〈『DoChubu』2010年6月28日更新、2020年4月20日加筆修正〉
揚げたてのアナゴの天ぷら。身はふっくらでとてもやわらかです
なごや環境大学共育講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度(2010年度)第2回目が2010年6月8日午前10時半から、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。
伊勢・三河湾でとれた旬の魚介類を調理して味わう人気のこの講座。今回は愛知県南知多町の豊浜漁協組合長で、まめ板漁を行っている山本昌弘さんを講師に迎え、豊浜の漁港であがった新鮮なアナゴ、アカシャエビなどを調理しました。
講座には主婦ら約30人が参加。調理方法などを楽しく学び、アナゴの天丼、アカシャエビの味噌汁、トコロテンをつくり、全員で旬の海の幸を味わいました。
魚の鮮度や伊勢湾の環境について学ぶ
講師の山本さんは、地元で「まめ板漁」と呼ばれる小型底びき網漁を伊勢湾で行っています。現在は、豊浜漁協の組合長として、漁業だけでなく地区全体の活性化にも力を入れ、町おこしに取り組んでいます。
伊勢湾の特徴について「木曽三川があって川の影響を受けやすい海で、栄養分がとても多い」と話す山本さん。多くの河川が流れ込むことによって、魚の餌となるプランクトンが豊富に発生し、稚魚がたくさん育つそうです。
その一方で、汚れてしまっている海の環境問題についてもふれました。漁を行っていると電子レンジや洗濯機、自転車など、いろんなものが網にかかってくるそうで、参加者からは驚きの声があがっていました。
また、魚の鮮度の見極めについては、目のきれいなもの、表面のぬめりがあるものが新鮮で、エラの色や臭いからもわかるそう。魚は内臓のある腹から傷むそうで、スーパーなどの店頭で売られている尾頭付きの魚は、新鮮なのだそうです。とれる魚や漁について、また漁場となる伊勢湾のことなど、山本さんの話に参加者は熱心に聞き入っていました。
アナゴ割きに挑戦
みなさんはアナゴをさばいたことはありますか?実際の調理に入る前に、あいち野外料理研究所の舘野尚文さんが見本を実演してくれました。
アナゴをさばくときに使う道具は、カッターナイフと千枚通しで、刃物を持たないほうの手はケガをしないよう必ず軍手をします。まず千枚通しでアナゴの頭を固定します。
腹を手前にして、右利きの人は、頭のある右から左へとカッターを入れていきます。
胸ビレのすぐ後ろから刃を入れて、背の皮一枚を残しながら、中骨にそって身を開いていきます。次に内臓をとりだし、今度は中骨だけを刃をうまくすべらせて取り出します。
編集員も挑戦してみました。舘野さんの実演を見ていたときはスムーズにできそうな気がしたものの、実際にまな板の前に立ってやってみると大違い。最初は刃を入れる感覚がつかめず、なかなかうまく骨にそって切ることができません。
すこし経つと慣れてきたのか、ジョリッ、ジョリッと骨にそって身を切る感覚がつかめるようになり、身がかなりついてしまったものの、なんとか中骨を取り出すことができました。慣れてくると、なかなか楽しい作業です。
開いたアナゴは、包丁の背の部分を使って、ぬめりをしっかりとります。塩でもんでしっかり流水で洗い、3つか4つに切れば、あとは衣をつけて油で揚げるだけです。
天草からトコロテンづくり
乾燥した天草からトコロテンもつくりました。水の入った鍋に天草をいれて、とろみがつくまでグツグツと煮込んでいきます。酢を加えて煮て溶かし、天草をこしたものをそのまま冷ますと固まるのだから、とても不思議です。
適当な大きさに切ったものを「天突き」に入れて、軽くすっと押しだすと、透き通った弾力のあるトコロテンが麺状になって皿のうえに広がります。皿いっぱい盛られたピカピカのトコロテン。なんだかとても涼しげです。
昼が近づくと、アナゴの天ぷらが次々と揚げられていき、アカシャエビを入れた味噌汁がいい香りを漂わせます。器への盛り付けが始まって料理の完成が近づくと、楽しい食事の時間はもうすぐ。それぞれの厨房はさらに賑やかさを増します。
この日のメニューはアナゴの天丼、アカシャエビの味噌汁、トコロテンです。アナゴの身は甘みがあって、ふわふわでとてもやわらか。味噌汁はエビのダシがよく出ていて、とっても深い味わいです。トコロテンはポン酢と砂糖をまぜたものと黒蜜の2種類のタレでいただきました。さっぱりとして喉越しもよく、つるんと口の中をすべっていきます。ボリュームたっぷりな天丼の後にぴったりなデザートでした。
今回の講座も漁業者の現場からの話をうかがい、また旬の魚介類を自分たちで調理して味わうことができ、とても充実した内容でした。参加した方からは「今までやったことのない調理法が学べてとても参考になる」といった声を聞きました。
伊勢・三河湾では、一年を通してたくさんの種類の魚がとれます。それぞれにおいしい旬の時期があり、その魚にあった食べ方もいろいろです。実際に海で魚をとっている漁業者の話を聞くことで、普段当たり前のように食べている魚も、もっとおいしく、そしてより身近に感じることができるのではないでしょうか。海の恵みに感謝しつつ、これからもいろんな魚を味わい、伊勢・三河湾について学んでいきたいと思います。
(新美貴資)