〈『DoChubu』2011年2月12日更新、2020年4月20日加筆修正〉
名古屋調理師専門学校(名古屋市瑞穂区)で1月22日、特修講座があり、アンコウをさばく独特な調理法「つるし切り」が行われるというので、うかがってきました。見た目はちょっとグロテスクな感じもしますが、よく見ると愛嬌のあるかわいい顔をもつアンコウ。冬に鍋で食べるとおいしい、人気の魚です。
日本料理担当の小川二三夫教授によってさばかれたのは、石川県であがった重さ約7キロのもの。表面のぬめりがとられ、ぐにゃぐにゃしたやわらかな魚体がつられると、その口の中にたっぷりの水が注がれていきます。アンコウのちょうちん、腹ビレが切り取られ、トゲのある皮がはがされていきます。その作業をじっと見つめる生徒のみなさん。さばかれていくアンコウの姿にあちこちからすごい!と声があがります。
つるし切りを実際に見るのは初めて。私も一緒に体をのりだして、小川教授の包丁さばきをじっと見続けました。内臓や身が手際よく順にさばかれていき、最後に残ったのは口と中骨。その中骨も鍋をおいしくするダシとして使われます。
調理のポイントは、「ぬめりをしっかりとること」。下処理の段階でしっかり洗ってとり除きます。内臓はさっとゆでて霜降りにして、臭みをとっておきます。ダシにはゆずの皮も入れて、香りづけ。沸騰したダシに、まずは魚を入れてうま味をしっかりだし、シイタケから順に野菜を加えていただきます。実演の後は、それぞれの厨房で生徒のみなさんが鍋を準備して調理。参加者全員で旬のアンコウを味わいました。
アンコウでおいしいのは、胃袋、卵巣、肝、皮、尾ビレ、身、エラ。まずは鍋を一口。卵巣は弾力があってツブツブとした食感がとても新鮮。皮はプルプルで、身はプリプリ。それぞれにいろんな味わい、歯ごたえ、舌触りがあって驚きでした。魚のうまみがたっぷりと出ているダシが体にしみわたり、とても温まります。事前に塩をふって酒を加え、仕込んでおいたアン肝もいただきました。口のなかで濃厚な味がとろけて、こちらも絶品でした。
最後の骨までおいしく味わえるアンコウ。調理の方法を見るだけでなく、味わうことによっても、たくさんの驚きや発見がありました。(新美貴資)