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【DoChubu掲載】〈山県市特集〉美濃山県の特産「元気玉」で「黒にんにく」を製造。新たな取り組みに挑戦する梅田建設

〈『DoChubu』2011年12月22日更新、2020年4月22日加筆修正〉

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梅田建設が製造する「黒にんにく」。玉や粒、むき身やペーストにしたものが販売されています

岐阜県山県(やまがた)市の新たな特産品として、いま注目を集めているのがニンニクです。同市では、地元で生産されたニンニクを「元気玉」と名づけてブランド化。土づくりからこだわった栽培で、良質なニンニクを使った加工、販売にも力を入れています。

市内に本社を置く梅田建設では、この「元気玉」を熟成させた商品「元気の源 黒にんにく」を昨年(2010年)から販売。果物のような甘みがあって、食べた後のにおいも気にならず、健康の維持にもよいといわれていることから愛用者が増えています。

建設会社が異業種である農業に参入し、ニンニクの栽培から出荷、加工までを一貫して行うユニークな取り組みに、地域を元気にする新たな事業として大きな期待がよせられています。ニンニクの栽培に挑戦するきっかけから現在までの状況、製造する黒にんにくの特長などについて、代表取締役の梅田智美さんにお話をうかがいました。

ニンニクの甘みと栄養をひきだす

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「足してない。混ぜてないから安心です」。自社で製造した「元気の源 黒にんにく」について説明する梅田智美さん

梅田建設がニンニクの栽培に取り組んだのは2008年のこと。同市が特産品にしようと力を入れている「元気玉」を、近くの農業関係者から一緒につくらないかと声をかけられ、社内に「元気ファーム」を立ち上げて休耕地を活用した取り組みが始まりました。

まったく経験のないゼロからの挑戦で、多くの関係者に教えをこい、四国の農協まで指導を受けに足を運んだこともあるそうです。農業経験のある社員が中心となり、作付けや草取り、収穫など全員で行うことで、生産の見通しは立ったものの、「初年度は失敗の連続でした」と梅田さんは当時を振り返ります。

栽培したニンニクはそのまま出荷する予定でしたが、売ろうと思ったらなかなか買い手がつかず、価格の面でも十分な評価が得られなかったそうです。さらに規格外のものはほとんど価格もつかないことから、なんとか加工して付加価値をつけようと試行錯誤のすえ、生のニンニクを熟成させる独自の加工法を開発。「元気の源 黒にんにく」として昨年(2010年)商品化しました。

販売を始めたところ評判をよんですぐに売り切れに。今年はさらに作付けを増やし、地元の農家にも協力を依頼。生産量を大幅に増やして、山県のピーアールにもつながる商品の売り込みを積極的に進めています。

黒にんにくは、収穫したニンニクを乾燥させた後、温度と湿度を管理した特別な部屋で約1ヶ月もの間じっくりと熟成をくわえ、さらに乾燥させて仕上げます。梅田さんによると、ニンニクの甘みと栄養をひきだす熟成の工程が重要で、温度と湿度の調整がとても大切だと話します。同社の倉庫内にある熟成室は、断熱性や機密性がしっかり保たれる造りになっており、こうした部分に建設会社のノウハウがしっかりと活かされていました。

いろんな連携が活発に

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事務所の近くに広がる6反の畑でニンニクを栽培しています

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熟成したニンニクは黒色に変わります。やわらかくて濃厚な甘みがあり食べた後のにおいも気になりません

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「元気の源 黒にんにく」をピーアールする梅田建設のみなさん

現在、加工に使うニンニクは自社で栽培したもののほか、市内の協力農家からも仕入れています。同社では、規格外のものも含め、あらかじめ提示した価格での買い取りを保証していることから、農家のみなさんは安心して栽培に取り組むことができます。

商品は、玉から一つひとつ粒にばらすため、形の悪い規格外のニンニクであっても、優良なものと変わらない品質のものをつくることができ、無駄なく利用されています。このあたりは鳥獣による作物の被害も多いそうですが、畑を荒らされることの少ないニンニクの栽培は、安定した収入の確保にもつながっており、農家の経営を支えています。

作付けや収穫、加工時の皮むきなど、多くの人手を必要とするときには、地元の福祉施設にお願いし、生徒さんたちの協力も得てつくられています。生産規模の拡大によって新たな交流がうまれ、地域のなかでこれまでになかったいろんな連携が活発になっているようです。

黒にんにくは、粒のままでももちろんいただくことができますが、ペーストにしたものを練りこんで製造した麺、クッキーのうえにリンゴジャムをのせ、そのうえに粒をおいたお菓子、さらにはバーガーのソースにも使われたりと、さまざまなメニューが登場し、いろんな食べ方が広がっています。

特産品から誕生した新たな商品が、これまでになかった業種をむすび、人と人とのつながりをうんで地域の可能性をさらに大きく広げていく。梅田さんにこれからの目標についてたずねると、「いかに求めやすい価格で提供するか。そして販路の開拓です。山県市のみなさんにつくっていただき、当社が加工して販売する。そのためにも商品をいかに売っていくかが重要です」と力をこめて語ってくれました。

これからの展開が期待される梅田建設「元気ファーム」の取り組み。地域を元気にする新たなビジネスとして、これからさらに注目を集めそうです。

「元気の源 黒にんにく」は、玉、粒、むき身、ペーストのものが内容量別で販売されています。商品は梅田建設で直接購入できるほか、電話やFAX、ネットからの注文も受け付けています。(新美貴資)

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