里山川海を歩くライターの活動記録

水産のいろんな世界を歩き見て、ひとの営みや暮らしを伝えています

『連載「めぐる。」』

【新美貴資の『めぐる。〈112〉』】郷土の宝ものを未来に 今の長良川に思うこと

〈2021年10月15日号寄稿〉 短かった夏が終わり、秋がやってきた。秋といえば長良川なのだ。昨年も岐阜市の中流域に出かけ、産卵期のアユを観察した。今年もまた通うつもりである。 岐阜市内にかかる長良橋のたもとから長良川の上流を眺めた。緑をたくわえた…

【新美貴資の「めぐる。111」】河原から多自然を考える 川と陸をむすぶ大切な存在

〈『日本養殖新聞』2021年9月15日号寄稿〉 ウナギとミミズの関係を知ってから、河原のことが気になるようになった。 河原は、大雨が降るたびに冠水する。そして、そこにある多くのものをかき混ぜ流してしまう。生き物にとっては、生育するうえでとても条件…

【新美貴資の「めぐる。110」】ミミズはウナギの重要な餌資源 陸と川のつながりが大切

〈『日本養殖新聞』2021年8月25日号寄稿〉 7月、岐阜市の長良川を歩いた。どうしても見ておきたいところがあった。大繩場大橋から鏡島大橋にかけての左岸が、川とは思えない異様な光景に変わってしまっていたのだ。 その河原は、1キロくらいにわたりコン…

【新美貴資の「めぐる。109」】人と人をつなぐ飲食店 生かし生かされて回る世界

〈『日本養殖新聞』2021年7月15日号寄稿〉 この店に来るとリラックスできる。あの店主や店員に会いたい。そんな飲食店が皆さんにはありますか。 コロナ禍の重苦しい空気に押しつぶされそうになる時がある。その一方で、自分を見失いそうになるくらいの速さ…

【新美貴資のめぐる。〈108〉】地名が語る歴史 鰻廻間の由来を考える

〈『日本養殖新聞』2021年6月15日号寄稿〉 いつ、だれが、どのようにして付けたのか。前回の続きで、名古屋市名東区にある「鰻廻間(うなぎはざま、以下、異字体を新字体に改める)」の地名について考えてみた。 どんな名前にも必ず命名者がいる。そこには…

【新美貴資の「めぐる。〈107〉」】かつて「鰻廻間池」があった場所を訪ねる

〈『日本養殖新聞』2021年5月10日号寄稿〉 以前に紹介した名古屋市名東区にある「鰻廻間」(うなぎはざま。以下、異字体を新字体に改める)という地名を覚えているだろうか。この鰻廻間に、かつて「鰻廻間池」と呼ばれるため池があったことにも触れた。その…

【新美貴資の「めぐる。〈106〉」】都会の源流を探して 忘れられた川をめぐる

《『日本養殖新聞』2021年4月15日号寄稿》 どこの町にもあるのではないか。ひっそりと静かに流れている小さな川やどぶが。私が暮らす所の近くにも、実はある。 名前のわからない川(私は川と捉えている)は、愛知県の名古屋市と長久手市の境のあたりを南北…

【新美貴資のめぐる。〈105〉】ウナギはいるのかいないのか マイリバーを歩いて考える

《日本養殖新聞2021年3月15日号寄稿》 ふと思った。なぜウナギは川を上るのだろうかと。遡上(そじょう)。『広辞苑』には、「流れをさかのぼって行くこと」とある。 マリアナ諸島の西方海域から、東アジアの沿岸域までのふ化してからの移動も大変だが、一…

【新美貴資の「めぐる。(104)」】いつもと違う味を楽しむ 蒲焼きのタレを使った料理に挑戦

〈『日本養殖新聞』2021年2月15日号掲載〉 コロナ禍による自粛生活で、自宅にこもる毎日が続いている。私が暮らす愛知県では、1月14日より緊急事態措置が実施され、これにより飲食店に出されていた営業時間の短縮要請が強化された。 食事は元々自炊が中心…

【新美貴資の「めぐる。103」】人として最良を尽くす 一隅を照らして連帯を

《日本養殖新聞2021年1月25日号寄稿》 新型コロナウイルスの感染拡大がいつ収束するのか、まったくわからない多難な年明けとなった。私たちは、これまでの生き方の見直しを迫られているように思う。 昭和の高度経済成長によって人びとは便利さや快適さを手…

【新美貴資の「めぐる。(102)」】アユの最期と命の連鎖 晩秋の長良川に通う

〈『日本養殖新聞』2020年12月15日号寄稿〉 11月は中頃から岐阜県内の長良川に通い続けた。中流域のあるところによどみがあり、産卵期のアユがたくさん身を寄せるのだ。 ある晴れた日の昼下がり。その場所に行ってみると水面のあちこちでアユが跳ねている。…

【新美貴資の「めぐる。(99)」】海から人生、川を旅する ウナギに関する3冊を紹介

〈『日本養殖新聞』2020年9月15日号寄稿〉 夏の疲れがどっと現れるこの時期、休息を取る間に本のページをめくるのもいい。外出などしなくても、読書が思考と想像の旅にいざなってくれる。今回は、私がこれまでに読んだウナギに関する本の中から3冊を紹介し…

〈新美貴資の「めぐる。(101)」〉自分を諦めないで 若人に伝えたいこと

〈『日本養殖新聞』2020年11月15日号寄稿〉 三重県鳥羽市に石鏡(いじか)という漁師町がある。ここに毎年、奈良県の中学校から生徒が臨海実習をしにやってくる。泊まるホテルでは、夜になると学生たちがグループに分かれ、大人たちから講話を受ける。 講話…

〈新美貴資の「めぐる。(100)」〉鰻谷を探して遡る 愛知県小牧市の大山川

〈『日本養殖新聞』2020年10月25日号寄稿〉 鰻沢、鰻田、うなぎ(へんは魚。つくりは、上から「なべぶた」「回」「日」「一」)廻間……。愛知県には「鰻(他の字体を含む)」のつく地名がいくつかある。きちんと調べてみなければならないが、魚類のなかでもそ…

【新美貴資の「めぐる。(98)」】ガサガサでウナギを探す 愛知県長久手市の香流川

〈『日本養殖新聞』2020年8月25日号寄稿〉 現代の都会を流れる小さな川にもウナギはいるのか。名古屋で暮らす年来の疑問である。都市のコンクリートで囲まれた狭小な河川において、ウナギを捕まえたり見たりしたという話を私は聞いたことがない。 愛知県長…

〈新美貴資の「めぐる。(97)」〉深まる謎と膨らむ興味 ウナギを探し愛知・春日井の里を歩く

〈『日本養殖新聞』2020年7月15日号寄稿〉 中日新聞2020年6日1日の記事「用水路にニホンウナギ」の記事を見て驚愕した。 愛知県春日井市内の用水路で、泥さらいをしていた作業員が細長い魚を発見。名古屋港水族館に確認してもらったところ、ニホンウナギの稚…

〈新美貴資の「めぐる。(96)」〉感動と喜びを提供する ウナギ職人はすばらしい仕事

〈『日本養殖新聞』2020年6月15日号寄稿、2020年8月9日加筆修正〉 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が5月25日、全面解除となった。愛知県は、それより早い14日に対象区域から解除され、私が暮らす名古屋の町も人や物が動き出した。 今懸念しているの…

〈新美貴資の「めぐる。(95)」〉奪われた社会の連繋 コロナの試練を乗り越えて

〈『日本養殖新聞』2020年5月10日号寄稿〉 新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が出されて3週間が経過した。この原稿を書いている今も、予断を許さない緊迫した状況が続いている。 名古屋市のはずれにある私の町も、多くの店が休業し、通りからは…

〈新美貴資の「めぐる。(94)」〉希望を灯し未来につなぐ 自分を守ることは大切な人を守ること

〈『日本養殖新聞』2020年4月15日号寄稿〉 新型コロナウイルス感染症の猛威が止まらない。世界がこのウイルスの脅威を見誤った。この原稿を書いている2020年4月7日現在、東京都では感染者が日を追うごとに増加し、いつ感染爆発が起こるかわからない緊迫した…

〈新美貴資の「めぐる。(93)」〉できることに努める 止まらない新型コロナウイルス

〈『日本養殖新聞』2020年3月15日号掲載、2020年8月4日加筆修正〉 この原稿を書いている時点(2020年3月9日)で、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。安倍首相が小中高校などに臨時休校を要請した3日後の3月1日、名古屋駅とその周辺を歩いた。 普段…

〈新美貴資の「めぐる。(92)」〉生き物の消えた都会の川を歩く  愛知県長久手市から名古屋市を流れる植田川

〈『日本養殖新聞』2020年2月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 橋の上を多くの車が走り抜ける。頭上の高架を、重い音を響かせながら鉄道が通り過ぎる。日の当たらない川面に視線を落とす人はいない。眼下では、音の聞こえない、ゆっくりとした水の流れが…

〈新美貴資の「めぐる。(91)」〉ウナギの魅力とは 日本人と関わりの深い生き物

〈『日本養殖新聞』2020年1月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 取材でウナギと関わるようになって10年近くになる。本紙で記事を書くようになってからであるが、年を経るごとに、この魚にますます惹かれている。 今回は、私が思うウナギの魅力について書…

〈新美貴資の「めぐる。(90)」〉現代のため池にもウナギはいる  愛知県日進市・岩藤新池の池殺生

〈『日本養殖新聞』2019年12月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 11月下旬、再び愛知県日進市の岩藤新池を訪れた。ため池のほとりで、会う約束を交わしていた加藤英俊さん(74歳)が笑顔で迎えてくれた。この地域の自然を守る「水源の里の会」の代表を務…

〈新美貴資の「めぐる。(89)」〉都会の川にウナギはいるのか  愛知県長久手市の鴨田川を辿る

〈『日本養殖新聞』2019年11月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 矢田・庄内川をきれいにする会による「水辺の再生と川の健康診断」の催しが10月27日、愛知県名古屋市で開かれた。矢田川と庄内川は、それぞれ尾張地方を流れる同じ水系の一級河川で、同市…

〈新美貴資の「めぐる。(88)」〉身近な魚だったウナギ 愛知県日進市の岩藤新池を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年10月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 愛知県日進市の岩崎城歴史記念館で特別展「にっしんの歴史と動物」がこのほど開かれた。牛や馬、鳥、魚など人と動物に関わる歴史について、市に保存されている文章や絵図、道具など約50点…

〈新美貴資の「めぐる。(87)」〉自然と人をつなぐウナギ 名古屋市名東区の鱣廻間を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年9月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 全国に鰻の付く地名はいくつもあるが、なかでも愛知県下に多いという(佐野賢治著『虚空蔵菩薩信仰の研究』より)。『愛知県地名収覧』には鱣池、鰻沢、鰻田、鱣谷など11の地名が載っている…

〈新美貴資の「めぐる。(86)」〉神の使いであるウナギを守る 岐阜県郡上市・粥川を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年8月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 岐阜県郡上市美並町の粥川に行ってきた。以前にも紹介したが、この地域ではウナギを神の使いとしてあがめ、昔から大切に守り続けている。毎年7月、星宮(ほしのみや)神社でウナギの供養祭…

〈新美貴資の「めぐる。(85)」〉東海で生まれたうま口文化 名古屋城下の蒲焼町を歩く

〈『日本養殖新聞』2019年7月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 近年、急速な変貌を遂げている愛知県名古屋市。人口は2016年に230万人を突破した。名古屋駅の周辺「名駅エリア」の再開発はさらに進み、周辺の市町村の発展もめざましい。 変化の止まない名…

〈新美貴資の「めぐる。(84)」〉安心や感動がおいしさにつながる ミシュランガイド愛知・岐阜・三重二〇一九特別版

〈『日本養殖新聞』2019年6月15日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 「ミシュランガイド愛知・岐阜・三重2019特別版」が先月出版された。名古屋では地元メディアが大きく取り上げ、ガイドに掲載された市内のウナギ店を紹介するニュース番組もあった。 ミシュ…

〈新美貴資の「めぐる。(83)」〉新漁業法の問題点を探る 丸亀市で食と漁の地域未来フォーラム

〈『日本養殖新聞』2019年5月25日号掲載、2020年4月18日加筆修正〉 「『新漁業法』は沿岸漁業と漁協経営にどのような影響をおよぼすか」をテーマにした第2回食と漁の地域未来フォーラムが4月6日、香川県丸亀市で開かれた。 主催したのは、全国沿岸漁民連絡協…