〈2009年8月4日執筆、2020年5月20日加筆修正〉
なごや環境大学共育講座「味わって知る わたしたちの海」の第28回が2009年7月9日、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。今回のテーマは「鮮魚における鮮度について考える」で、講師は市中央卸売市場の卸売会社・中部水産の神谷友成さん。講座には主婦ら約30人が参加し、鮮度の異なるタコやカンパチを調理して食べくらべ。その食感や味の違いに会場からは驚きの声があがっていました。
この日に用意された魚介類は、タコとカンパチ。マダコは三重、石川県産の活きたものとモーリタニア産(南アフリカ)の冷凍品を解凍したものです。カンパチは養殖もので、宮城県産の活魚と三重県産の前日にしめたものの2種類があり、鮮度には24時間の差があります。メニューは、カンパチの刺身、煮ダコの刺身、煮ダコときゅうりのマヨネーズあえなどで、参加者全員でつくりました。
活きたタコは、ゆでる前にぬめりをとります。調理ではすこし汗をかこうということで、塩は使いませんでした。みなさんと一緒にタコのぬめりとりに挑戦しました。体重を思いきりかけて、ひたすら網袋に入れたタコをもみ続けるのですが、なかなかぬめりがとれずかなりの汗をかきました。タコのゆで方やカンパチを切るときの包丁の使い方など、神谷さんがかける言葉に参加者は熱心に耳を傾けていました。
調理の後は、参加者全員で鮮度の違うマダコ、カンパチの刺身を食べ比べ。マダコは、活きたもののほうはかなりの弾力で、冷凍ものはとてもやわらかでした。カンパチは、魚体のやわらかな活魚のほうが食感はコリコリ。前日にしめたほうは死後硬直していましたが、身はやわらかくうま味があって、参加者はその差に驚いた様子。どちらがおいしかったかを神谷さんが全員に尋ねると、好みは半々ぐらいで分かれました。
「意見が分かれてもいいんです。大事なのは鮮度による味の違いを確かめること」と話す神谷さん。生活者に魚のことを伝え、おいしく食べてもらうための伝道師である、おさかなマイスターの資格をもち、たくさんの魚を扱う仕事に携わりながら、多くのイベントにも講師として呼ばれ、魚食普及や食育活動に力を入れています。
鮮度の違うタコ、カンパチを調理して味わった今回の講座。このような機会はめったになく、参加者の魚の鮮度に対する関心はさらに深まったようでした。(新美貴資)