里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

【新美貴資の「めぐる。(130)」】チャットGPTへの懸念 仕事で問われる真価

〈『日本養殖新聞』2023年4月15日号寄稿〉

驚いた。「養殖業が発展するためには何が必要か?」という私の問いに対する答えにである。以下の文章を読んでみてほしい。

〈養殖業が発展するためには、以下のようなことが必要です。

1.生産技術の向上:養殖の生産技術、特に稚魚の生産技術や飼料の開発技術が進むことで、効率的で高品質な養殖ができるようになります。

2.環境保全:適切な餌や環境を与えることで、魚の健康状態を保ち、環境に負荷を与えずに養殖ができます。

3.品質・衛生管理の徹底:衛生的な養殖方法や食品衛生基準を守り、高品質で安心・安全な養殖品を供給することが必要です。

4.養殖産業の振興策:政策的な支援が必要で、投資支援や研究開発支援、販路開拓など、幅広い分野で養殖産業を支援する政策が必要です。

以上のような取り組みが進むことで、よりよい品質の養殖品や新しい養殖品の開発、市場拡大などが期待されます。〉

これ、誰が書いたと思いますか?実は、今話題になっている「チャットGPT」が書いた文章である。私が質問を入力し、返ってくるまでに20秒もかからなかった。人工知能(AI)の進化に驚愕した。

チャットGPTは、AIが文章で回答する自動応答ソフトで、私が使ってみたのは、チャットGPTをLINEアプリ上で使うことができる「AIチャットくん」というサービスだ。

先日、ある養殖業者と会った。その際に、安価に量産できるウナギの人工養殖が確立されたら、今の状況がどのように変わるのかについて話し合った。

〈ウナギの人工生産が安価で大量に量産できるようになると、ウナギの業界は大きな変化に直面することになるでしょう。現在、ウナギの生産は天然のものに頼っており、その供給は限られています。しかし、人工生産が可能になると、ウナギの供給量が急増することになるため、価格競争が激化することが予測されます。

ウナギの消費にも変化が起こるかもしれません。現在、ウナギは高級食材として扱われていますが、人工生産により価格が下がれば、より手軽にウナギを食べることができるようになるでしょう。このため、ウナギの消費が増える可能性もあります。

また、ウナギの人工生産には環境面でのメリットもあります。天然のウナギの生息地が減少している現在、人工生産により天然資源の保護が可能になることも期待できます。〉

チャットGPTに尋ねてみたら、このような答えが返ってきた。このソフトに新たな可能性を感じる一方で、人間の思考力が奪われる恐れを抱いた。嘘も含まれる膨大なネットから情報を集め、文章を生成することから不確かな内容も多く、安易に信用するのは危険だ。

近い将来、ライターの仕事もAIに取って替わられてしまうかもしれない。多くの仕事で、作る物やサービスの真価が問われるだろう。私は歩き、考え、感じたことを生身の自分の言葉で伝えていきたい。