〈『DoChubu』2010年8月28日更新、2020年4月20日加筆修正〉
三重県の鈴鹿市漁業協同組合が昨年(2009年)4月に開いた鮮魚直売所「魚魚鈴(ととりん)」。地元であがった新鮮な魚介類が豊富にならび、値段も手ごろとあって連日多くのお客でにぎわっています。近鉄「白子駅」から歩くこと約10分。白子漁港に向かって歩いていくと、港のすぐそばにある「魚魚鈴」が見えてきます。三重県内でも有数の水揚げを誇る白子漁港。とれたばかりのたくさんの魚と出会えることを期待して、さっそくお店をのぞいてみました。
熱気であふれかえる売り場
訪れたのが日曜日とあって、店の前には多くの客が列をつくり、ドアが開くのを待ち構えています。9時半のオープンと同時に客はいっせいに店のなかへ。ショーケースにならぶ、見るからに新鮮な魚を手にとり、気に入ったものを次々と買い物カゴのなかへと入れていきます。
広い店内では、地元の白子漁港であがった魚介類を中心に、活きた魚や貝からパックにした切り身まで、たくさんの商品が販売されています。干物や海苔、チリメン、かつお節などの加工品もあり、どれを買おうか迷ってしまいそうなほど。押し寄せる客の対応で店員のみなさんは大忙し。オープン後も客足は途絶えることがなく、売り場は熱気であふれかえります。
前浜でとれるたくさんの魚
「魚魚鈴」を運営する鈴鹿市漁協では、20年ほど前から地元でとれた魚を一般に直接販売していましたが、店が手狭なこともあり、「魚食普及」と「地産地消」にさらに力を入れようということで昨年、新たに「魚魚鈴」をオープンしました。直販所では、漁協と漁師の永田さんが営む鮮魚直営店「永田水産」がそれぞれブースをもち、営業しています。
「朝の1時間半にお客さんは集中します。週末は多いときで1日450人以上が来ますよ」と、大勢のお客でごった返すなかで話してくれたのは漁協の部長・水谷達明さん。人気のワケを尋ねると、「鮮度のいい魚が安い値段でそろっていること」をポイントにあげます。オープン当初は売れ残ることがあったカタクチイワシも、いまではたくさん売れるようになり、「ファンが増えました」と笑顔で消費拡大の手ごたえを話します。
いまの時期にとれる人気の魚介類はシラスとワタリガニ。シラスは加工したチリメンのほか、新鮮でなければ食べることができない生のものも販売されていて、売れ行きも好調とのこと。ワタリガニは茹でて食べるとおいしいそうです。
地元の客にしか食べられることのなかったいろんな種類の魚も、今ではその美味しさを知った一般客のファンが着実に増えて、人気を呼んでいます。定置網やノリ養殖、アサリ漁などを行っている漁師の永田浩吉さん。直販所がリニューアルするのを機に鮮魚直販店「永田水産」を立ち上げて出店。定置網でとれた魚を毎日、販売しています。
「新鮮な魚をお客に提供したいです」と、たくさんの魚を前にして笑顔で話す永田さん。市場が休みの日でも、漁でとれた魚は「魚魚鈴」で販売してお客に食べてもらえる。これまで流通に乗らなかったような魚も、おいしい食べ方を提案することで喜んで買ってもらえることから、「魚食普及」と「消費拡大」に大きな手ごたえを感じているようです。
「魚魚鈴」で購入した魚は、頼めば無料でウロコや内臓の除去のほか、三枚にもおろしてくれます。一般の公募で今年(2010年)3月に決まった「魚魚鈴」の愛称は、「魚」と鈴鹿の「鈴」から名づけられたそう。市民に親しまれる鮮魚の直売所として、これからさらに人気を集めそうです。(新美貴資)