里山川海を歩くライターの活動記録

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〈新美貴資の「めぐる。(84)」〉安心や感動がおいしさにつながる ミシュランガイド愛知・岐阜・三重二〇一九特別版

〈『日本養殖新聞』2019年6月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉

ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」が先月出版された。名古屋では地元メディアが大きく取り上げ、ガイドに掲載された市内のウナギ店を紹介するニュース番組もあった。

ミシュランは、フランスに本拠を置く世界規模のタイヤメーカーで、ガイドは1900年に誕生した。

「ドライバーに快適な移動や旅を促す目的のために作られた」という手引書は、創刊から世界各地で調査を続け、美食を案内する代表的な存在となっている。

ガイドは、専門的な知識をもつ調査員が素材の質、料理技術の高さ、独創性、価値に見合った価格、料理全体の一貫性などの点を考慮して評価している。調査は匿名で行われ、掲載は無料。評価の基準はガイドが発行されているすべての国で同じだという。

東海三県のガイドでは、レストラン・飲食店536軒、宿泊施設92軒を紹介している。

星を獲得したウナギ店はなかったが、良質な食材で丁寧に仕上げ、5000円以下で楽しめる「ビブグルマン」に愛知4軒、三重3軒が選ばれた。また適正な食材で作られ、ミシュランの基準を満たした「ミシュランプレート」に愛知7軒、岐阜3軒、三重4軒が掲載されている。

ガイドで紹介されているウナギ店は、名店と呼ばれ地元で人気のところが多い。筆者が取材で訪れた店もいくつかあり、その料理はどれも満足できるものであった。

味の好みは人それぞれ。容易に人の評価が下せないように、人が作る料理を評価することも難しい。

どんな料理も、食べるときの状況によって味わいは変わる。気分が落ち込んでいても、郷土の料理を口にしたり、居心地のよい店でくつろいだり、そんな食事であれば元気が湧いてくるのではないか。料理には、人を笑顔にする力がある。

ミシュランには載っていなくても、ここでの食事は特別で、幸せな気分にさせてくれる。そんな店が、みなさんにもきっとあるはずだ。他人には推し量ることのできない、その人にとっての「安心」や「感動」も、おいしさにつながる大切な要素なのだと思う。

ミシュランプレートで掲載された「うな豊」(愛知県名古屋市)の店主・服部公司さんは「変わらないおいしさは、誰もが求めて安心するもの。常にお客様の笑顔を拝見することができるよう、安定した味を提供し続けたい」と抱負を語る。

ウナギ店は、常々その存在自体がものすごいと思っていた。一つの魚種を伝統的な方法で調理し、提供する商いがずっと成り立ってきたのだから。

ウナギ店の看板を背負い、毎日ウナギ料理を出し続けることがどれくらい大変なことか。だから職人が好きで、その技に惹かれ、一杯の丼に魅了されるのである。

あなたにとっての特別なウナギ店がきっとあると思う。そのような店を大切にしてほしい。私も愛してやまないオンリーワンな店に、またふらっと行きたくなった。


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