〈『DoChubu』2011年9月7日更新、2020年4月22日加筆修正〉
いまも水揚げが続いているサザエ。豊浜漁港(愛知県南知多町)の魚市場にならんでいるものの殻を見ると、そのほとんどには角がはえていません。
海沿い観光地にある飲食店や宿泊先の料理で、立派な角のはえたサザエを見たことがありませんか?角がはえているものと、はえていないもの。なぜそんな違いが生まれるのでしょうか。
一般に波の荒いところにいるサザエには角がはえて、静かで穏やかなところにいるものには、はえないと言われています。熊野灘に面した潮の流れの激しい三重県の外海では、伊勢湾とは違って、角のはえたサザエが多く獲れるそうです。では、生息する海の環境によって角のあるなしが分かれるかといえば、一概にそうとも言えず、三重県の外海でも角のないものが獲れるというから不思議です。
角がはえる理由としては、強い波によって流されないよう、岩場の隙間などに体を固定するスパイクのような役割を果たしているのでは、という説があります。荒い波にもまれれば、当然海中を転がって周囲の岩にもぶつかるはずで、殻が受けるショックを和らげるためでは、といった考えも浮かんできます。
きっとなにか意味があってはえているはずのサザエの角。深まる謎に興味はさらにふくらむのでした。(新美貴資)