里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】〈地ビール特集〉瀬戸の窯元「麦山窯」がつくるこだわりの「一口ビアカップ」

〈『DoChubu』2010年8月26日更新、2020年4月20日加筆修正〉

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シンプルなデザインと使いやすさで人気の「麦山窯(ばくざんがま)」が製造する 一口ビアカップ(前列)とチューハイカップ(後列)

地ビール特集」の取材で訪れたのは、愛知県瀬戸市で和食器を製造する窯元「麦山窯」の磯村製陶さん。「せともの」の生産地として全国的にも有名な同市で大正11年に創業。丈夫で長持ち、使いやすい機能性を重視した業務用の和食器を中心に多くの陶器を製造しており、その一つひとつを職人が心をこめて丁寧に仕上げています。

製造している和食器のアイテムは4万点以上もあり、お皿、鍋、小鉢、湯のみ、徳利などあらゆるものがつくられています。そのなかで、人気を集めているものの一つが「一口ビアカップ」です。

「ビールがおいしく飲めるシンプルなカップをつくりたい」と、6年前に女性向けにつくられたこのカップ。つるつるとした表面がとてもやわらかで口当たりもよく、上部には「ろくべ」と呼ばれる、ろくろで指をひいたような跡があり、カップを持つ手にもよく馴染みます。男性向けには大きなサイズの「チューハイカップ」を製造しており、表面の少しざらっとした感触が握った手にも心地よく、こちらも売れ行きは好調だそうです。

使いやすくて丈夫な「麦山窯」の食器

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たくさんの緑に囲まれ、きれいな川が流れるそばにある「麦山窯」。 豊かな自然のなかでこだわりの和食器がつくられています

「麦山窯」でつくられる食器は、積み重ねがしやすく、機能やデザイン性にも優れているのが特徴です。また、丈夫であることも大きな強み。「高温で焼き上げることによって不純物が燃えて、器自体の土の純度が高くなり、より丈夫に焼きあがるのです」と、忙しい作業の合間に3代目店主の磯村國義さんが説明してくれました。

細部まで行き届く職人のこだわり

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黙々と作業を続ける3代目店主の磯村さんと奥さんのかつみさん。 忙しい合間をぬって工房での作業についていろいろとお話ししてくれました

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型から器を一つひとつ丁寧に取り出します

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器の表面に釉薬(ゆうやく)をぬりコーティングをほどこします

熟練の職人によって、一つひとつ手作業でつくられている「麦山窯」の食器。その製造工程を簡単に説明すると、まずは「鋳(い)込み」と呼ばれる、溶かした土を石こうの型に流し込む作業をします。型からはずして乾かした器は、表面を削ったりみがいたりしてきれいに整えます。次に、約800度の熱で8時間ほど窯のなかで「素焼き」をして、余分な水分や不純物を取り除きます。ここまでの工程にかかる日数は一週間から10日だそうです。

「素焼き」した器には、表面をコーティングする釉薬(ゆうやく)をぬり、乾燥させた後に「絵付け」をすると、いよいよ「本焼き」です。窯の大きさによって「本焼き」の時間は異なりますが、大きな窯であれば焼きあがるのに16時間もかかるそうです。4つある窯にはそれぞれ1日おきに火が入り、作業は毎日休むことなく続きます。暑い工房のなかで、汗を流しながら作業を続ける職人のみなさん。そんななかで、たくさんの和食器が日々つくられているのです。

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「一口ビアカップ(赤絵小花)」(写真右側)、 「チューハイカップ(やきしめ)」(左側)で、 地ビール(「知多マリンビール」「西美濃さくら回廊」「神都麦酒」)もよりおいしくいただけます

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握り心地のよい「チューハイカップ」で地ビールをいただく。 器を変えるだけで雰囲気、味も大きく変わります

「麦山窯」がつくったカップ地ビールをいただいてみました。職人が手書きで描いた上絵がとても上品でかわいらしい「一口ビアカップ」。ツヤを消した色合いが男性にぴったりな「チューハイカップ」。ペアで並べても良くあいます。「チューハイカップ」は350ミリリットルの缶ビール1本がちょうどぴったりあうサイズです。みなさん、ビールはグラスで飲むことが多いと思いますが、器をかえるだけでも雰囲気はがらっと変わり、いつもとは違った新鮮さがあります。こんなカップに注いで飲めば、よりおいしくいただけると思います。

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「日々の健康と、皆様の笑顔のお手伝いができることに感謝しつつ…」

「食事の時間同様、物がとめてくれる時間を大切にしたい…」

「麦山窯」が長年にわたって大切にしてきた思いを言葉で表したのが、上記のコピーです。職人が心をこめて仕上げた器で、ぜひおいしい地ビールを味わってみてください。

(新美貴資)

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