〈『DoChubu』2012年1月27日更新、2020年4月22日加筆修正〉
昨年(2011年)の年末。最後の漁で水揚げされる魚貝をどこかの浜で見たいと思い向かったのは、三重県桑名市の漁師町・赤須賀でした。
前夜に降り積もったのか、ところどころに雪が残る桑名の市街地をぬけて朝の漁港につくと、ちょうど目の前でシジミ漁が行われている最中でした。伊勢湾に向かってゆったりと静かに流れる揖斐川をのぞみ、ひんやりとした冷たい空気にふれていると気分もすっきり晴れ渡ります。
漁を終え帰港した船からはたくさんのヤマトシジミが揚がり、陸では家族総出による選別作業が忙しく行われていました。ゴミや石、中身の入っていない空の貝をよりわけたり、地元では「シジミとり」と呼ぶ格子のついた道具でふるいにかけて、貝のサイズを選別したり。いくつかの工程をへた後は、大きな網の袋につめて出荷に備えます。
ジャラジャラジャラ。ザッザッザッ。貝をふるいにかけたり、移し変えたりするたびに、あちこちからは小気味のいい音が聞こえてきます。水揚げされたヤマトシジミを相手に、川べりでは多くの老若男女が手を休めることなく働いています。活気にあふれる漁港の光景がここにはありました。
伊勢湾で獲れるヤマトシジミのほとんどは、木曽三川の河口から下流域を漁場とする漁業者によって漁獲されており、赤須賀はその主要な産地となっています。ヤマトシジミは味噌汁のほか、殻をむいてしょうゆ、酒、砂糖などで煮詰めるしぐれ煮にしてもうまいとのこと。ちょうどいま獲れるものは「寒シジミ」と呼ばれ、一年のなかでもおいしい時期を迎えています。
本年も伊勢・三河湾とそこに注ぐ河川流域を中心に、たくさんの浜を歩き、見て、聞いて、味わいたいと思います。おいしい魚のことや浜の魅力はもちろん、漁業・漁村の活性化に向けてがんばっている関係者の取り組み、各地で行われる魚食推進や食育活動などの情報について、もっともっとみなさんにお届けしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
(新美貴資)