里山川海を歩くライターの活動記録

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飛騨金山七河川合流博覧会2015/郡上市和良町「和良おこし公民館」 香り豊かなウグイごはんを古民家で味わう

〈2015年7月2日執筆、2020年5月22日加筆修正〉

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郡上市和良町の「和良おこし公民館」で開かれた

 「鷹匠とウグイ、ハザコ」をテーマにした、見て聞いて味わう体験型の交流イベント「飛騨金山七河川合流博覧会2015」が3月7日、郡上市和良町で開かれた。

 和良、馬瀬、戸、弓掛、益田、飛騨、菅田川の7つの河川が合流する下呂市金山町を起点に、地域に活性を呼び込もうと、同博覧会実行委員会が主催して一昨年から始まったこの催し。これまで下呂市内を中心に、各地に伝わる伝統漁や漁具、魚食などを毎回テーマに取り上げ、開催を重ねてきた。

 今年の第1回となった今回は、和良町にある「和良おこし公民館」で開かれ、県内から約20人が来場。鷹匠による鷹狩りの実演や、この地域でハザコと呼ばれる天然記念物のオオサンショウウオについて説明が行われた他、ウグイを使ったごはんなどが振る舞われ、参加した人々は交流を深めながら味わった。

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鷹狩りの実演を行った鷹匠・伏屋典昭さん

寒気の残る当日は、小雨がぱらつくあいにくの空模様となったが、会場となった公民館には続々と参加者が訪れ、にぎやかな談笑が生まれる。博覧会が始まり、まず行われたのは鷹狩りの実演だ。雅な技を披露してくれたのは、岐阜市在住の鷹匠・伏屋典昭さん。公民館前の広場に全員が移動して注目するなか、伏屋さんは腕にのせた鷹を大空へと放ち、実際の狩りがどのように行われるのかを見せてくれた。人と鷹が意思を通わせ、息を合わせる伝統の再現に、人々からは驚きの声があがる。

公民館に戻ると、ウグイのごはん、地元の野菜をたっぷり使った味噌汁や郷土料理の「鶏ちゃん」などが用意され、参加者は冷えた体を温め、腹を満たした。料理のなかでも、特に関心を集めたのが「ウグイごはん」。岐阜県では食べる機会がほとんどないこの魚を味わうのが、今回のテーマの一つで、全員が興味津々の様子ではしを伸ばした。

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参加者が味わったウグイごはん、鶏ちゃん、味噌汁

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繭(まゆ)の豊作を祈って作られる、繭だんごも振る舞われた

このウグイ、一生を淡水域で過ごすもの(陸封型)と、一時期を海で過ごすもの(降海型)の2種類がいる。特有の苦みがあり、小骨も多いことから、岐阜県内で食用として利用されることはほとんどないが、東北地方や長野、滋賀県などでは、塩焼きや甘露煮、なれずしなどにして食べる文化があるという。

早速ウグイごはんを食べてみる。その身はやわらかく、ほのかな川魚の香りが口内から鼻へとぬける。小骨もていねいに取り除かれていて食べやすい。

「タンパク源のない時代、ウグイは貴重なおかずで、毎晩夕食に煮付けがでた。うまいと感じたことはなかったが、この魚を見直した」。地元の和良町から参加したという年配の男性は、ウグイごはんをほお張りながら幼かった頃の記憶をよみがえらせる。

この日のためにウグイごはんを作ってくれたのは、道の駅和良で直売所「ちんちろ屋」を経営する大澤淑恵さん。ウグイは、関市にある養殖池で畜養されていた、なかには30センチを超える大きな丸々としたものを取り寄せて使った。調理法はとってもシンプル。釜で炊いたご飯のなかに、しょうゆと酒を加え、はらわたをぬいて素焼きにした魚をのせる。アユめしを作る要領で、ふたをしてウグイをしばらく蒸らし、小骨を取り除いて身をほぐし、ご飯と混ぜ合わせればできあがる。

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公民館のなかにある薪ストーブが会場を暖めた

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オオサンショウウオの置物とぬいぐるみ

食後には、和良おこし協議会の事務局長・加藤真司さんがオオサンショウウオについて、その生態や地元の河川での生息状況、人と関わり共生してきた歴史や文化を解説してくれた。若者から老輩までが世代を超えて輪をつくり、川の魚や漁、暮らしなどについて語り合う。河川文化をめぐる話題は尽きることなく、温もりに包まれた古民家には、ゆったりとした時間が心地よく流れた。

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会場となった和良おこし公民館

(新美貴資)