里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】〈酒特集〉こだわりの手づくりで本物のうまさを追求する地酒蔵「山崎合資会社」

〈『DoChubu』2010年3月11日更新、2020年4月20日加筆修正〉

幡豆の風土が育む良質なお酒

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こだわりのお酒をつくり続けている、社長の山崎厚夫さん(左)と杜氏の山崎久義さん

美しい三河湾国定公園にかこまれた愛知県の幡豆町。目の前には穏やかな海原が広がり、その後背には緑豊かな山々が連なって、訪れるたびに自然にめぐまれた地であることを実感します。この幡豆町で、お酒をつくり続けて100有余年になるのが山崎合資会社です。

創業は明治36年。厳選した米と水のうまさを最大限にひきだすため、ひたすら職人による手作業にこだわり、本物のうまさを追求しています。

職人が手作業で精魂こめてつくる

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(左)発酵を続ける「もろみ」をまぜるため、朝、夕方の2回行う「櫂(かい)入れ」。 (右)約30℃の麹室(こうじむろ)で、蒸し米をもみほぐす「切り返し」の作業

同社を経営するのは創業から4代目になる山崎厚夫さん。さらに杜氏である山崎久義さんのもと、3人の職人が中心となり、酒蔵で昼夜をともにしながら、良質な酒づくりに日々精をだしています。人の手による伝統の技術が、同社のこだわりです。原料米は、玄米を見極めてからていねいに精米。もっともデリケートな作業とされる麹づくりは、すべて職人による手作業。仕込みから貯蔵まで、すべてのお酒が適切な温度のもとで管理されています。

愛知の米を使ったお酒が人気

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愛知の高品質な米でつくったお酒 (左)夢のある愛知の地酒「夢山水十割 奥」 (中)幡豆町観光協会、鳥羽火祭保存会推奨品。 キレの良い幡豆の辛口酒「三河鳥羽の火祭」(右)辛口の純米酒名古屋城の礎」

主力ブランドである「尊皇」「尊王」など、人気商品がいくつもあるなかで、注目をあつめているのが愛知県産の米を原料に使ったお酒です。杜氏が代替わりしたのをきっかけに、地元で生産された米を使って2002年に製造したのが「夢山水の酒『奥』」。華やかな香りと同時に味の濃いお酒をつくろうと、長年にわたる試行錯誤のすえに完成させた愛知の地酒で、奥三河で契約栽培した酒米「夢山水」を100%使用しています。「他とは違うオリジナリティをどうやってだすか。そこで地域の特徴あるお酒をつくろうと考えたのです」と山崎社長。

その後も同社では、幡豆町で契約栽培した酒米若水」を全量使った「三河鳥羽の火祭」、同じく県産の「若水」を使った「名古屋城の礎」を製造。どちらもキレのよい辛口が人気を呼んでいます。「三河鳥羽の火祭」は、国の重要無形民俗文化財にも指定されている、幡豆町の伝統の祭り。また「名古屋城の礎」は、城の天守台の石垣に幡豆の石が使われていることからネーミング。どちらも地域色に富んだお酒で、さらに話題を集めそうです。

山崎社長に今後の目標をたずねると、「これからも県産の米を使ったお酒をつくることで、商品に付加価値を付けていきたいですね」と笑顔で答えが返ってきました。どんな新しいお酒ができるのか、これからが楽しみです。(新美貴資)

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