里山川海を歩くライターの活動記録

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「愛知は地産地消が一番進んでいる県」―名大東郷フィールド「農場講演会」でJAあいち経済連畜産課長

〈2009年9月2日執筆、2020年5月20日加筆修正〉

名古屋大学大学院生命農学研究科主催の第3回「農場講演会」が2009年8月22日、愛知郡東郷町にある同研究科付属フィールド科学教育研究センター東郷フィールド(付属農場)で開かれました。JAあいち経済連畜産部の加藤雅巳・畜産課長が「畜産物のできるまで」について講演。全国有数の生産を誇る愛知県の畜産物について、その特徴や生産状況など、他県との違いを中心に話しました。講演後には、出席した地元住民からさまざまな質問が寄せられ、活発な質疑応答も行われました。 

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地元住民らが出席して質疑応答も行われました

冒頭、加藤課長は愛知県の農業の特徴について説明しました。県の平成19年度(2007年度)農業産出額は3154億円で全国第5位。オオバ、フキ、キャベツ、菊、うずらの卵など、全国一を誇る品目も数多く、「米、野菜、畜産がバランスよく生産されていて、他の県にはない状況だ」と述べました。このうち、畜産部門についても牛(肉用・乳用)、豚、鶏と生産のバランスがとれており、愛知が質・量ともにすぐれた農畜産県であることをアピールしました。 

厳しい経営が続く県内畜産農家の現状も報告しました。平成元年(1989年)に4590戸あった農家数は、牛肉自由化や環境三法(家畜排せつ物法、改正肥料取締法、持続農業法)の制定、BSE問題によって21年(2009年)には1398戸にまで減少。平成に入ってから7割が廃業していることを明らかにしました。加藤課長は「畜産は片手間ではできない。過大な投資で借金を抱えてやめる農家もいる」と、経営の厳しい実態についてもふれました。

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愛知の畜産の特徴を説明する加藤雅巳課長

畜産の牛(肉用・乳用)と豚について、それぞれの品種やライフサイクル、流通なども説明しました。肉牛については、6トンの飼料を食べて育った体重が800キロとなり、そこから枝肉、部分肉と加工して、最終的に精肉となるのは300キロといった歩留まりの話から、第1胃から4胃までもつ消化生理まで、幅広い内容をわかりやすく解説。酪農家と肉牛飼育農家数のバランスが良いことから「酪肉連携のとれた県」であり、他県と比べて乳用牛の飼育が盛んなことを特徴にあげていました。

肉豚については、安定した高い品質をつくるため同じ品種のすぐれた豚を集めて交配・選別などをする「系統造成」や、出荷までに食べる飼料の量や種類、飼育豚の管理方法、さらに出荷先までをわかりやすく解説しました。企業養豚が多い他県に対して県内では農家養豚が中心であることや県が造成した3品種の系統豚の利用が進んでいることを特徴にあげました。

愛知の畜産物の多くが県内で消費されていることについて加藤課長は、「以前から地産地消が意識せずにできている。農業構造にはバランスの良さがあり、愛知は地産地消が一番進んでいる県」であることを強調。安全・安心で新鮮な畜産物を供給するため、加工・流通過程で進めてきた衛生管理の取り組みも紹介しました。

県産の畜産物には、「みかわポーク」「みかわ牛」「あいち牛」「ぴゅあ愛知」といった肉のブランドや「きみ元気」「みかわたまご」など高いシェアを誇る鶏卵があります。JAあいち経済連では、飼育の段階から産地と一緒になって高品質な畜産物の生産に取り組み、加工から販売にいたるまで一貫した供給体制を確立しています。

「農場講演会」は東郷町の後援も得て、地域貢献と区別支援事業の一環として行われたもので、今年度は「食糧について考える」をテーマに年4回開催する予定です。

(新美貴資)