里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】カサゴやシャコなど南知多でとれた魚を調理!第35回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2010年6月1日更新、2020年4月20日加筆修正〉

最小限の下処理で、無駄なくおいしく

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この日調理したカサゴ、アカシャエビ、エイなどの煮付け。塩茹でしたシャコ。 クロダイのアラでつくった味噌汁など。最小限の下処理で無駄なく、おいしくいただきました!

昔から多くの魚が獲れ、豊かな海として知られる伊勢・三河湾とその流域。湾内やそこに注ぐ多くの河川では、いまも漁が盛んに行われています。今はどんな魚が旬で、おいしくいただくことができるのでしょうか?

身近な海で獲れる魚介類を調理して味わう、なごや環境大学の人気の共育講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度第1回目が5月13日(木)午前10時半から、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。

毎回、漁業関係者を講師に招いて、新鮮な旬の魚を参加者全員で調理し、味わいながら海や環境、漁業の大切さを学ぶこの講座。今回も一般の主婦ら約40人が参加し、南知多町であがったたくさんの魚を使っていろんな料理をつくりました。

今回講師を務めたのは、愛知県南知多町にある県水産試験場漁業生産研究所の主任研究員である中村元彦さんです。この日のテーマは、魚を最小限の下処理で効率よく調理して、無駄なく食べること。道具の特徴を知って、自分で工夫してさばくことです。参加者は、中村さんからウロコや内臓の取り方についてアドバイスを受け、お互いに確認しあいながら魚のさばき方を楽しく学びました。

 魚のウロコや内臓取りに挑戦

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この日調理したたくさんの魚介類。南知多であがったもので、どれも新鮮でした。 (左上)クロダイ、(右上)シャコ、(左下)アカシャエビ、(右下)カサゴ

調理で使った魚は、大きなクロダイやシャコ、身のプリプリなアカシャエビをはじめ、マダイ、カサゴ、アナゴ、エイ、ジンドウイカ、キスなど盛りだくさん。南知多町の漁港にあがった魚で、中村さんが持ってきてくれたものです。参加者はそれぞれのグループに分かれて、クロダイ、マダイの刺身。カサゴ、エイ、アカシャエビ、カレイなどの煮つけ。三枚におろした後のクロダイ、マダイのアラを使って味噌汁などをつくりました。

 編集員の私もワイシャツのそでをまくって、調理に参加させてもらいました。普段、簡単な料理はしますが、魚を使うときは切り身など加工されたものを購入するため、包丁でさばくことはまずありません。他のみなさんと一緒に魚のウロコや頭、内臓取りに挑戦です。小さな出刃包丁を使って、マダイとカサゴのウロコを取りました。尾から頭へ。刃を慎重に当ててウロコを取っていきます。当たり前のことですが、魚の種類によってウロコも大きさやつき方が違うため、包丁を当てたときの感触もまったく異なります。力の入れ具合に慣れてくると、シャッシャとリズミカルに刃を滑らして、きれいに取ることができました。

頭を取る際は、胸ビレの後ろから斜め前へすこし角度をつけて、切れ目を入れます。
「骨は切れ込みを入れると折れます。無理やり包丁で切ろうとするとケガをしますよ」と中村さん。アドバイスを受けて、両側から切れ込みを入れると、頭と胴をきれいに分けることができました。包丁の扱いは完全に素人。それでもなんとかウロコや頭、内蔵をきれいにとることができると、なんだか調理するのが楽しくなってきます。

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今までに見たことのないような大きなシャコでした

 今回、調理を体験させてもらったなかでもっとも苦労したのがシャコでした。写真を見てもわかるようにものすごく大きなサイズ。身もたっぷりついて、殻も大きくとても頑丈でした。ゆでたシャコは、身をとり出しやすいよう殻の外側の部分を調理バサミですこし切っておくのですが、この殻が固くてなかなかうまく切れないのです。一つひとつの殻を切るのに時間がかかってしまい、大変な作業でした。

 参加者全員でおいしくいただく

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参加者全員で楽しく調理。たくさんの魚を使って豪華な料理ができました

調理が進むと、あちこちの厨房から煮付けのいい香りがただよってきて、食欲を刺激します。煮付けは砂糖、しょう油、水それぞれ同じ分量で、魚の種類や量、好みによって調節します。また、シャコを塩茹でする際の塩分は、海水と同じ濃度です。できあがった料理は、クロダイ、マダイ、シャコの刺身。カサゴ、カレイ、キス、アナゴ、エイ、アカシャエビ、ジンドウイカの煮付け。シャコの塩ゆで。クロダイ、マダイのアラで作った味噌汁など。とても豪華な昼ご飯を参加者全員でおいしくいただきました。新鮮な刺身はコリコリで、味のたっぷりしみ込んだ煮付けは身がホクホク。ゆでたシャコは甘みがあって、どれも食べごたえがありました。

魚の料理は肉に比べて下処理に手間がかかるなど、難しい点もありますが、今回の講座のテーマでもある、最小限の下処理で段取りよく作業すれば、もっと簡単で楽に調理できるのではと思いました。例えば、下処理ではさばいた魚や生ゴミを入れる容器をあらかじめ準備しておくこと。水を使って洗うのは、ウロコ、頭、内臓をとった後でまとめて行うことなど。残ったアラも、部位によっては煮付け、汁物、鍋などに利用することで、より料理の味わいが深くなります。

「昔は海の様々なものを利用することで有機物が除去され、きれいな海が保たれていたのです。いまは魚離れが進んでしまい、海の利用率が減ってきている。もっと愛知の魚を食べてください」と中村さんは話します。これからもっといろんな魚を調理して味わうことで、その魚が獲れた海のこと、そして漁業のことを学んでいきたいと思います。

(新美貴資)

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