里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】新名物「生炊きしらす」が人気!師崎で干物・チリメンジャコ・つくだ煮を製造直販する「マル伊商店」

〈『DoChubu』2010年7月14日更新、2020年4月20日加筆修正〉

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師崎漁港からすぐ近くの「マル伊商店」

知多半島の先端にある南知多町の師崎は、愛知県内でも漁業が盛んなところ。訪れる釣り客や観光客も多く、地元でとれた魚を味わうことができる飲食店や船宿がいくつも並んでいます。この師崎で、古くから干物やチリメンジャコ、つくだ煮の製造直売を営んでいるのが「マル伊商店」です。師崎漁港のすぐ近くにあって、伊勢・三河湾でとれた新鮮な魚介類を、素材の良さはそのままに独自の製法で加工。店では工場で製造した水産加工品がたくさん販売され、多くの客でにぎわっています。

こだわりの商品を直接お客に届けたい

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笑顔で迎えてくれたマル伊商店代表の坂下さん(右)とスタッフの川端さん

1950年頃にこの地で創業した「マル伊商店」。代表の坂下和久さんは3代目で、30年近くにわたって師崎であがる魚を中心に干物やチリメンジャコ、つくだ煮などの水産加工品をつくり続けてきました。元々は原料を仕入れて煮干などの加工品を製造していた同店。90年に工場の近くに直売店を開いてからは、製造から販売まで行っています。

チリメンジャコや干物、つくだ煮など、たくさんの加工品が並ぶ直売店で、「自分たちが作ったおいしい商品を、自信をもってお客に勧めています」とにこやかに話す坂下さん。自らが選んで仕入れた魚を使い、こだわりの製法で仕上げた商品をお客に直接届けたい。師崎であがる魚のことや商品のおいしい食べ方をもっと知ってほしい。そんな想いが、笑顔で明るく接客する女性スタッフの方からも伝わってきます。

「生炊きしらす」が農水大臣賞受賞

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コクのある甘い味付けがご飯にぴったりな「生炊きしらす

同店一押しの商品が、シラスをつくだ煮にした「生炊きしらす」です。昨年初めて出品した第20回全国水産加工品総合品質審査会で、農林水産大臣賞を受賞。シラスのうま味に同店独自のタレを加えて煮炊きし、よりおいしく仕上げたご飯にぴったりな一品です。

一般的なつくだ煮は、蒸して乾燥させたものを水でもどし、タレで煮炊きしてつくるのですが、シラスを蒸すと本来のうま味が抜けてしまうことから、同店では生のものをそのまま加工してつくることができないか長年にわたって試行錯誤を重ね、10年前に「生炊きしらす」を商品化しました。

タレの調合や煮炊きの方法など、納得いく商品ができるまでには数多くの失敗があり、
工場の煮炊き用の釜にも改良の手を何度も加えたり、試行錯誤の連続だったそうです。
カタクチイワシやマイワシの仔魚であるシラスは、鮮度落ちのとても早い魚。こだわりの「生炊きしらす」をつくるためには、近くの漁港の魚市場で仕入れたらすぐに工場に運び入れて、その日のうちに加工しなければならず、作業は時間との勝負なのだそうです。

地元ならではの水産加工品がたくさん

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店内には地元でとれた魚介類を中心にたくさんの水産加工品が販売されています

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(左)第20回全国水産加工品総合品質審査会で農林水産大臣賞を受賞した 同店一押しの「生炊きしらす」(右)こちらも定番の人気商品「あなごひもの」

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(左)イワシの産地としても有名な師崎。名物の「いわし丸干し」(右)師崎産の「生わかめ」

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(左)自家製の新物チリメンジャコ。計り売りも人気です(右)同店手づくりの「ままかり酢漬け」

店内には、地元ならではのおいしそうな水産加工品がたくさん並んでいます。人気の売れ筋商品は、「生炊きしらす」や「あなごひもの」です。その他にも、シロサバフグや天然鯛の一夜干し、乾燥わかめ、このわた、海苔など、師崎産の商品を数多く取り揃えています(商品の価格は時期によって変わることがあります)。商品は同店ホームページからも購入することができます。

おいしい商品づくりが第一

坂下さんは現在、師崎商工会の会長も務めており、地域の活性化にも力を入れています。店内には、自らの工場で製造した商品のほかにも、地元で生産された海苔やしょう油、味噌などの商品が並んでいます。また、2005年にオープンして今では人気も定着した「師崎漁港朝市」にも出店。朝市の立ち上げから関わり、出店者グループの中心的な役割を果たしています。

4年前の2006年からは毎年、魚食普及活動の一環として瀬戸市内の小学校の子供たちを受け入れて「干物づくり体験」も行っています。いままで魚に触れたこともなかった子供たちが、自分で干物をつくって食べる楽しい体験。魚が嫌いだったのに食べられるようになった子供もいるそうで、こうした取り組みに坂下さんはじめ、スタッフのみなさんはとても意欲的です。

店や工場は正月の3日間をのぞいて年中無休。「工場はとれた魚の都合で動いているんです」と笑顔で話す坂下さん。おいしい商品づくりを第一に考え、師崎であがった新鮮な魚介類を使ってこだわりの干物やチリメンジャコ、つくだ煮を日々つくり続けています。(新美貴資)

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