里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】伊勢・三河湾の旬なエビ、シャコを調理して味わう。第45回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2011年7月16日更新、2020年4月21日加筆修正〉

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今回の講座でつくったゆでたシャコ(左)とサルエビの唐揚げ

伊勢・三河湾流域の魚介類を調理して味わう、なごや環境大学の共育講座「味わって知る わたしたちの海」の今年度(2011年度)第2回目が2011年6月16日(木)、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。今回のテーマは、「伊勢湾・三河湾でとれるエビ・シャコ」。一般から約30人が参加して旬のシャコを調理したほか、サルエビを使ってハンペンなどをつくり、全員で味わいました。

講師は、水産ジャーナリストの肩書で記者が招かれ、愛知の漁業、県内の豊浜魚市場のセリの様子、東日本大地震で被災した東北地方の漁港などについて話しました。

南知多の新鮮なシャコを使う

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今朝仕入れたシャコはとても活きがよく元気に動きまわっていました

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たっぷりのサルエビは炊き込みご飯や唐揚げに使われました

調理場に運びこまれたシャコやサルエビは、まだ活きている状態。愛知県南知多町で今朝仕入れた、とても新鮮なものが使われました。ワサワサとたくさんの脚を動かす大きなシャコには、参加者のみなさんも驚きの声をあげていました。

手触りが違う活きたエビ

今回つくったのは、サルエビを使った炊き込みご飯、しんじょう椀、唐揚げとゆでたシャコです。サルエビの炊き込みご飯のつくり方は、とても豪快。水に浸した炊飯器の米のうえに、塩を振りかけ手でもんだサルエビをどさっとかぶせます。大きな炊飯器のなかを埋め尽くすたくさんの赤いエビ。料理のできあがりに期待が高まります。

炊きあがったらしばらく蒸らし、取り出して殻をむいたら再びご飯に戻して混ぜ合わせます。その他の料理もみなさんグループに分かれて、助け合いながら楽しく作業を進めていきます。料理をつくる時間が始まると、にぎやかな会話と笑い声が、あちこちから聞こえてきます。

尾張地方では、アカシャとも呼ばれているサルエビ。「スーパーでも売っているしおいしいよ」と、近くの参加者が教えてくれました。名古屋ではとても馴染みのあるエビで、塩ゆでやかき揚げにして食べるという方も。エビのしんじょうづくりで、殻をむいていた別の参加者は、「活きているからむきにくい。手触りが違う」と、いつもとは違う感触に驚きの声をあげていました。

ゆでたシャコの殻むきは、記者も以前に何回か体験しています。調理ハサミを使って上手にむくコツは、体の両側を大きくカットすること。記者もゆであがったシャコを一匹手にとって、久しぶりの殻むきに挑戦してみました。

表面をおおう殻は、思っていた以上の硬さ。とがった腕や脚は、不用意に触れると痛いぐらいです。体の両側に切り込みを入れて、身をとりだそうとしますが、なかなか殻からうまくはずれません。何度もハサミを入れると、ようやくホクホクとした身が殻の中から現われますが、身はくずれてボロボロになってしまいました。不器用な記者にとっては、何度やっても難しい殻むきの作業でした。

たくさんのエビで彩りも華やか

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今日の講座で調理したサルエビの炊き込みご飯、しんじょう椀、唐揚げとゆでたシャコ

料理が完成すると、楽しみにしていた食事の時間です。調理と同時に味わうのも、この講座ではとても大切なこと。旬の味覚を通して、伊勢・三河湾で獲れる魚介類のこと、生産者の様々な思い、環境の変化など、地元の海について様々なことを学びます。

今回はたくさんのエビが使われ、料理の彩りもとても華やかです。まずはサルエビの唐揚げを一口。きつね色に揚がったサルエビは、とても香ばしくてサクサクとした歯ごたえ。続いて、ゆでたシャコをほうばると、その身からは橙色のプチプチとした小さな卵があふれました。

サルエビがたっぷりと入った炊き込みご飯も、エビのうま味がご飯にしみ込んで深い味わいです。やわらかくてフワフワなしんじょうに入っているサルエビは、大きめにカットされていて、口に入れるとプリプリとした食感を楽しむことができました。

がんばっている生産者を応援して

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(左)多くの魚介類がならぶ豊浜魚市場のセリ(右)津波によって壊滅的な被害を受けた宮城県の女川漁港

食事が終わった後、記者が愛知の漁業、県内の豊浜魚市場、東日本大地震で被災した東北地方の漁港について、写真を紹介しながら説明、報告をしました。

伊勢・三河湾の漁場を中心に今も盛んな愛知県の漁業。海面漁業・養殖業生産量(2009年)は8万9197トンで全国19位。アサリ、養殖ウナギの生産量は全国1位で、アナゴや養殖アユ、シラス、クルマエビなども生産量は全国有数です。そんな愛知の漁業も、魚の価格の低迷、燃料や資材代の上昇などから経営は厳しい状況が続いており、後継者が減って漁業者の減少と高齢化が深刻な問題となっています。

そんな厳しい状況を打開しようと、県内では様々な取り組みが生まれています。南知多町の豊浜地区では、安価な養殖用のエサに使われているカタクチイワシの有効利用に向けて、地元の加工業者が塩漬けした瓶詰製品を新たに開発。蒲郡市では、県内で唯一操業する沖合底びき漁船によって水揚げされる深海の魚、メヒカリを市の魚として宣伝して、普及にも力を入れています。県内のいくつかの漁港では、消費者が購入できる産地直売の施設もあり、新鮮な魚介類を買うことができるイベントも開かれています。たくさんの資源が眠っている産地へ足を運べば、きっと新たな発見や感動に出会えると思います。

続いて、県内有数の水揚げを誇る豊浜漁港の魚市場についても、水揚げされた魚介類やセリの様子などを写真で紹介しました。

最後に東日本を襲った大地震について、4月に東北地方の被災した漁港を歩いて見聞きしてきた内容について報告しました。訪れた漁港は、宮城県石巻、女川、気仙沼岩手県宮古、山田の5ヶ所です。どの漁港も津波によって甚大な被害を受け、後背地の加工場や街もほとんどが崩壊していました。

現地で出会った人々から話をうかがい、多くの人々がかけがえのない大切な家族や友人、職場の仲間を奪われて悲しみにくれ、家や仕事も失い将来へ大きな不安を抱えていることを強く感じました。日本人一人ひとりが、この非常な事態にしっかりと向き合って、なにができるのかを考えること。被災した人々が再び平穏な生活に戻るまで、応援し続けるという気持ちを忘れず、またその気持ちを被災地に送り続けることが大切だと考えます。

参加者のみなさんには、以上のようなことを話しました。

地元で獲れた旬の魚介類を扱うこの講座では、毎回たくさんの学びがあり、新鮮な発見と驚きがあります。参加者が一緒になって調理して味わうことも、大きな楽しみの一つ。いろんな会話を交わすことで、新たな交流も生まれます。今回もさまざまな体験をすることができ、参加したみなさんも伊勢・三河湾への関心がさらに深まったようでした。

45回を数えるこの講座。途中からの参加ですが、振り返るとどの回もそれぞれに興味深くて面白い、充実した内容でした。次回はどんな魚介類を調理して味わうのか。期待がますます高まります。(新美貴資)

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