〈『日本養殖新聞』2022年9月15日号寄稿〉
津うなぎ専門店組合(上原正広組合長)は8月29日、同市内でウナギ供養を行い、その後に放流行事を実施した。
行事は、組合に加盟する「はし家」「新玉亭」「大観亭支店栄町本店」「両口屋」の四店舗によって行われ、三重県の地域活性化に取り組み、津のウナギ食文化の発展に向けて同組合の活動を支援している「FAMIE」の関係者も参加した。
供養は、午前中に寿町の真宗高田派・本徳寺であり、仏前にウナギが供えられ住職が読経し、参列した組合員らが手を合わせた。
その後、同市内を流れる岩田川の河口付近で、用意した養殖ウナギの成魚を放流した。
同組合では、60年以上前より、毎年この時期にウナギへの感謝の思いをこめて供養と放流を行っている。
ウナギを扱う専門店が多い津では、独自のウナギ食文化が発達している。安くておいしいのが当たり前で、中高年から若い女性や学生まで、幅広い世代の市民がウナギ料理に親しむ食習慣が形成されている。
ウナギの消費が旺盛な津。なぜこれほどウナギが好まれるのか。かつてこの地で養鰻が盛んだったということが一般的な定説として定着しているが、津藩主であった藤堂高虎が夏場にウナギを食べることを奨励したという逸話も残っており、この地とウナギの歴史の深さを想像させる。
2006年には、市民の有志らによる「津ぅのうなぎプロジェクト」が生まれ、市内のウナギ店の協力を得て店舗を紹介する無料ガイドを発行するなど、ユニークな活動が展開され、津のウナギが注目を集めた。
同組合は、過去にFAMIEの協力を得て、親子を招いたウナギの放流や勉強会を開催し、市民との交流を図ってきた。コロナ禍が早く収束し、市民とウナギを結ぶような催しが再開され、津のソウルフードであるウナギ食文化のさらなる発展が期待される。