里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

河川

〈新美貴資の「めぐる。(81)」〉長良川の文化をどう守るか 奪われた生命の循環

〈『日本養殖新聞』2019年3月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 1月、岐阜市の長良川を歩いた。鵜飼い大橋から下流を望むと、異様な光景が広がっていた。何台もの大きな重機が川の中に入り、川底を掘削したり、砂礫を運んだりしている。天然アユが付く金…

〈新美貴資の「めぐる。(80)」〉長良川に生きた 職漁師・大橋亮一さんを悼む

〈『日本養殖新聞』2019年2月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 職漁師・大橋亮一さん(岐阜県羽島市)が先月24日、病気のため亡くなった。83歳だった。豊かだった頃の長良川を知る、数少ない職漁師の一人だった。 昭和の戦後、高度経済成長期からの工場…

〈新美貴資の「めぐる。(74)」〉ウナギの聖地で供養を行う 岐阜県郡上市・粥川で地元の調理師会が主催

〈『日本養殖新聞』2018年8月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 ウナギを神の使いとして守っている岐阜県郡上市美並町の粥川(かゆかわ)で7月25日、ウナギ供養祭が行われた。主催したのは郡上調理師会で、美並観光協会、郡上漁協との共催。会場となった…

〈新美貴資の「めぐる。(72)」〉川舟を制作し技術を記録 長良川の和船技術継承に向けて

〈『日本養殖新聞』2018年6月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 この春に岐阜県立森林文化アカデミーを卒業した学生が「長良川和船技術継承に向けた取り組み」をテーマにした課題研究で川舟を制作した。この和舟を見ようと、美濃市にある専門学校を訪ねた…

〈新美貴資の「めぐる。(69)」〉住民参加の運動で川を守る 徳島市で吉野川シンポ実行委員会が催し

〈『日本養殖新聞』2018年3月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 2月に徳島市で開かれた「わたしは川の守人シンポジウム」に参加した。主催したのは吉野川シンポジウム実行委員会。吉野川の第十堰を壊して大規模な可動堰を作るという計画が持ち上がった時…

〈新美貴資の「めぐる。(65)」〉産卵で終盤迎えるアユシーズン 晩秋の岐阜市・長良川を歩く

〈『日本養殖新聞』2017年11月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 実りと恵みの季節も終盤に入った。日中は汗ばむ陽気も、朝晩は日増しに冷え込み、長良川では寒風が吹き始める。岐阜県岐阜市ではアユの産卵が盛んで、年魚による子孫を残すための最期の戦…

〈新美貴資の「めぐる。(63)」〉石倉かごのモニタリング調査に同行!! 岐阜県山県市の美山漁協が実施

〈『日本養殖新聞』2017年9月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 石倉かごのモニタリング調査が行われると聞いて、9月の初めに岐阜県山県市の武儀川に向かった。同市の尾並坂峠付近に水源をもつ武儀川は、関、岐阜市を通り長良川と合流する。本流はアユの…

〈新美貴資の「めぐる。(62)」〉じゃちこすくいで伝統文化を発信 岐阜県関市洞戸の板取川を訪ねる

〈『日本養殖新聞』2017年8月25日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 ウナギの町として知られる岐阜県関市の図書館を訪れた。そこで一枚のチラシを見つける。第1回じゃちこすくい世界選手権大会。手にした紙には、そう書かれてあった。じゃちこ。聞いたことの…

〈新美貴資の「めぐる。(60)」〉町の宝をみんなで守る 和良川のアユ友釣りが解禁

〈『日本養殖新聞』2017年6月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 けっして広くはない川の両岸をおおうように、たくさんの長い竿がならぶ。釣り人たちは、流れのなかの一点を見つめて動かない。清らかな水流は緑の風景のなかで躍動する。岐阜県郡上市の和良…

〈新美貴資の「めぐる。(59)」〉漁師は川の守り人 解禁迎えた長良川のアユ漁

〈『日本養殖新聞』2017年5月25日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 アユの季節がやってきた。海でたくさんの栄養をとり、生きる力をたくわえた稚魚は、春になると一斉に遡上して上流を目指す。このときの移動はまだ群れで、岐阜市を流れる長良川では、真っ黒…

〈新美貴資の「めぐる。(57)」〉日本一のアユで町をおこす 和良おこし協議会事務局長 加藤真司さん

〈『日本養殖新聞』2017年3月15日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 郡上の里に春がやってきた。城下町の八幡を中心に、山村が点在する岐阜県郡上市。清らかな水の恵みが、豊かな暮らしと多様な文化を育んだ。長い年月をかけ風土に人びとの営みが溶けこみ、自…

〈新美貴資の「めぐる。(55)」〉ウナギを捕り川で生きる 熊野川漁師 新宅次郎さん

〈『日本養殖新聞』2017年1月25日号掲載、2020年4月17日加筆修正〉 この冬は暖かな日がしばらく続き、この朝も小春のような天気に恵まれた。年が暮れてしまう前に、会っておきたい川漁師がいた。乗り込んだ列車は、三重県南部の太平洋に面したリアス式の海岸…

〈新美貴資の「めぐる。(33)」〉結いの精神で川と生きる 長良川漁師 平工顕太郎さん

〈『日本養殖新聞』2015年2月15日号掲、2020年4月16日加筆修正〉 延長166キロ。岐阜県郡上市の大日岳に源流をもつ長良川。県内を北から南に縦断し、愛知、三重県をぬけて伊勢湾へとそそぐ。83万人の流域人口を抱える一級河川は、人びととの営みを日夜繰り返…

〈新美貴資の「めぐる。(30)」〉川が一番ですべて 「矢田・庄内川をきれいにする会」会長 宮田照由さん

〈『日本養殖新聞』2014年11月15日号掲載、2020年4月15日加筆修正〉 岐阜県恵那市の夕立山に源流をもち、土岐や多治見、愛知県の瀬戸、名古屋市などの濃尾平野をぬけて、伊勢湾奥へとそそぐ庄内川。延長約96キロにおよぶ一級の都市河川は、流域に暮らす多く…

〈新美貴資の「めぐる。(29)」〉自然に畏怖し感謝する 石徹白漁協組合長 石徹白隼人さん

〈『日本養殖新聞』2014年10月15日号掲載、2020年4月15日加筆修正〉 青空に浮かぶうろこ雲をあおぎ、頬をなでるひんやりとした風を受け、深まる秋の訪れを知る。観光客でにぎわう岐阜県の郡上八幡をこえて、一路北上。たどり着いた白鳥の街から、さらに曲り…

〈新美貴資の「めぐる。(27)」〉環境を守り次代へつなぐ 60年にわたり矢作川で魚の調査を続ける 梅村錞二さん

〈『日本養殖新聞』2014年9月5日号掲載、2020年4月15日加筆修正〉 愛知県の東西の都、名古屋と豊橋にはさまれた真ん中にあって、平野から山間部にまでひろがる県内最大の市域をもつ豊田。この広大な地域を縦断するのが矢作川。長野県の阿智村と平田村をまた…

〈新美貴資の「めぐる。(24)」〉自然を思いやる 「郡上だも」を伝承する釣り師 成瀬博明さん

〈『日本養殖新聞』2014年5月10日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 岐阜県の中央にあって、奥美濃地方にひろがる郡上市。市の中心をなす八幡町は、長良川、吉田川、小駄良川の三川が合流する「水の都」として知られる。豊かな名水が長い年月をかけて人びとの…

〈新美貴資の「めぐる。(21)」〉環境保全と情報発信に注力 馬瀬川上流漁協組合長 老田達男さん

〈『日本養殖新聞』2014年2月15日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 春の足音が少しずつ聞こえ始めた濃尾の平野部とはことなり、いまも真冬のまっただ中にあるのは、岐阜県の山野部にある飛騨地方。下呂市内の飛騨萩原駅から乗り合いバスに腰をおろし、曲がり…

〈新美貴資の「めぐる。(20)」〉河川文化の創造へ疾走 岐阜の川人文化研究会 ぎふ魚食文化サロン 主宰者 長尾伴文さん

〈『日本養殖新聞』2014年1月10日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 卓上にならぶ天然と養殖のウナギ。さわやかな脂が口のなかで溶ける天然ものと、濃厚な味わいが後をひく養殖もの。どちらも職人の手によって調理された風味絶佳な蒲焼き。これを楽しみに訪れ…

〈新美貴資の「めぐる。(16)」〉故郷の清流とともに歩む 馬瀬川下流漁協組合長 池戸賢作さん

〈『日本養殖新聞』2013年9月15日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 切り立つ山々が四方にそびえ、深緑がどこまでも広がる。ようやく聞こえ始めた秋の足音は、まだずっと彼方のほう。前日の豪雨を受け、眼下の濁流はしぶきをあげて轟々と加速する。7つの河川…

〈新美貴資の「めぐる。(12)」〉自然をよく知り味方につける プロ釣り師 天野勝利さん

〈『日本養殖新聞』2013年5月25日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 1000メートルを超す山々が四方にそびえるなか、商店や民家、田畑が点在するのどかな山里が広がる。清らかな流れからうまれる心地のよい響きが、身体の芯まで伝わってくる。青空からそそぐ陽…

〈新美貴資の「めぐる。(11)」〉清流の盛衰を見守る 長良川漁師 大橋亮一さん 修さん

〈『日本養殖新聞』2013年4月15日号掲載、2020年4月14日加筆修正〉 かつて日本が誇る清流と呼ばれた長良川。美濃や飛騨の奥深い山々から生命の源泉となる流れがうまれ、いくつもの支流と相合しながら岐阜県を縦断し、伊勢湾へとそそぐ。この悠久の流れのなか…

〈新美貴資の「めぐる。(6)」〉故郷の清流を見守り続ける 板取川漁師 野村真富さん

〈『日本養殖新聞』2012年11月15日号掲載、2020年4月13日加筆修正〉 長良川の支流である板取川。「清流の国」をうたう岐阜県のなかにあって、流域に豊かな恵み、多様な文化をもたらしてきた河川の一つである。この板取川が流れる関市洞戸(ほらど)地区をた…

〈新美貴資の「めぐる。(3)」〉川とともに生きる 郡上・和良川漁師 大澤克幸さん

〈『日本養殖新聞』2012年8月15日号掲載、2020年4月13日加筆修正〉 多くのアユ釣り客を魅了してやまない数多の山河がひしめく岐阜県郡上市。なかでも同市の最奥にある和良町で釣れた香魚は、絶品との誉れが高い。この小さな盆地の山里で成長したアユが「清流…