里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】新商品のアンチョビが人気!豊浜でちりめん、干物を製造直売する「まると水産」

〈『DoChubu』2011年8月31日更新、2020年4月22日加筆修正〉

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豊浜漁港からすぐのところにあるまると水産

愛知県内でも漁業が盛んなことで知られている南知多町の豊浜。豊浜漁港には、一年を通して伊勢湾で獲れたさまざまな魚介類が水揚げされ、周辺には多くの加工場がならんでいます。

この豊浜で明治2年の創業以来、シラスやコウナゴのちりめん、干物や丸干しなど、こだわりの水産加工品をつくり続けているのが、まると水産です。

豊浜漁港の魚市場で仕入れた、脂ののった新鮮な魚をそのまま加工して、旬のおいしさをお客に届けています。地元の漁港で揚がった資源を有効に利用しようと、新たな商品も開発。地域の活性化にもつなげようと奮闘しています。

妥協しない素材選び

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豊浜の魚を知ってほしいと話す與吾泰史さん

「地元の豊浜の魚を知ってほしい」という思いから、3年前に勤めていた名古屋の会社を辞めて豊浜に戻り、家業を継ぐ決心をした5代目の與吾泰史さん。現在は、製造から販売まで両親と一緒に汗を流し、魚市場での魚の仕入れも担当しています。

中学生の頃から家業を手伝い、豊浜の魚について熟知している與吾さん。「素材選びは妥協せず、旬の良いものだけを使っています」と、自信をもって話します。

干物づくりで大事なのは、「脂ののった旬のもの、鮮度の良いものを使うこと」。開いてからの処理も大切で、作業が遅れると品質が落ちてしまうそうです。時期によって大きく変わる魚の身質は、魚種によってもまた異なります。それぞれの魚がもっともおいしい旬の頃合を見極め、そのときの脂や身のつき方を確かめながら干物に仕上げていく製造は、多くの経験と確かな技術を要します。

扱う魚は、全て自分の目で確かめて買い付けています。「納得のいく魚がないときは、販売をやめます」。そんな頑なな姿勢からも、豊浜のおいしい魚を食べてほしいという、まっすぐな気持ちが伝わってきます。

もっと多くの人に食べてほしい

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おしゃれなデザインが目を引くアンチョビの瓶詰め

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(左)人気の豊浜産のアナゴ、マダコの干物。(右)脂ののったカタクチイワシ丸干し

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この日も豊浜漁港では伊勢湾で獲れたたくさんのカタクチイワシが水揚げされていました

豊浜の名物といえば、なんといっても有名なのがアナゴの干物です。多くの加工場でつくられた製品がたくさん販売されていますが、まると水産のものは、たまりしょうゆと魚醤を使用しており、甘みとコクがあるのが特徴です。

アナゴの干物のほか、店にうかがったときには、タチウオ、ムロアジカマス、マダコの干物、カタクチイワシ丸干し、コウナゴチリメンなどが販売されていました。まると水産では、豊浜漁港で水揚げされた魚だけを使って商品を製造しています。

豊浜の魚の価値をもっと上げたいという與吾さんは、昨年3月にカタクチイワシを塩蔵してオリーブオイルに漬け込んだ瓶詰め商品「アンチョビ」を開発しました。たくさん水揚げされるも、そのほとんどが養殖魚の餌になっているカタクチイワシ。地元ではおいしい魚として好まれており、なんとかもっと多くの人に食べてもらえないかと頭を悩ませ、試行錯誤を経て誕生した商品です。

脂ののった鮮度のよいカタクチイワシだけを使用。一尾ずつ丁寧にさばいて、半年間じっくり塩漬けした一品で、瓶の形や包装もとてもおしゃれ。これまでにあった在庫は全て売り切れてしまい、次回は10月末頃からの販売予定。一般客がリピーターとなって買い求めたり、料理店が取り寄せて使うなど、口コミで商品の評判はどんどん広がっているそうです。

まると水産の商品の一つひとつには、與吾さんの豊浜への想いがつまっています。

地域をもっと元気にしたいという與吾さんは、「動けば何かが変わる。現状維持ではなく向上させていきたい」と、話す言葉に力を込めます。まると水産のこれからの取り組みにますます期待が高まります。(新美貴資)

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