里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】蒲郡で三河湾の環境について学ぶ!第54回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2012年11月7日更新、2020年4月23日加筆修正〉

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愛知県水産試験場本場で職員から県内の漁業や三河湾の環境について説明を受ける参加者

「愛知県水産試験場訪問と形原の魚料理満喫」をテーマに、なごや環境大学の共育講座「味わって知る わたしたちの海」(山崎川グリーンマップ、伊勢・三河湾流域ネットワーク主催)の今年度第3回が2012年7月12日(木)に開かれました。

今回は、伊勢・三河湾で獲れる旬の魚介類を調理して味わう、いつもの会場から場所を移して現地見学が行われました。講座の受講者、スタッフを含む参加者一行が訪れたのは、三河湾に面した蒲郡市。市内三谷町の海沿いにある県水産試験場本場を見学し、職員から説明を受けて三河湾の環境について学習しました。昼食は市内の料理店でとり、地元で水揚げされる特産の魚であるニギス、アオメエソ(メヒカリ)などを味わいました。

また帰路の途中、高速道路からも一般道からも入場できるレジャーエリア「刈谷ハイウェイ」に立ち寄り、三河湾から直送された新鮮な魚介類がならぶ売り場を見てまわり、買い物を楽しみました。

内湾の環境について学習

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現地見学の舞台となった蒲郡市三谷町にある県水産試験場本場

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企画情報部の玉置真一さん(左)、漁場環境部長の岩田靖宏さん

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職員の説明に熱心に耳を傾ける参加者

参加者が最初に訪れた県水産試験場本場では、企画情報部主任研究員の玉置真一さんが、試験場の業務や愛知の水産業について、漁場環境部長の岩田靖宏さんが、愛知の漁場環境などについて説明し、その後に試験場内の見学が行われました。

玉置さんは、試験場が掲げている
①豊かな漁業資源を育む内湾漁場環境の回復
②水産資源の持続的利用による水産物の安定供給
③生産技術の革新による競争力ある経営体の育成
④ブランド力強化による水産業の展開
―の4つの重点目標について、その中身を説明。

内湾の漁業に大きな被害をもたらす赤潮・貧酸素水塊のモニタリングや情報発信、イカナゴやシャコなどの重要な水産資源の資源管理技術の開発、資源の減少が大きな問題となっているウナギの人工種苗生産技術の開発など、現在試験場が取り組んでいる研究内容を紹介しました。

続いて、岩田さんが愛知県内で行われている漁業、全国でトップの漁獲量をほこるアサリの生態、内湾でおこる赤潮のメカニズムなどについて解説しました。

2009年(平成21年)の愛知県の魚種別漁獲量を上位からみると、カタクチイワシが2万1310トン(全国4位)、アサリ類が1万7273トン(同1位)、その他海藻類が1万70トン(データなし)、シラスが5496トン(同3位)、イカナゴが1267トン(同4位)などとなっています。全国でも有数の漁獲量をあげている魚介類がいくつもあり、愛知は漁業が盛んであることを岩田さんは指摘します。

さらに県内漁業の重要な漁獲対象であるアサリについて、産卵してから稚貝、成貝になるまでの一生について解説しました。アサリは1.5センチ以上になると冬以外は一年中産卵します。卵からかえると、0.1~0.2ミリの浮遊幼生(プランクトン)となって海中を漂い、0.2ミリ以上の稚貝になると底に定着し、1年半で約3センチの大きさにまで成長するそうです。

三河湾の奥にある六条潟は、毎年多くの稚貝が発生する場所で、アサリ漁を行う多くの漁業者の営みを支え、その資源を供給する重要な干潟であることも紹介しました。

また、プランクトンが増えすぎて海の色が変わってしまう赤潮という現象についても説明。赤潮をうむプランクトンの正体は、珪藻(けいそう)の仲間で、スケレトネマ、ユーカンピア、コスキノディスカスといった難しい名前をしたいろいろな種類があるそうです。

工場や家庭など陸域からの汚水の流入によって海が汚れると、この珪藻類が異常繁殖して赤潮が発生します。岩田さんは赤潮になると、夏では死んだプランクトンが海底にたい積して腐り、海の酸素がなくなって、生き物がすめなくなってしまうと言います。冬はプランクトンが海の栄養をたくさん使ってしまうので、ノリがつくれなくなってしまうと話し、海を守るためにわたしたちにできることとして、

汚い水を流さない。
食べ物を残さない。
水を大切に使う。
以上の3点を参加者に呼びかけました。

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試験場のなかを見てまわる参加者。映像機器やパネル、模型が設置されてあり、県内の漁業について学ぶことができます

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干潟の研究を行うエコシステム実験棟。自然の干潟を再現した巨大な平面水槽について説明を受ける参加者

蒲郡特産の魚を味わう

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和食処「山女魚」でいただいた料理。地元の蒲郡で水揚げされたニギスのフライ、アオメエソの南蛮漬けなどをいただきました

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身のやわらかいアオメエソの南蛮漬け

試験場を後にすると時刻はお昼前。参加者を乗せたバスは、漁港のある市内の形原町へと走ります。向かった先は、和食処「山女魚(やまめ)」。ここで、地元の漁港で揚がった、蒲郡特産の魚であるニギスとアオメエソをいただきました。

たくさんの料理が運ばれテーブルを埋めると、昼食の時間が始まりました。手のひらぐらいもある大きなニギスのフライは、はしでは重くて口まで運べないほど。1枚だけでもかなりのボリュームなのに、3枚もお皿にあってびっくり。クセのない白身は、揚げ物にもぴったりあいます。揚げたてはホクホクとしていてやわらかく、サクサクとした衣との相性も抜群です。弾む会話にのって食べ続けていると、いつの間にか3枚すべてが胃袋におさまっていました。

もう一品、小鉢に盛り付けられていた魚はアオメエソ。地元ではメヒカリと呼ばれている、とても人気のある魚です。クセのないさっぱりとした味が特長で、空揚げにしたものは何度も食べたことがあるのですが、南蛮漬けは初めて。予想していた通り、ニギスと同じでどんな料理、味付けにもあう魚です。はしでくずれるぐらいのやわらかな身には、程よく酢の酸味がきいて、後をひく味わいでした。

今回の講座では、三河湾の環境について学び、地元で揚がった魚を味わいました。現地でのこうした体験は、わたしたち一人ひとりに確実に学びをもたらしてくれます。このような学びの積み重ねが、海をより深く知ることにつながるはず。また地元の海で獲れる、さまざまな季節の魚介類を調理して味わう場面においても、現地での学びはきっと活かされ、その味わいをより豊かにするのではないでしょうか。(新美貴資)

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