里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

【DoChubu掲載】常滑の新たな特産アカモクを調理!第43回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2011年4月13日更新、2020年4月21日加筆修正〉

f:id:takashi213:20200303131959p:plain

今回の講座で使ったアカモク。日本の各地で見られる海藻です

伊勢・三河湾とその流域でとれる旬の魚介類を調理して味わう、なごや環境大学の人気の講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度(2010年)第8回目が2011年3月10日(木)、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。

この日に調理したのは、日本の各地で見られる海藻のアカモクです。浅い海の岩場などで育つこの海藻。東北地方の一部をのぞいて、ほとんどの地域では食べる習慣がありません。伊勢・三河湾では成長したアカモクが漁船のプロペラにからまったりするなど、漁業者にとっては迷惑な存在となっています。そんなアカモクですが、体に良いとされる成分を豊富に含んでいることから注目を集め、最近では各地で生産・加工が活発に行われています。

伊勢湾内にある中部国際空港セントレア(愛知県常滑市)でも、自然石を積み上げた空港島護岸にアカモクは自生しています。このアカモクセントレアでは、漁業者と連携して採取・加工。常滑の新たな特産にしようと売り込みに力を入れています。

今回、講師には商品開発をしたアカモクプロジェクトのリーダーである同空港業務推進本部総務室課長の伊藤淳一さんを迎え、「アカモクそば」「アカモクの豆腐和え」「アカモクスープ」「アサリの豆味噌焼き」などを参加者全員で調理して味わいました。

美容と健康に無限の可能性

f:id:takashi213:20200303132236p:plain

多くの栄養成分を含むアカモクの魅力について語る講師の伊藤さん

講師の伊藤淳一さんによると、アカモクは日本各地の浅い海の岩場で生育する1年藻。伊勢湾では1月頃から育ちはじめ、3月頃に成熟。4月頃に胞子を放出すると衰弱して、5月には枯れて流れ藻に。冬になると着底した胞子が再び芽を吹き始めるそうです。

空港島護岸でとれるアカモクセントレアの指導のもと、地元の漁師が採取から加工までを一貫して行っています。生育の状況を見極めて採取した最高の状態のものを徹底した品質管理のもとで加工し、商品「天然アカモク セントレアの恵み」を製造しているそうです。

アカモクに多く含まれているフコダインは免疫力の向上に良く、アルギン酸は抗がん作用やインフルエンザ、花粉症にも効果があるそうで、「美容と健康に無限の可能性がある」とのこと。取引先もスーパーや飲食店だけでなく、常滑半田市の学校給食センター、愛知県がんセンター中央病院など広がっており、アカモクのもつ様々な成分の効果に注目が集まっています。

想像以上の粘りにびっくり

f:id:takashi213:20200303132355p:plain

(左)自然な状態のアカモク。(右)湯にさらすと鮮やかな緑色に変わります

f:id:takashi213:20200303132427p:plain

アカモクを細かく刻むと粘り気がでてきます

そのアカモクを早速調理しました。山崎川グリーンマップの志村貴久子さんが作業の手順を説明。グループに分かれそれぞれの厨房で調理が始まると、実習室は一気ににぎやかさを増します。黒々としたアカモクは、湯に通すとパっと鮮やかな緑色に。包丁で細かく刻んでいくと、納豆のような粘りが見る見るうちにでてきます。ネバネバの元はオスの株がもつ胞子なのだそう。このアカモクを使って「アカモクソバ」「アカモクの豆腐和え」「アカモクスープ」を作ります。

アカモクという名前を聞いたのは初めて」と話す参加者の女性。今回はとてもシンプルな調理ですが、アカモクを調理して食べるのは初めての方ばかりのよう。包丁で刻んでいたみなさん、想像以上の粘りにびっくりの様子。できあがりがとても楽しみです。伊藤さんからは、麺に海藻が練りこまれている「アカモクきしめん」も差し入れでいただき、調理の楽しみがまた一つ増えました。

東幡豆のアサリで豆味噌焼き

f:id:takashi213:20200303132603p:plain

(左)三河湾の東幡豆でとれた大粒のアサリ。(右)食用として利用されることのほとんどないシオフキも調理・試食しました

f:id:takashi213:20200303132639p:plain

「アサリの豆味噌焼き」は火を通してアサリの口が開いたらできあがり

東幡豆でとれたアサリを使って調理したのが「アサリの豆味噌焼き」です。三河湾に面する幡豆町が、特産のアサリと地元で製造された味噌を使って、地域おこしをしようと売り出している郷土の料理です。今回は土鍋の代わりに中華鍋で。鍋に白菜とネギをしき、その上によく洗って砂抜きしたアサリを並べて味噌をかけます。あとはフタをして強火でがんがん熱を加えていくだけ。調理が始まると、あちこちから味噌の香ばしいにおいが漂ってきて食欲を刺激します。

ツルツルでシャキシャキ。

f:id:takashi213:20200303132736p:plain

この日のメニュー「アカモクそば」「アカモクの豆腐和え」「アカモクスープ」 「アカモクきしめん」「アサリの豆味噌焼き」など

f:id:takashi213:20200303132809p:plain

今回の料理で使った「天然あかもく セントレアの恵み」(左)と 幡豆町にある醸造場すずみその「なんでもみそ」

料理ができあがると待ちにまった食事の時間です。アカモクの料理もアサリの豆味噌焼きも食べるのは初めてという参加者が多く、その表情からはとても楽しみにしている様子が伝わってきます。私もアカモクそのものはしょうゆダレで食べたことがあるのですが、他の食材とあわせた料理を口にするのは初めて。食感や味わい、他の食材との相性はどうかなど、興味は増すばかり。さっそくできたてをご飯と一緒にいただきました。

アカモクにそばつゆとわさびを加えた「アカモクそば」。しょうゆダレでいただくのと似ていて、食べなれた味わいではありますが、何度口にしてもやっぱりのど越しが良くてツルツル。モズクよりもさっぱりとした感じでご飯にも良くあいます。「アカモクの豆腐和え」「アカモクスープ」はともにアカモクの歯ごたえがシャキシャキ。海藻の臭みがないため、だれでも好き嫌いなく食べられそうです。

味噌の香りだけでもご飯が進んでしまう「アサリの豆味噌焼き」。たっぷり味噌を吸いこんだプリプリのアサリをまずは一つ口へ。甘辛い味噌とアサリのうま味が口のなかでパーっと広がります。あっという間にアサリをたいらげたら、残った味噌ダレはご飯へ。そこに刻みネギとゴマをかけると絶品な料理がさらにもう一品。アサリのダシが加わった味噌ダレを残さず最後までいただく。まさに最高の贅沢です。

今回は同じアサリでも、深いところでとれたものと、浅いところでとれたもの。さらに地元ではあまり利用されていないアサリと似た貝のシオフキも酒蒸しにして、それぞれを食べ比べました。シオフキはアサリの漁場でよく見られる貝です。火を通すと固くなり、砂だしにも1週間ほどかかってしまうため、食用として使われることはほとんどありません。アサリは深いところにいるもののほうが、常にエサを摂り続けるため身も大きくおいしくなるそうです。

今回はアカモクという普段の食生活では馴染みのない海藻を、いろんな調理方法でいただきました。初めての食材を見て触れて味わうことで、きっと新たな発見や驚きがあったのでは。伊勢・三河湾には、まだまだ知られていない魚介類がたくさんいます。なかにはアカモクのように、味はもちろん栄養の面からも注目を集める魚や海藻がこれからまだまだでてくるかもしれません。伊勢・三河湾がもたらす様々な海の幸をもっと知って味わいたい。そんな思いがさらにこみあげてきた今回の講座でした。(新美貴資)

みつける。つながる。中部の暮らし 中部を動かすポータルサイトDoChubu