〈『DoChubu』2010年9月22日更新、2020年4月20日加筆修正〉
豊かな自然にめぐまれた岐阜県の中南部に位置する山県市。同市にあって、地元でつくられた新鮮な野菜やさまざまな加工品を買うことができる人気のスポットが「てんこもり農産物直売所」です。店内にはゆっくりくつろぐことのできるレストランもあり、市内だけではなく市外や県外からも訪れる客で連日にぎわっています。
2006年(平成18年)11月1日にオープンした「てんこもり」。「てんこもり」とは、澄んだ空(天)、美しい湖(伊自良湖)、豊かな森があるこの土地からイメージしてつくられた言葉で、漢字では「天湖森」と表します。
店にうかがったのはちょうど開店する朝の8時半ごろ。入り口ではすでに多くの人々が列をつくり、営業が始まると同時に店内は多くの客で埋まります。店のなかはあわただしさに包まれ、売り場にならべられていたたくさんの野菜や果物はあっという間に客のカゴのなかへと消えていきます。
旬の食材を使ったレストランの料理も人気
山県市内でつくられた農産物、加工品にこだわって販売している「てんこもり」。この日の店内には、生産している農家から運ばれたカボチャ、ナス、キュウリ、ゴーヤ、イチジクからシイタケ、マイタケ、エリンギなど、とれたての新鮮な野菜や果物がたくさん。その他にも、地元で生産された米や豚肉、卵のほか、豆腐やコンニャク、餅、弁当や赤飯なども販売されていました。店で販売されている農産物には、岐阜県が定めた環境にやさしい「ぎふクリーン農業」によって作られたものも多く、安全で安心なものを提供しています。
店内には座席数が34あるレストランもあり、地元の食材を使った「生姜焼き定食」、「おからコロッケ定食」、「みそ煮込み定食」、「しいたけどんぶり」などが人気。旬の食材を使った1日限定25食の「四季彩ごはん」もお得です。ドリンクにパン、サラダ、デザートがつく「モーニングセット」も午前11時まで楽しめます。自家製のパンが人気で、この日も開店と同時に朝から多くの客でにぎわっていました。
地元のものにこだわって販売
「良い物を真心をこめて販売しています。お客さんを気持ちよくお迎えして、感謝の気持ちでお送りしています」と話すのは、「てんこもり」を運営する有限会社天湖森いじら代表取締役の佐野峰生さん。店内で働く従業員のみなさん、明るく元気な方ばかり。会話も自然と弾み、楽しく買い物をすることができます。
「てんこもり」を訪れる客は年間約19万人で、オープンから盛況が続いています。連日おとずれる大勢の客に、野菜や果物を出荷する農家も刺激を受けて、生産意欲が増しているようです。販売する野菜は値段から袋詰めまで、すべて出荷する農家が責任をもって行っており、商品のラベルには生産者の名前が書かれています。昼ごろには多くの農産物が売り切れてしまうそうですが、品揃えよりも地元でつくられた安全で安心なものを販売することにこだわり、客の大きな信頼を得ています。
地元の農産物を買うだけでなく、ゆっくり味わうこともできる「てんこもり」。山県市の「地産地消」を進める拠点として、さらに注目を集めそうです。(新美貴資)