里山川海を歩くライターの活動記録

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関市「松文養鯉場」の寒ナマズ 寿司職人が調理して頭から骨、皮まで味わう

〈2015年6月26日執筆、2020年5月23日加筆修正〉

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関市の池で養殖されているナマズ

ひげを生やした愛きょうのある顔と、ぬるりとした黒くて太い体から、独特な雰囲気をかもしだすナマズ岐阜県の関市下有知地区で、ニシキゴイや食用コイ、ホンモロコなどを養殖・販売する「松文養鯉場」代表の松田文男さんは、県内でナマズ養殖に取り組む一人である。6年前に県河川環境研究所(各務原市)から勧められてナマズの仔魚を池に放し、以来飼育を続けている。約2年かけて成魚にまで育てたナマズは、注文があると活かした状態で料理店まで運び出荷する。

池の中に囲って飼育する養殖魚は、安定的に供給することが可能。水温や水質、与える餌の種類や量などをしっかり管理することによって、良質なナマズを生産することができる。共食いが多いなど育てるうえでの課題はあるが、臭みのないさっぱりとした身の味わいは評価が高く、養殖の新たな対象魚として期待されている。

松文養鯉場で育ったナマズを食べる催しが1月16日、関市関口町の「梅寿し」で開かれた。松田さんの呼び掛けで集まった参加者は、刺身や頭の素揚げ、つみれ鍋や蒲焼き、天ぷら、寿司などを味わった。どの料理も店主の那須等さんが工夫をこらし、ナマズをほとんど余すところなく使い切った。適度に脂がのった白身は、そのまま刺身でも、どんな調理法や味付けでも食べやすく、口に入れた参加者からは、そのおいしさに驚きの声があがった。

養殖されたナマズは、人工飼料を与えられて育っているので、魚体に寄生虫がおらず、生食でも安心して食べることができる。寒の時期のナマズについて、松田さんは「今が一番うまい」と太鼓判を押す。

ナマズを提供するのは2回目という那須さんは、「捨てるところがほとんどないとても面白い魚です」と声を弾ませた。同店では、事前に予約すれば松田さんが育てたナマズの料理を味わうことができる。

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水をぬいた池でナマズの水揚げが行われた

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池の底にできたでこぼこはナマズが作った通り道

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松田さんが育てたナマズ。60センチを超える大きなものもあった

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さっぱりとしていて食べやすいナマズの刺身(奥に並ぶ白身

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いろんな食感が楽しめるナマズの骨せんべいと皮の湯引き

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ふっくらと仕上がったナマズの蒲焼き

(新美貴資)

※記事にある情報は、2015年の取材当時のものです。