里山川海を歩くライターの活動記録

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【DoChubu掲載】オキギスとエソを使ってカマボコ作り!第40回「味わって知る わたしたちの海」

〈『DoChubu』2011年4月2日更新、2020年4月21日加筆修正〉

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オキギスとエソのすり身を板のうえにたっぷりと乗せて形を整えます。 このまま蒸して冷やせばカマボコのできあがりです

伊勢・三河湾流域でとれる魚介類を調理して味わう、なごや環境大学の講座「味わって知る わたしたちの海」(主催:伊勢・三河湾流域ネットワーク、山崎川グリーンマップ)の今年度(2010年)第5回目が11月4日(木)、名古屋市昭和区の昭和生涯学習センターで開かれました。

今回、参加者が挑戦した料理は、オキギスとエソをすり身にしてつくるカマボコ、オキギスのつみれ汁や煮魚などです。講師には、愛知県水産試験場漁業生産研究所の中村元彦さん、日比野学さんを迎え、渥美半島の外海でとれたオキギスとエソを使って、全員で楽しく調理しました。

伊勢・三河湾の環境やそこでとれる魚の種類、資源の動向などについても話を聞き、味わいながら身近な海で起こっている様々な変化について学びました。

めずらしい魚に興味津々

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今回の料理で使ったオキギス(左)とエソ(右)

今回調理するオキギスとエソは、スーパーや魚屋でもなかなか目にする機会のない魚です。南知多のほうではオキギスと呼ばれるこの魚。一般的にはニギスと言われており、愛知県では沖合底びき網漁業によって、渥美半島の外海の水深約100メートルの深い海底でとられ、蒲郡市の西浦、形原地区に多くが水揚げされています。身はとても淡白ですが、お腹にはたっぷりと脂がのっていて、刺身はもちろん煮ても焼いてもとてもおいしい魚です。

カマボコなどの練り製品の原料として利用される魚のエソ。今回の調理では、渥美半島の外海、水深約30メートルの浅いところでとれた、大きさ40センチぐらいのトカゲエソが使われました。触れて調理することはもちろん、見ることもめったにない魚だけに、
参加者のみなさんも興味津々な様子でした。

かまぼこ作りに挑戦

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(左)板への成形に挑戦。なかなかきれいに盛ることができず悪戦苦闘。 (右)脂のたっぷりのったオキギスの煮魚も調理しました

今回の講座で、参加者のみなさんが楽しみにしていたのが、かまぼこ作りです。講師の中村さんが魚のさばき方について見本を示した後、それぞれの厨房に別れて参加者が魚をおろし、骨やウロコ、内臓などを丁寧に取り除いていきます。

その後、おろした身を氷水にさらしてかき混ぜ、臭みや余分な脂などをのぞいたら、水分をしっかり絞って、重さを計ります。この重さに対して、加える小麦粉や塩、水、酒などの分量をあらかじめきちんと決めておきます。準備が整ったら、フードプロセッサーで身を細かく刻み、調味料を順に投入して混ぜ合わせていきます。

「塩を入れすぎると固くてボソボソになってしまうし、少ないと身が固まらない。粘り気をみながら調整してください」と中村さん。日比野さんもそれぞれの厨房をまわって、調理や魚のことなど参加者から寄せられるいろんな質問に笑顔で答えています。

できあがったすり身は、板のうえに盛って形を整えます。私も一つ、チャレンジさせてもらいました。思っていた以上にすり身がベタついて、なかなかきれいに盛ることができません。なんとか形を整えたら蒸し器に入れて熱を加えます。自分の成形したかまぼこがどんな風に仕上がるのか。参加者の期待が高まります。

オキギスのつみれ汁は、下ごしらえした魚の身をフードプロセッサーに入れ、ネギ、味噌、しょうが、酒などを加えて混ぜ合わせて、つみれをつくります。だし汁につみれの他、大根、シメジ、エノキなどの具材をたっぷり入れて、味噌、しょう油などを加えれば、具だくさんなつみれ汁の完成です。

手作りのかまぼこを味わう

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この日の料理は「オキギスとエソのかまぼこ」「オキギスの煮魚」「オキギスのつみれ汁」「むかごご飯」。 オキギスとエソを使った豪華な魚料理ができました

料理が完成し、参加者全員でいただきました。私もまずはかまぼこを一口。魚の身がぎゅっとつまった、濃厚な味わいがたまりません。「おいしい!」。いつも食べるかまぼことは全く違う味に、あちこちから声があがります。

つみれ汁も魚のうま味がたっぷりとしみ込んでいて、体がとても温まります。魚肉のおいしさを凝縮した、ボリュームたっぷりなつみれも食べごたえ満点です。オキギスの煮魚も味が程よくしみてやわらかく、むかごご飯がさらに進みます。

参加者全員でおいしく料理をいただいた後、中村さんから「海産資源の変動と環境」についてお話をうかがいました。イカナゴやシャコ、アサリなど全国でも有数の魚介類が獲れる伊勢・三河湾。中村さんは湾内について「川が流れ込んで閉鎖性が強い。外海にも面して変化にも富んでいる。たくさんの魚が棲んで多様性がある」と、その特徴を説明しました。

湾内にある瀬が多くの水産資源の産卵・育成の重要な場になっていること。高度経済成長期に湾内の埋め立てによって多くの藻場や干潟が失われ、海の浄化機能が低下していること。水産資源は、そのほとんどが環境の影響によって変動していること、などについて話を聞きました。

資源の変動や価格の低下によって水揚げ金額が減少し、伊勢・三河湾の漁業は厳しい経営を強いられています。たくさん獲れる安い魚をどのように利用していくべきか。値段がつかないため捨てられてしまう雑魚も多く、中村さんは消費者が食べやすいよう加工して冷凍したり、新たな商品の開発が必要だと強調し、消費者からの「アイデアが必要」だと訴えました。

オキギスとエソのかまぼこ作りから、伊勢・三河湾の海の環境のことまで、今回も味わいながら多くのことを学ぶことができた、とても内容の充実した講座でした。

(新美貴資)

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