里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】〈関市特集〉地元の特産「円空さといも」が味わえる郷土料理の店「ふいご」

〈『DoChubu』2012年9月13日更新、2020年4月23日加筆修正〉

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関市の関地域にある「濃州関所茶屋」

昔から日本の東西をむすぶ分岐の拠点として、発展をとげてきた関市。岐阜県の中央に位置することから、この地方の交通の要衝としても古くから栄えてきました。この地に関所が置かれていたことから、「関」という地名になったとも言われている同市。今回訪れたのは、鳥が大空にはばたくような形をした同市のちょうど真ん中の、関地域にある市の休憩施設「濃州関所茶屋」です。

ここで地元の特産品を使った料理が味わえると聞いて訪ねてみることに。関所にちなんで建てられたという、歴史のどっしりとした重みが伝わってくる木造の外観をしばらくながめ、期待に胸をふくらませて門をくぐりました。

ぬくもりのこもった料理

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濃州関所茶屋の入り口にある大きな門

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元気で明るい「ふいごグループ」の代表・奥田さん

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円空さといも」を使った手作りメニューの円空御膳。右下のお重にあるのがお店の名物「円空コロッケ」と「円ちゃん棒」

濃州関所茶屋で、ブランドとなっている「円空さといも」をはじめ、地元の野菜を使った手作り料理を提供しているのが郷土料理の店「ふいご」です。お店の名前は、金属の熱処理や鍛錬の際に使う送風機で、取っ手を手で押したり引いたりして風を送り出す道具の「鞴(ふいご)」を表しています。茶屋には、市内の観光スポットを紹介する「情報サロン」、えんぴつ削りやうちわ作りなどの体験ができる「イベント工房」、地元でつくられた野菜や加工品などを買うことができる「物産ショップ」があり、その隣接したなかに「ふいご」はあります。

2003年4月にオープンしたお店を運営するのは、市内の主婦5人からなる「ふいごグループ」で、円空さといもや野菜をたっぷりと使った料理が人気を得ています。もともとは、郷土料理の伝承や地域特産物の加工研究などを行っていた、関市の生活研究グループがあり、同市が茶屋を立ち上げるのに際して、同グループのなかの有志が集まり、「ふいご」を開きました。

お店のメニューは、地元の野菜をふんだんに使った円空御膳、ふいご御膳、味噌煮込みうどん、関所うどん定食など。朝9時から開くということで、飲み物におにぎりや茶碗蒸し、おからドーナツがつくモーニングのサービスも。なかでも人気なのは、自慢の一品「円空コロッケ」が味わえる円空御膳で、お店に入るとさっそく注文。すっかりへこんだお腹をがまんして、料理ができあがるのをじっと待ちました。

元気な声と満面の笑みで料理を運んできてくれたのは、ふいごグループの代表・奥田しづ子さん。六角のお重をそっと開くと、色彩豊かな料理が目に飛び込んできました。まずは地元で栽培されている、特産品の円空さといもを使った円空コロッケをいただきます。

揚げたてを口に入れると、とてもきめが細やかで、もっちりとした当たりのよい食感はクセがなく、とてもやさしい味。ゆがいてつぶした円空さといもに塩、こしょう、さらにジャガイモ、長ネギを加えた工夫の一品は、「冷めてもおいしい」のだそう。ボリュームのある油ものなのに、お腹にもとてもやさしくて、もう一つぐらい食べられそうです。

奥田さんのもう一つのおすすめという、円空さといもとご飯、鶏肉などをミンチにして揚げた「円ちゃん棒」をほうばると、それぞれの食材の凝縮されたうま味が口のなかにどっとあふれでます。地元で味わう食材の魅力に、手作りのあたたかさが加わることで、おいしさが完成の域に達しているよう。お米は県産で、和え物や煮物に使われている野菜は地元でとれた新鮮なものばかり。メニューの一つひとつには郷土のぬくもりがこもっています。

食べることは一番大事

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黒を基調としたなかに赤が映える落ち着いた雰囲気の店内

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茶屋内にある物産ショップでは地元の農産物や加工品などが販売されています

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9月末から10月初めにかけて開かれる、ぎふ清流国体、 ぎふ清流大会にあわせて販売される応援弁当。円空コロッケや円ちゃん棒が味わえます

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弁当づくりが始まると「もっと忙しくなる」。これからの活動について言葉に力を込めて話す奥田さん

「ふいご」で提供する料理について、奥田さんは「おふくろの味をイメージしている」と語ります。そんな奥田さんには、高校生のお孫さんがいるそうですが、毎日明るくて元気いっぱい。普段は早朝から夕方まで、調理から接客、お店の運営までのすべてを行う、忙しい毎日を送っています。週一日ある定休日も、料理の研究や頼まれて引き受けた業務に追われ、毎日が仕事になってしまうのだそう。そう言いながらも笑顔をみせる表情はとても生き生きとしています。

「食べることは一番大事なこと」と強調する奥田さん。お店で提供するこだわりの味は、料理が好きだったという母親から受け継いだもの。お茶や生け花の心得もあることから、お店のなかに漂う雰囲気には落ち着きがあり、心地のよいすがすがしさを感じます。

「ふいご」では、9月末から10月初めにかけて開かれる、ぎふ清流国体、ぎふ清流大会にあわせて弁当づくりも始める予定。黒大豆を使ったサツマイモのゼリーなど、新たな一品もこれからだしていくというから、またぜひ訪れて味わってみたい。

いつも一生懸命な奥田さん、そしてスタッフのみなさん。地元から郷土の味、そして元気を発信する「ふいご」。きっとこれからも、鞴のように絶え間なく躍動し、新たな風を送り続けてくれることでしょう。(新美貴資)

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