里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】伊勢・三河湾でとれた珍しい魚を調理して味わう!第48回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2012年2月6日更新、2020年4月22日加筆修正〉

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今回は伊勢・三河湾でとれた珍しい魚介類を調理して味わいました

伊勢・三河湾とその流域でとれる旬の魚介類を調理して味わう、なごや環境大学の人気の講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度(2011年)第5回目が2011年11月10日(木)、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。

今回のテーマは、「伊勢・三河湾でとれた珍しい魚と不耕起米」です。動物写真家の高山博好さんを講師に招き、名古屋のスーパーや魚屋では普段なかなか目にすることのない魚を調理。高山さんが耕さない田んぼで稲を育てる「不耕起農法」によって収穫した新米も炊き、さまざまな魚介の料理とともに参加者全員で味わいました。

たくさんの珍しい魚にびっくり

この日に用意されたのは、伊勢・三河湾の漁でとれるいろんな種類の魚です。ドチザメ、サバフグ、アイブリ、コショウダイ、ヘダイ、トラギス、ヒメジ、イイダコ……。街のスーパーや魚屋にならぶことのほとんどない魚で、初めて見るという参加者の方が大半を占めていたのでは。それぞれに特徴のある色や形をした魚が調理台をうめ、その一つひとつを興味深くのぞきこむ参加者のみなさん。たくさんの魚を前にして、会場はさらににぎやかさを増します。

講座の冒頭、水族館勤務の経験もある高山さんが、魚を一尾ずつ手にとり、その生態や体の特徴などをわかりやすく説明しました。参加者は珍しい魚たちをじっと見つめ、解説に熱心に耳を傾けます。50センチはありそうな大きなドチザメを高山さんが手にとると、ひときわ大きな驚きの声があがりました。

今回は、このドチザメの身を使って唐揚げをつくります。このほか、ヒメジは身をすりつぶしてつみれ汁、サバフグなど他の魚は煮魚に。一体どんな味わいになるのか。記者も想像がつかないなか、楽しい調理の時間が始まりました。

サバフグの皮むきを体験

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下処理をした魚は味がよくしみこむよう身に切れ目をいれて煮込みます

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ドチザメの身は唐揚げ粉、小麦粉をまぶして油であげます

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高山さんの田んぼで収穫された不耕起米もおいしく炊きあがりました

調理を始めるにあたり、講座を運営する山崎川グリーンマップのスタッフのみなさんが、おいしくつくるポイントを説明しました。

煮魚にするサバフグは、頭をおとして皮をはいだら、味がよくしみるよう身に切れ目をいれます。他の魚もウロコを落とし、内臓や血合いをしっかり取り除きます。みりんとしょうゆを同量、お好みで適量加え、魚を重ねないよう底の広い鍋でしっかりと煮込んでいきます。このときに、絶えず煮汁を魚にかけるとおいしく仕上がるそうです。

つみれ汁には、淡白な白身の魚で練り製品の材料にも使われる、赤い体色が鮮やかなヒメジを使います。下処理をして身を開いたらフードプロセッサーにかけてつみれにしますが、その際に身をつぶしすぎないのがポイント。魚肉の食感を残すことでよりおいしく味わえるそうです。

記者もサバフグの皮むきを体験してみました。光沢を放つ薄いゴムのような皮は、思っていた以上にしっかりと身に付着し、なかなかうまくはがれず要領をえません。それでも慣れてくると力の入れ加減もわかり、ベロンと靴下のように気持ちよくはがれると、プルプルとした弾力のある白い身が現れます。

和気藹々とした調理の時間がお昼に近づくと、魚を煮るしょうゆの甘辛いにおいがただよい、カラっときつね色にあがったドチザメの身が次々と皿のうえに盛られ、空腹の胃袋を刺激します。

クセもなく食べやすいドチザメ

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この日調理したメニュー。サルエビも入ったヒメジのつみれ汁、ドチザメの唐揚げ、サバフグ、ヘダイ、コショウダイなどの煮魚。ご飯は高山博好さんの田んぼで収穫された不耕起米です

料理ができあがったら、楽しみにしていた食事の時間です。まずは、つみれ汁を一口。みそ仕立ての汁は、サルエビ(アカシャ)のダシがよくきいています。やわらかいつみれは、身の歯ごたえもちゃんと残っていて食べごたえ十分。噛めばかむほどに魚肉のうまみを堪能することができます。シメジ、ヒラタケ、タモギタケなどのキノコもたっぷり入り、とてもやさしい味に仕上がっていました。

煮魚にしたサバフグの身は、箸を入れるとすぐに崩れてとてもホクホク。ひょっとしたら味にクセがあるのではと思っていたドチザメの唐揚げですが、身はとてもさっぱりとした味で、歯ごたえは魚というよりは鶏肉のよう。硬さやスジがないためとても食べやすく、食べる前に抱いていた印象は大きく変わりました。高山さんの田んぼで収穫された不耕起米も甘みがあり、うまい魚のおかずでご飯がさらにすすみます。

川や海を汚さない不耕起農法

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川や海を汚さない「不耕起農法」について説明する講師の高山博好さん

食事の後は、講師の高山さんが、現在行っている不耕起農法の特徴や主宰している田んぼの学校「エコたん」について説明しました。高山さんは愛知県刈谷市の出身。県内にある碧南海浜水族館碧南市)の飼育員を経て、フリーランスのカメラマンとして活躍中です。滋賀大学名古屋大学大学院で水田の生き物なども研究。2006年より県内の大府市で田んぼの学校「エコたん」を立ち上げ、不耕起農法による「生き物と共存できる農」を目指し取り組んでいます。

日本で行われてまだ約20年という不耕起農法。農薬を使わない生物の多様性に富んだ水田で行う稲作で、耕すことも、田植えの前に水を入れて土をならす代(しろ)かきもしない、とても新しい米づくりです。

耕さない硬い土によって根や茎は太く成長し、倒れない冷害にも強い稲が育ちます。田んぼには冬の時期も水をひきいれるため、たくさんの生き物のつながりが保たれ、雑草の発生も抑えることができます。

一反の田んぼには、約1500万匹のイトミミズが繁殖するそうですが、そのイトミミズのフンや死骸がつもってできるトロトロ層は天然の良い肥料になるそうです。前の年の古い株や稲ワラは分解され、サヤミドロやアミミドロといった藻が光合成によって二酸化炭素を吸収。田んぼの生き物たちが必要とする酸素を供給します。この農法は無農薬で、濁水を排出する代かきもしないことから、川や海にもやさしい米づくりであることを特徴の一つにあげました。

高山さんは、食農教育の実践や地域再生・異年齢交流、水田の生物が生息しやすい環境の提供、無肥料・無農薬栽培、不耕起による川・海を汚さない農法、安全・安心な米づくりなど、不耕起農法を実践するエコたんのもつさまざまな可能性を参加者にわかりやすく説明しました。

今回の講座について、主催する山崎川グリーンマップの代表・大矢美紀さんは「海が近くにあっても関心をもたない人が多い」と語り、人と海の関係が希薄になっている点を問題にあげました。さらに大矢さんは、食べることによって、漁業や流通の抱える問題がみえてくるとも話します。

今回扱った魚のように、せっかく漁獲されても流通からはずされてしまう魚が多くあります。水産資源を有効に利用していくためには、こうした水産物も無駄にせずきちんと消費していくことが必要で、そのためには流通や小売り業者の積極的な取り組みはもちろん、魚を購入するわたしたち消費者の理解と協力も欠かせません。

今回の講座で実際に調理し、味わうことでわかったように、普段スーパーで見慣れない魚であっても、知識があればそれぞれの魚にあった調理法でおいしく味わうことができるのです。こうした情報を消費者に広く伝えていくことが、豊かな魚食の復活、そして浜の生産者を応援することにもつながります。調理し味わうことを通して地元の海への関心を深める。この講座が継続して行う取り組みは、ますます重要さを増していると感じます。

(新美貴資)

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