〈『DoChubu』2010年10月27日更新、2020年4月20日加筆修正〉
三重県津市の一志地区。この地で、「おいしいお米を食べてほしい」と、情熱をもってこだわりのお米づくりを続けている農家がいます。きれいな水、生い茂る緑、澄みきった空気のなかで、日本一のお米をつくろうと日々努力を重ね、丹精を込めて農作業を行っています。今回は、そんなこだわりのお米「一志米」の生産現場を訪ねました。
循環を大事にした米づくり
訪れたのは「一志米」を生産する有限会社イケダグリーン。作業場へうかがうと、ちょうど米ぬかをペレットに成形しているところでした。同社の精米所からでる米ぬかは、全てペレットにして田へと戻しています。もみ殻も近くの畜産農家へ供給し、牛に踏ませた後は再び引き取って田へ帰しているそうです。
「肥料は一切入れません。循環を大事にしています」と話すのは、現場を案内してくれた代表取締役の池田七郎さん。手間とコストのかかる大変な作業ですが、肥料の代わりに循環を利用したこの取り組みによって、良いお米がとれるそうです。
最適な環境のなかでうまれる「一志米」
「安全・安心な米をつくりたくて」と、農業を始めたきっかけについて話す池田さん。9年前からこの地で農業をはじめ、こだわりのおいしいお米づくりを追求し続けています。
池田さんが「一志米」をうむこの田の特徴として真っ先にあげたのは、粘土質になっている土壌です。この土が、おいしいお米をつくるうえで欠かせないそうです。周囲を見ると、両側からはおおうように深い樹林が生い茂っています。人家もない上の方には、落ち葉からしみ出た雨水が流れ込む大きな池があり、そこから田へと水を引き入れています。
池田さんによると、このミネラルを豊富に含んだ水が元気な稲を育てるのだそうです。「一志米」はこのような、おいしいお米をつくる最適な環境のなかでうまれています。
「みえの安心食材」にも認定
「冷たいご飯を食べると、そのお米がおいしいかどうかがわかる」と池田さん。「みえの安心食材」にも認定されている池田さんのお米を味わって、そのおいしさに驚き、実際につくられている田を見ようと全国から訪れる客もいるそうです。「お米はたくさん炊くとおいしい。うちのは普通に炊けばうまいよ」と、自信をもって語ります。
おいしいお米づくりを追い求める池田さんが、いま注目しているのが孟宗竹です。孟宗竹をチップにしたものをもみ殻と同じように畜産で利用し、その後は肥料の代わりとして田で使えないかなど、農作業をしながらさまざまな研究や情報収集も行っています。
次々と浮かぶ新しいアイデアをすぐに実行に移していく池田さん。「ことを起すから考えが浮かぶ。何もしないと浮かばない」と答える笑顔がとても印象的でした。さらにおいしいお米づくりへ。池田さんの挑戦はこれからも続きます。(新美貴資)