里山川海を歩くライターの活動記録

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環境にやさしい食事を考える―なごや環境大学共育講座「フード・マイレージ活用講座Part2」

〈2009年7月6日執筆、2020年3月20日加筆修正〉

なごや環境大学の共育講座「フード・マイレージ活用講座Part2」の第2回が2009年6月28日(日)、名古屋市中村区の住友信託銀行名古屋駅前支店セミナー室で開かれました。今回のテーマは「フード・マイレージワークショップ事例紹介」。東海フードマイレージ研究会による運営で、実際のワークショップの運営方法を学ぶために企画されたものです。

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熱心に話を聞く参加者ら

講師は同研究会代表の丹羽健司さん、環境科学総合研究所研究部課長の安本和正さんで、食と環境の問題に関心をもつ市民ら13名が参加。算出ソフトを使って作成された「フード・マイレージ診断書」や食料の二酸化炭素排出量がわかる「フード・マイレージ買い物ゲーム」から、毎日の食生活が環境に与えている負荷について考え、意見を交換しました。

フード・マイレージとは、食料の輸入量と輸送距離をかけ合わせて数値化したもの。計算式は、輸入量(トン)×輸送距離(キロ)で表します。輸送距離が長いと数値は大きくなり、大量の二酸化炭素を排出していることになります。同じ重量でも、輸送距離を短くすることによってフード・マイレージは小さくすることができ、国産や地元産の食材を選ぶことで、省エネや二酸化炭素の排出削減につなげることができるのです。

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「フード・マイレージから暮らしを見つめなおしましょう」と語る丹羽さん

「フード・マイレージ診断書」は、前日にとった食事をメニュー表から選び、その番号をパソコンの算出ソフトに入力して作成されます。1食あたりに使用する食材の重量に、国内外の主要な産地から名古屋までの距離をかけることによって、フード・マイレージがわかる仕組みです。

参加者のみなさんと一緒に診断書を作成してもらいました。メニューは、朝食が牛乳とヨーグルト、昼食がラーメン、夕食がご飯と魚のフライ、餃子で、フード・マイレージは11トン・キロでした。これを年間に換算すると4152トン・キロになります。このメニューで使われた食材をすべて国産にすると、9割近くも数値が減ることがわかり驚きました。

 グループに分かれて行われた「フード・マイレージ買い物ゲーム」では、夕食メニューを決めて、予算の範囲内で値段をみながら、産地や数量が書かれた食材カードを選んでいきます。カードの裏には、★の印(1個で二酸化炭素20グラム排出)があり、輸送で排出された二酸化炭素量を知ることができます。食料の長距離輸送が、二酸化炭素の大量排出につながっていることを学ぶことができるのです。

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買い物ゲームで使われたカード

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★印の数から二酸化炭素排出量がわかります

今回の買い物ゲームは、大阪を基点にした子供向けのもので、大人向けには春夏秋冬など季節ごとのバージョンもあるそうです。安本さんは、「このゲームには、いろんな要素を盛り込むことができる。自分のところの地域版をつくると、とても勉強になります」と話し、積極的な活用を参加者に呼びかけました。

丹羽さんは、食と環境の問題について、我が国の低い食料自給率や自然環境の悪化、世界の食料事情なども含めて説明。「自分の国でつくれる食べ物を、遠くの国からもってきていることについて考えるべき。環境がどのようにつながっているかを考えることに意味がある」と話し、フード・マイレージについて広く伝えていくことの大切さを強調していました。(新美貴資)