日から29日まで、東京海洋大学で開かれた。同学会水産政策委員会主催のミニシンポジウム「『水産政策の改革について』の意義と問題点」が26日にあり、参加した…

〈新美貴資の「めぐる。(81)」〉長良川の文化をどう守るか 奪われた生命の循環

〈『日本養殖新聞』2019年3月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 1月、岐阜市の長良川を歩いた。鵜飼い大橋から下流を望むと、異様な光景が広がっていた。何台もの大きな重機が川の中に入り、川底を掘削したり、砂礫を運んだりしている。天然アユが付く金…

〈新美貴資の「めぐる。(80)」〉長良川に生きた 職漁師・大橋亮一さんを悼む

〈『日本養殖新聞』2019年2月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 職漁師・大橋亮一さん(岐阜県羽島市)が先月24日、病気のため亡くなった。83歳だった。豊かだった頃の長良川を知る、数少ない職漁師の一人だった。 昭和の戦後、高度経済成長期からの工場…

〈新美貴資の「めぐる。(79)」〉鰻業界の生産者を大事にしたい 「うな富士」相談役 水野尚樹さん

〈『日本養殖新聞』2019年1月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 今回訪れたのは、愛知県名古屋市の中心街から少し離れた昭和区白金地区にある繁盛店である。「うな富士」。県外にも多くのファンを持つ同店は、この夜もたくさんの人びとで席が埋まり、にぎ…

〈新美貴資の「めぐる。(78)」〉漁業法改正を許してよいのか 奪われる漁民主権、内水面漁業・養殖業にも影響

〈『日本養殖新聞』2018年12月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 この原稿を書いている時点で、漁業法を改正する国会での審議が大詰めを迎えている。約70年ぶりとなる抜本的な改正は、「漁業権の免許の優先順位の廃止」「海区漁業調整委員会委員の公選制…

〈新美貴資の「めぐる。(77)」〉あふれる探究心で食べ歩く フリーライター・山室賢司さん

〈『日本養殖新聞』2018年11月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 日本人にとって、ウナギは古来より特別な生き物であったのだと思う。各地には、ウナギにまつわる伝説や「鰻」のついた地名がいくつも残っている。美味なる味わいはもちろんだが、謎の多い…

〈新美貴資の「めぐる。(76)」〉地元に愛される店をつくる 「うなぎ三代目魚梅」店長 高岡玲士さん

〈『日本養殖新聞』2018年10月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 今年7月、三重県津市の一身田(いっしんでん)地区にウナギ料理の店が開業した。「うなぎ三代目魚梅(うおうめ)」。近鉄「津駅」から二つ目の「高田本山(たかだほんざん)駅」で降り、歩…

〈新美貴資の「めぐる。(75)」〉津のうなぎ食文化を支えた121年に幕 う料理「藤屋」四代目 田辺昭裕さん

〈『日本養殖新聞』2018年9月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 地元の人びとから愛されてきた老舗のウナギ店が暖簾を下ろした。創業から121年を数える、津市新東町にある「藤屋」。四代目の田辺昭裕さん(59)が母・克子さんと長年営み、ウナギ料理を提…

〈新美貴資の「めぐる。(74)」〉ウナギの聖地で供養を行う 岐阜県郡上市・粥川で地元の調理師会が主催

〈『日本養殖新聞』2018年8月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 ウナギを神の使いとして守っている岐阜県郡上市美並町の粥川(かゆかわ)で7月25日、ウナギ供養祭が行われた。主催したのは郡上調理師会で、美並観光協会、郡上漁協との共催。会場となった…

〈新美貴資の「めぐる。(73)」〉地方から懸念が高まる水産政策改革 だれのためのなんのための成長なのか

〈『日本養殖新聞』2018年7月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 水産庁による水産政策の改革についての説明会が6月から全国六つの会場で開かれ、神戸会場に参加した。6月1日、政府は「農林水産業・地域の活力創造プラン(改訂版)」を決定し、水産政策改…

〈新美貴資の「めぐる。(72)」〉川舟を制作し技術を記録 長良川の和船技術継承に向けて

〈『日本養殖新聞』2018年6月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 この春に岐阜県立森林文化アカデミーを卒業した学生が「長良川和船技術継承に向けた取り組み」をテーマにした課題研究で川舟を制作した。この和舟を見ようと、美濃市にある専門学校を訪ねた…

〈新美貴資の「めぐる。(71)」〉名古屋にもあった豊かな海 かつての漁師町・下之一色を歩く

〈『日本養殖新聞』2018年5月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 下之一色(しものいっしき、現名古屋市中川区下之一色町)は、東西の二面を庄内川と新川に挟まれた逆三角形の形をした州の上にある。かつては伊勢湾でも有数の規模を誇る漁業の町であった。…

〈新美貴資の「めぐる。(70)」〉豊かな川を取り戻すために 愛知県主催の第5回長良川連続講座

〈『日本養殖新聞』2018年4月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 第5回「清流長良川流域の生き物・生活・産業」連続講座が2月18日、名古屋市内で開かれた。愛知県長良川河口堰最適運用検討委員会の主催で、「長良川の魅力を語りつくす!」をテーマに掲げた…

〈新美貴資の「めぐる。(69)」〉住民参加の運動で川を守る 徳島市で吉野川シンポ実行委員会が催し

〈『日本養殖新聞』2018年3月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 2月に徳島市で開かれた「わたしは川の守人シンポジウム」に参加した。主催したのは吉野川シンポジウム実行委員会。吉野川の第十堰を壊して大規模な可動堰を作るという計画が持ち上がった時…

〈新美貴資の「めぐる。(68)」〉自然環境があって守られる伝統文化 魚から海の変化を知る

〈『日本養殖新聞』2018年2月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 三河湾の漁師たちの声を聞く機会があった。いま海に起こっている異変が、地元の漁業に深刻な影響を及ぼしていることを実感した。不漁に見舞われているのはシラスウナギだけではない。三河湾…

〈新美貴資の「めぐる。(67)」〉不振が続くシラスウナギ漁 食文化の継承へさらなる取り組みを期待

〈『日本養殖新聞』2018年1月25日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 今期のシラスウナギ漁は、記録的な不振が続いている。愛知県では昨年12月16日より採捕が始まっているが、この月の採捕量は8.6グラム(前年同月37.3キログラム。同県水産課より)と大きく落…

〈新美貴資の「めぐる。(66)」〉資源・地域・国境を壊す漁業権開放論 共生と共助の協同組合を守るべき

〈『日本養殖新聞』2017年12月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 「水産ジャーナリストの会」の12月研究会が東京都内で開かれ参加した。テーマは「漁業権開放論の危うさ~資源・地域・国境の崩壊」で、東京大学大学院農学生命科学研究科の鈴木宣弘教授が…

〈新美貴資の「めぐる。(65)」〉産卵で終盤迎えるアユシーズン 晩秋の岐阜市・長良川を歩く

〈『日本養殖新聞』2017年11月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 実りと恵みの季節も終盤に入った。日中は汗ばむ陽気も、朝晩は日増しに冷え込み、長良川では寒風が吹き始める。岐阜県岐阜市ではアユの産卵が盛んで、年魚による子孫を残すための最期の戦…

〈新美貴資の「めぐる。(64)」〉伝統漁法で落ちアユを捕る 岐阜県・長良川のやなと瀬張網漁

〈『日本養殖新聞』2017年10月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 落ちアユの季節がやってきた。秋になるとアユは産卵期に入る。オスは精巣、メスは卵巣が成熟し、遡上した川をくだる。岐阜県の美濃地方を縦断する長良川では、中流を中心にこのときのアユ…

〈新美貴資の「めぐる。(63)」〉石倉かごのモニタリング調査に同行!! 岐阜県山県市の美山漁協が実施

〈『日本養殖新聞』2017年9月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 石倉かごのモニタリング調査が行われると聞いて、9月の初めに岐阜県山県市の武儀川に向かった。同市の尾並坂峠付近に水源をもつ武儀川は、関、岐阜市を通り長良川と合流する。本流はアユの…